君に、あげる
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春の嵐 が、吹き荒れる。
こんな時に屋上に出てるなんて
幸い雨は降っておらず、台風並みの強風に吹かれながら、髪の毛は乱れていた
屋上から見る空が好きだった。
気分転換には最適で ほんの数分でも気持ちを切り替えて課に戻れる
そんな、場所だったのに。
今の私は雨の振りだしそうな曇り空を見ていて、見ていない
(どうしたら…)
気になる事が起きていた
私の身体に。
ガチャンッ
「ウサー、いつまでこんな所にいるの?」
私と同じく髪の毛を風で乱しながらも、こちらに歩いてくるのは上司で彼氏の津軽さん
いま一番、
会いたくない人。
だってどんな顔していいのか、顔をしているのか分からない
違う。分からないじゃダメ
私だって公安刑事なんだから。
「今戻るところでした。連日の仮眠室暮らしなんですから少しは休憩くださいよ~」
ニッコリ笑い不安な気持ちは微塵も出さない
よく確かめないと分からないし、こんな重大な捜査中、皆が神経が張り詰めてる時に プライベートな事で 心を取り乱す訳にはいかないのだから。
「……」
「……」
(だめか…)
取り敢えずニコニコと笑顔を向けるがバレてる。悩んでること。
" 何か "? まではバレるわけないと強気に笑顔を崩さずにいれば
「…ほら、来なさいな」
「えぇ??」
目の前で両手を広げて来なさいと言われても、え、抱きつけって?えっ、急に…
「ちょっとだけ津軽さんの胸貸してあげる」
気遣いが、優しさが、嬉しかった
そして心が痛かった
私を見てくれてることに。
「じゃあ…おじゃましまーす…」
「ど~ぞ」
おずおずと津軽さんに近づき、頭を意外と厚い胸に預ける
風から守るように頭を抱きしめられると、このまま甘えて吐き出したい気持ちになる
が、 今はタイミングじゃない
それが出来ないのは、ここは警察庁。恋人をしている時間ではないのだから
十秒にも満たない時間。
「ありがとうございました。もう会議の時間ですよね」
「だね、行こっか。明日には組織に突入だし終われば時間ができるからデートしよう」
くるっと歩き出した背中は大きくて班長としての頼りがいを感じながらも…
こっそり ため息をつく
(言えないよ、妊娠したかもって思ってること)
ーーーーーーー ー ー
組織の幹部の潜伏先に 突入するため デスクで資料の確認や準備をしていると
(胃が……痛い。さっきまでは もたれる感じだったけど、ちょっと痛いな…)
常備している胃薬に手が伸びて、慌てて引っ込めた
この胃薬っていいんだっけ?妊娠してる…かも知れない疑惑がある以上は、うっかりなことは避けたかった
のんびり調べてる余裕はなく…諦める。
お腹に赤ちゃんが…いるかも知れないのに後回しにしている罪悪感にぎゅうっと胸も痛む
本当は大切なことなのに、とにかく、とにかくタイミングが悪い
気づいたのは、一昨日だった───
銀室は長年追いかけて来ていた捜査に大きな進展があり、私は家にも帰れなくなっていた
仮眠室のベッドにお世話になること2日目。
簡易なパイプベッドに入ると、やっとわずかにプライベートなことを考える時間が出来る
(おかしいな…生理がこない)
私は警察官として働く自分の体調管理として、ずっとピルを服用していた
今週、生理になるはずで 少しの出血があるはずなのに…無い。
初めての出来事。
そういえば、体温は計ってないが少し微熱がある気がするし、胃がもたれている。
そう思い始めると吐き気がする…かも
少し前から神経を使う捜査に入っていて、疲れて自律神経が大きく乱れてるかも知れないけど、妊娠の確率だってゼロじゃない
でも病院に行く時間なんて作れない
(津軽さん、びっくりするよね…。育休ってアリなの?って言うか結婚だよね…津軽さんの場合なにかトラウマに触ったり?うーん、意外と家族が出来ること喜んでくれたり?)
ただの体調不良でなく、妊娠疑惑の方に気持ちが こんなに傾くには訳があった
一つはピルを飲む時間。いつも同じ時間に飲む事は仕事上いかなくて 7.8時間ほど ずれる事が何度かあった
もう一つは────
2週間ほど前、デートをしていた私と津軽さんは 夕食をカクテルが美味しいと有名なダイニングバーで楽しんだ
飲み過ぎた私は 津軽さんの部屋に帰る頃には 酔いが回ってしまい、妙にエッチな気分になり、私がリードする形でソファーの上で行為をしていた
その時の記憶…恥ずかしくて記憶の隅に隠しておきたいくらいだが…
『ちゅがるさぁん、待てないんですーよいしょっと』
お互いの着衣は半分脱げたままで、私は津軽さんの膝の上に股がっていた
『ちょ、タンマ、優衣っ 腰落としちゃだーめ、入っちゃうでしょ』
『いま、欲しいですぅ…』
『だっから、煽んなって』
『… 待てないのっ』
……。
あの時、結局 津軽さんゴムしてたんだっけ?
