落乱の男主攻め
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺は物心ついた時からここタソガレドキの忍者村で育ったのだが両親はこの村の出身ではないどころか俺は両親の顔を知らない。どうやら俺の生みの親は偶然この村近くで息絶えた行旅死亡人であったらしい。両親の骸の側で1人泣く乳呑子であった俺を哀れに思った先代の組頭が引き取り養育してくれる事になったのだが忍者村というのは血縁を重んじる為外様の人間に対して存外冷たいのだ。まぁそれ自体は仕方ない事だと諦めて訓練以外は1人で過ごしていたのだがそんな俺に声をかけた奇特な子どもがいた、名前は高坂陣内左衛門。俺の幼馴染にして俺の想い人だ。
「お前、名は」
「…ゆめお」
「何故こんな所に一人でいる」
「周りの人からしたら僕は余所者だからだよ」
「?お前はもうこの村の人間ではないのか?」
たった一言、されどその一言が俺の心を強く揺らした。余所者だと距離を取られる事が当たり前の日々の中で俺をあくまで村の人間の1人として扱ってもらえた事が嬉しかったからだ。それ以降俺は高坂の後ろへついて回るようになったし、それまで手を抜いていた忍としての訓練にも精を出すようになった。訓練そのものは過酷極まりないがあいつの隣にいる為には強くならないといけない気がしたからだ。そしてその努力の甲斐あってか、今では狼隊小頭補佐の地位にまで登り詰めた。
だが、どれだけ努力しても人間には越えられない壁というものがある。俺にとっての壁とは目の前にいるタソガレドキ忍軍100人を束ねる組頭の雑渡昆奈門様であった。
「組頭、私に縁談を設けて頂けないでしょうか」
「…藪から棒に、どうしたの急に縁談なんて」
組頭は凄い方だ、タソガレドキ次期跡継ぎである若様の正妻と忍軍の組頭という圧倒的な地位と実力を持ち合わせながら、常に俺達部下の事を重んじてくれ時には自己犠牲も厭わない高潔な精神をお持ちの方である。それにとても優しいからこそ今でも突然の訪問にも関わらず手を止め真っ直ぐに俺を見据えてこんな荒唐無稽な話に耳を傾けてくれる、そんなお人だからこそ組の中で組頭を崇拝する者もいる。そして、その代表格が俺の想い人の高坂だ。今よりも若い時は組頭より俺を見てもらいたくて必死に努力したが最近それに疲れてしまった。所詮凡人がいくら努力しようとも天上の存在に敵うはずがない。それに昔高坂は組頭の集いであったそうではないか。高坂はきっと1人の男として組頭を想っているに違いない…俺は端から勝てない戦に挑んでしまったようだ。ならば俺は勇気ある撤退をしようではないか。
「いつ死ぬか分からないからこそ、生きてる内に人に愛されたいと思いました」
これは俺自身の本音でもある。元々身寄りのない捨て子であった俺の事を快く思わない人間は少なからずいる。まぁ同じ組のものであれば真正面からねじ伏せてきたが、ふとした時に後ろ盾も守るべき存在も何も無い自分というのは脆い存在だと感じる。せめて俺の事を心から慕ってくれる存在がいてくれれば、高坂への情念が消えて遂に空虚そのものになった俺の心の臓に空いた穴を埋めてくれるのかもしれない。
「…陣左の事はどうするの?」
「何故、あいつの名を出すのですか?高坂は関係ないかと」
「…ゆめお、」
組頭は恐らく俺が高坂に対してどの様な想いを抱いてるのか気付いているのだろう。だが俺は敢えてそれを見て見ぬふりをする。今となってはそんなもの無意味に過ぎないからだ。
「私の希望は、顔と器量が良く私の事を生涯愛してくれる方です」
「…分かったよ」
組頭は小さくため息を吐かれた。あぁ、今絶対に呆れられたな。申し訳なさが生まれるがそれでもここで引いたら組頭の前で恥をかいた意味がないので耐え忍ぶしかない。
「それでは、失礼します」
そう言って障子を開けると廊下に高坂の姿があった。
「何でここにいるんだよ」
「…組頭に忍務の報告に来た」
「そうかよ」
何故か高坂に睨まれている気がするが気の所為だろうか?…まぁ、こいつ昔から目つきが悪いからな、きっと俺の勘違いだろうと高坂とは逆方向に歩を進めようとした時高坂に手首を掴まれた。
「何だよ」
「何故だ」
「は?」
「何故、縁談なんて…」
ちっ、こいつやっぱりさっきの話盗み聞きしてやがったな。別に俺が誰と縁談を組んでもらおうがお前に関係ないだろ、頭脳筋か?てめえは。
「お前に関係ないだろ」
「っ、!」
「じゃあな」
あんだけ想っていた筈なのに、今となったらどうでも良くなってしまった。もう忘れよう、高坂の事なんて忘れて俺は所帯を持つんだ。奥方となってくれる人とその間に産まれた子どもと慎ましく暮らすんだ。別に嫁さんの顔なんてどうでもいい、炊事洗濯が苦手だろうがいい。ただ俺のことを、俺だけを見てくれればいい。
****************************
「組頭」
「何?」
「何で、ここに高坂がいるんですか」
俺が組頭に縁談をお願いしてから数日経った頃、組頭から縁談が決まったと聞かされた俺は普段の忍装束ではなく私服に着替え組頭の元へ馳せ参じた。組頭はどんな相手を見繕ってくれたのだろうか。組頭が決めたのだからきっと素晴らしい女子なのだろう。相手はタソガレドキのくの一だろうか?それとも町娘?はたまた忍術学園のくのたまだろうか。まぁ相手は誰でも良い。誰であっても俺はその人を愛すると決めているんだ。俺がまだ見ぬ奥方となる相手の事を思い浮かべていた時ゆっくりと部屋の障子が開いた。きっと縁談相手に違いない、俺は期待の眼差しを障子のその先にいる人物へ注いだ。
「組頭、お待たせ致しました」
「…ん?」
しかし障子を開いて現れたのは高坂であった。いつもの忍装束ではなく俺と同じ休みの日の着物姿で。何故こいつがいるのか、忍務の報告か?いや、それにしては何故忍装束を纏っていないのか。俺の脳内に大量の疑問符が浮かぶ。
「ゆめお、待たせたね。彼が君の縁談相手だよ」
「…組頭、お戯れはおやめください。私は真剣に縁談を「うん、知ってるよ」…なら何故?」
「陣左が、顔が良くて器量