酔った私が積極的に…進めちゃったんだよね
津軽さんは私がピルを服用してるのを知っていても避妊はしっかりしていた
ちゃんとしたいからって。確率はゼロじゃないでしょって。
でもあの日だけは?私が無理やり、無しでした?
うーん、酔っていて曖昧な記憶…。
早く妊娠検査薬を使いたいけど、まあ、明日の夜には試せるだろう。
お腹をそっと擦り、気合いで我慢することした
未知の経験に…現実逃避してる自分に気づきながら…
ーーーーーーー ー ー
「おい、腹痛いのか?」
「はい?」
車での待機中、隣の百瀬さんが真顔で聞いてくる
「痛くありませんよ?」
「さっきから腹擦ってるじゃねーか」
「あぁ、ちょっとだけ寒いなって思ってただけです」
「なら、いいけど。足引っ張るなよ」
「大丈夫です!私だって気合い入ってるんで」
………はあ、この場に津軽さん居なくて良かった
居たら私の嘘に つっこんで来たかも知れない
無意識にお腹を撫でていたのだ
あるわけ無いのに、お腹が少し張り出てるような気がして。つい手をやってしまっていた
だんだんと突入の時間が迫るにつれ、待機の車にも緊張感が張り詰めていた
ーーーーーー ー ー
私は逃走ルートになりうる潜伏先の繁華街の裏路地に配置されていた
腕時計を確認する
今頃、津軽さんが交渉を行ってる頃。インカムは百瀬さんから指示が入るため、正確なことは分からないが、今は都会の喧騒しか聞こえてこない
このまま何も起きない…かな
ーーっと思ったら…
コツ‥コツ‥コツ‥
女性物の靴の足音が早足で近づいてくる
スマホを見るふりをしながら確認すると
(!! あれってターゲットの男の恋人っ)
ハンドバッグの他に、大きめのカバンを大事そうに胸で抱えてる…
証拠になる物の可能性が高いため、もちろん見過ごせず、なに食わぬ仕草で百瀬さんに報告をした
「あっ、ねえねえ、ちょっと道教えてくれない?Wi-Fiが繋がらなくって~」
応援がくるまで足止めをするが、怪訝な顔をされる
まあ、そうだよね、でもこっちも引けないんだから!
「急いでるから」
「○○○ってバーなんだけど知らない?」
あえてこの組織が関与してる店の名前を出し、気を引く
「…知らないよ、他当たって あっ!」
小走りになった彼女は ふらつき大きなカバンを地面に落としてしまった
ガシャッ
(この音…!やっぱり何か持ってる)
「大丈夫?ごめんね、急に話しかけたから」
(え。待って…彼女…手足のわりにお腹が…妊娠してる…?)
大きなカバンに隠れて見えなかったが、妊娠中期くらいに...見える。いや妊婦さんで間違いない。え、そんな報告上がってなかったけど、いや確か暫く姿を見ないって…
「おい、どうなってる?」
「…証拠品があると思われます」
「あんた、警察だったの!?あたしは無関係よ!!」
「落ち着いて?貴女に危害を加えたりしないから、ね?」
「うっさい!」
「確保だ、確保だしろ!」
「はいっ、」
百瀬さんとは距離があるため、私が彼女を怪我の無いように彼女を取り押さえなきゃ
「近づかないでよ 刺すから...!」
肩に掛けてたハンドバッグからナイフを取り出したが、手が震えている…
百瀬さんからも妊婦だと確認できたと思う
下手なことにならない内に確保しなきゃ
「サツふたり殺すくらいっ!」
ナイフの刃先が向けられ…
私に襲いかかってくる彼女の手を目掛けて、思い切り足を振り上げた
ーーーーーーー ー ー
津軽さんと合流したのは警察庁に戻ってからだった。
「ウサ~大捕物だったじゃん、子どもの話を出したら話し合いがスムーズだったよ~」
よしよし、と頭を撫でられる
「…良かったです」
赤ちゃんを駆け引きの道具にしたのはモヤモヤするけど…交渉は上手く行き 津軽さんは上機嫌だ。
良かった事は、今回は逮捕が目的では無いため、あの妊婦さんが逮捕されることはない。
私にとっては それが一番安心した。
調査では彼女はこの案件には特には関わりがないから。
私にナイフを向けたのも、それさえ取引の材料になり無かったことになっている
「子どもの話を出した途端、顔色変えたんだから、アイツも人の心があったんだね~」
「はあ…」
「まだ胎児なのに、ちゃんと愛情を持ってたなんてさ」
!!
(……、まあ、そお、だよ…ね。あくまで男性の方が自覚が沸きにくいって、一般論…)
「……」
「ん?妊婦をダシにした事、納得いかない?」
「まさか。その流れが通常ですから」
津軽さんに、悪気はない。
有効な情報を使い、必要な情報を得る。それは必ず巡って国を守るためになる。
そこは分かる。んだけど…
自分の今 置かれてる状況から子どもの話には胸が痛くなった
(ほんと、よく無いな。今日の精神状態)
「さて、捜査も一段落するし ウサ、今日は帰りな。今なら終電間に合うし。具合悪いんでしょ」
「え、でも後処理がまだ…」
「そんな真っ青な顔でいられると迷惑。徹夜が続いたんだし明日は午前休でいいから」
周りに迷惑をかける…でも居ても迷惑なら帰ろう。これで検査薬使えるし
津軽さんの気遣いに感謝しつつ、警察庁を後にした
ーーーーーー ー ー
翌日、ゆっくり目を覚ます。
と言うかスムーズ機能を消して寝過ぎてしまった
慌てて支度をし会社に向かう途中のドラッグストアで、例の妊娠検査薬を買うが、検査してる余裕は時間的に無く…
それでも少し 心にゆとりがあったのは、目が覚めた時にずいぶん身体が軽く感じてスッキリしてたから。
あとは生理が来てくれたら…。本当ならピルを処方して貰ってるレディースクリニックに行くべきだよね…
カバンに検査薬を忍ばせ、公安課に入ると
「おはようございます!」
津軽班のメンバーに声を掛けつつ自分のデスクに着くと、
「こ、これは」
資料室に返してと書かれた段ボールが一つ置いてあった
「先に返しちゃお…邪魔だし」
エレベーターの前には人が多かったため、階段で段ボールを持ちながら運ぶ
2階分だし、大した事はないと 昨日と打って代わり軽くなった足取りでリズミカルに上がるが
「うわっ!」
「ちょ、ウサ大丈夫?」
段を踏み外しそうになり背中を支えてくれたのは後ろから来た津軽さん
「津軽さん!?」
「そんなん抱えて上がって行くから見に来たら…俺いなかったら落ちてたんじゃない?」
「すみません、津軽さんの手を煩わせてしまい…」
「持ってあげる」
「大丈夫です! もう気を付けますから」
「体調どう?少しは良さそうだけど」
結局 段ボールを取ってくれて一緒に階段を上がる
「寝たら楽になりました。ありがとうございます」
「そ。ならいいんだけど。昨日は顔ヤバかったよ」
「ははっ…」
津軽さんの優しさに素直に甘えたあとは 精一杯、業務をこなす
定時は過ぎたが色々とやることが舞い込み21時になっていた
「まーた、残業してるし」
会議から帰ってきた津軽さんは少し機嫌悪そうに私を冷ややかな目で見てくる
「はい、キリの良いところまでやりたくて」
「ふーん、じゃ、帰って何か食べよ。会議、会議で食べてないんだよね」
「あ、私は もうちょっと…」
「ウーサ~帰るよ?班長命令」
「うぅ~ わ、分かりました」
心配されてしまい押しきられ、一緒に退庁するが、私は今日一番やるはずだったミッションをクリアしていない
(妊娠検査薬…、やってない)
忙しかったが、実際は すぐに終わる検査で、職場のトイレですることは可能だった
でもなんだかんだ、言い訳をして夜になってしまい…
結果を先延ばしにしてしまっている
ーーーーーーー ー ー
津軽さんの家に一緒に帰り、買ってきた出来合いのものを食べソファーでくつろぐ
「はい、軽く呑もうよ」
津軽さんが持ってきたのは私たちが普段好んで飲んでる缶ビール
(や、今は…)
「ん? 今日は止めとく?」
「はい…ちょっと…」
「そっか、でもさ この前の泥酔の優衣は面白かったなー。君でもあんなになるんだね」
「で、ですよね、恥ずかしい…」
「君が元気になったら また呑ませようかな。あーゆー優衣も色気あって良かったよ」
楽しそうに津軽さんは笑うけど
(あの日に…)
なんだか自分だけ悩んで、空想にフワフワしてるのが馬鹿馬鹿しく思えた
この先、私はどうなるのか、公安刑事は続けられるのかとか、津軽さんの反応とか、好きで 大好きで 愛してるから もしかして結婚して家族になれるのかな とか男の子か女の子かとか
期待してた、私にしかできないこと。
それは
津軽さんに家族を作ってあげたい
絶対に揺るぎのない唯一無二の存在
我が子を…。
……または、妊娠は思い過ごしなのか……とか
とにかく心はぐちゃぐちゃで。
「…っ、ぐすっ…うっ…」
鼻がつうーんとしたと思ったら涙が目にたまってしまい
「…えっ…あ、ごめん!バカにした訳じゃなくて、可愛くて嬉しかったからで!」
「っ、あっ、すみっ、ません…」
涙はすぐに治まったが、気まずくて私は下を向いたままだった
「ねえ」
「はい…」
「何かあった?この間から様子がおかしいじゃん。疲れてるってだけじゃなさそうだしさ」
「………」
「まぁ、恋人だからって無理になんでも話せってわけじゃないけど、一応 俺は君の事に関しては懐深く受け入れてるつもりだからさ」
たしかに…津軽さんは色んな私を受け入れてくれる。付き合って行く中で知ったこと。
…そうだよね、話そう
「驚かないで、欲しいんですけど」
「うん?」
「違うかも知れないんですが……に、妊娠…したかも知れなくて」
「………」
目がテンになった津軽さんは真顔で…でも話し出してしまえばスラスラ口から言葉が出てきた
「体調の悪さは、もう だいぶ治まったんですけど、生理こなくて…」
「………」
「私、ピル飲むタイミング遅れた時あったり…この前 酔っぱらっちゃって避妊…しなかったですよね?」
「……えっ?…待って、そんな時 無いけど」
「あれ?そう、なんですか?」
「ちゃんとしたよ。っていうか、う~ん…」
「…あ」
私の顔を覗き込む表情は どちらかと言えば硬くて…
「色々言いたいことあるけど…抱き締めさせて」
「津軽さん…」
ふわっと緩めにそっと腕が回され頭を撫でられる
「どっか苦しい とかない?」
「それは、大丈夫です。本当に体調は良くなって」
「寒くない?羽織るの持ってこようか?」
「大丈夫ですよ、全然」
「大丈夫って…君さぁ。…病院は行けてないんだよな?明日の午前中に行ってきな」
「すみません…そうさせてもらいます。あと…一応…妊娠検査薬買ってあって…」
「そうなの?今、検査してみようよ」
「です、よね…」
盛大な覚悟で挑んだ検査結果は…
「すみません…陰性でした 驚かせてしまって申し訳ないです」
「………そう、結婚し損ねた」
「損ねたんですか!?」
「まあ、君の体調不良には変わらないんだから明日は病院ね。正確なことは病院で」
「はい」
「あとさ、言わせてもらうけど」
「はい…?」
「君、妊娠してるかもって思いながら現場に出てナイフ突きつけられたの?」
「それは…」
「お腹刺されてたらどうなってた?二人とも死んでたかも」
そこまで考えて、なかった…。って言うか考えないようにしてた。仕事しなきゃって、そればかり…
「……」
「でっかい段ボールを階段で運んだり」
「……」
「優衣と…俺の子、なんじゃないの?そんなに信用ならない?」
「そんなこと!」
「分かるよ、俺になんか相談できないって思うことくらい…でもさ、言って?マジで」
声のトーンこそ いつもと変わらないが、表情に全部出てる
悲しいって。
ちゃんと考えてるつもりで考えてなかった
津軽さんは家族を、お腹の弟まで殺されてる
自分の浅はかさにヘドが出る...
「ごめんなさい...全然、そういう事を…考えて無かったです」
「謝んなくていいよ。今度からは、すぐに相談して欲しい。ねえ、一人で不安だったでしょ?」
「…はい…でも、不安だけじゃなくて」
心臓がドキンドキンとウルサイけど折角の機会だし、本心を伝えたい
「うん?」
「もちろん、これからどうなるのか、不安でした。でも…私たち家族になるのかな、って」
「家族…うん、そりゃ、そうなるよ」
「しかも三人家族、ですよ?凄くないですか?」
「うん…、ちょっと正直 想像つかないけど、すごいよなぁ」
「はい。だから、最初は不安が大きかったんですけど」
「幸せな未来もあるのかなって、妊娠してないかも…って、真実を知りたくない気持ちも出てきてたんです。実際に体調は寝たら良くなった訳だし」
「いいの…?」
「え?」
「だから、優衣は…俺で」
「寧ろ、津軽さん以外にいないんですが」
「…そう 良かった」
時々見せる繊細で自信のない津軽も好き。
愛おしい。なんて、こんな時 さすがに言えないか
「変な津軽さん。婚姻届まで渡しておいて」
「あはは、だよなー」
くしゃっとした私の好きな笑顔が出て、空気が緩やかなものになり、ほっとした。
こんな風に未来について、それもきっと遠くない未来。二人で話し合う事ができ、少し深くなった私たちの関係が嬉しかった。
その日、私は津軽さんの腕の中で、ぐっすり深く眠り
翌日、病院の検査の結果は、やはり妊娠はしておらず生理も すぐに始まり、私と津軽さんの日常は また動き出していた
ーーーーーーー ー ー
Side津軽
しばらくたったある日の夜
俺のベッドの上で、少し汗ばんだ素肌同士をくっつけていた。
だってさ、まだまだ手放しがたかったから
照れくさそうにしながらも、ぎゅっとしてあげると素直に抱き締められる。ふいに優衣が上目遣いで 聞いてきた
「あの…なにか怒ってましたか?」
(まあ、そう感じるよね、いつもよりイジメちゃったし)
イジメられたくせに、 くっついて離れず、なんなら満たされた顔をしてる。
そんな優衣が可愛くて 今夜も俺を付け上がらせるんだ
「ん~、ドMの君にはちょうど良いかと思って」
「 "ド" じゃありませんよ」
「泣いて悦んでたクセに」
「もう!イジワルです」
「あはははっ うん、怒ってるよ」
「えー…私、なにかしちゃいましたかね??」
心当たりない。と不思議そうに見つめてくる
優衣の見つめてくる目は好きだけど
「だって君さ、俺のコト避妊しない男だと勘違いしてたじゃん」
正直怒ってはないけど。
逆に優衣に心配かけたなら、悪かったとさえ思ってるけど。
ただ今夜は無理やり理由をつけて、ちょっとだけ いつもと違うことをしたかっただけなんだけど。
「あっ…いやアレは」
「これまでの人生、どんなに せがまれても避妊を怠ったことないのにさ」
「…へ~ ちゃんとしてるんですねぇ~。津軽さんらしいけど」
「そう。ちゃんとしてきたよ。なのにさ~」
過去の女の子の影がちらついたのか、少しだけふて腐れた顔をする
ヤキモチ妬かれるのは正直好きだ。
けど、不安にさせて悲しませたくないから塩梅が大切。
「すみません...酔っ払いすぎて記憶があいまいで、もしかしたらって思ったんです」
「無しでするわけないじゃん、絶対」
「絶対まで言います?」
「うん。だって楽しみにしてるから、そのままの俺で優衣に入るの」
「え」
「君に、あげる。俺の初めて」
「津軽さんの初めてを…私が?」
「ワクワクしちゃう?」
「あのー、それを言うなら…私も初めてなんです…よ?」
「マジか…そうかなとは思ってたけど」
「…はい」
優衣がゴムなしで性行為をすると思えず、やっぱりと納得する
………。
……ヤバイな、楽しみすぎる!
「結婚しようか」
「ちょっ…なんでですか このっ結婚モンスター!」
「あはははっ それ久しぶりに聞いた」
「もう、からかってばかり…!」
ぐっと胸元を押され身体が離れる。
怒った顔がカワイイ…
「からかってないよ。結婚は本気だから。もう離すつもりないから覚悟しておいてね」
ちゅっ と、唇を盗めば、きょとんと大人しくなる。
こんな風にしか、伝えられないなんて俺ダサかったかな?
優衣といると、こんな俺が本当に幸せを感じて、もっと優衣の喜ぶ顔がみたいって思う
だから…うん、伝えよう
「ありがとう優衣、俺のそばにいてくれて」
「津軽さん…!私もありがとうございます」
「子どもは何人欲しい?俺は10人かな」
「もお!だからっ そーゆー所!」
「優衣との結婚生活って退屈しなさそ~」
「つ、疲れた…。してあげませんよぉ?」
「だーめ、こんだけガマンさせてるんだから責任取ってよ」
「話を聞いてくださいと言いたい所ですが…責任取ります。津軽さんこそ、覚悟しておいてくださいね?」
揺るぎない視線が胸に突き刺さった。
だから俺はいつも君に勝てない。
でも…
離れてしまった身体を再び抱き寄せ、耳元で囁いた
「未来の奥さん、君は黙って俺に愛されなさい」
赤くなる頬が愛くるしい。いつだって俺の心に幸せの嵐をくれるのは君だから。
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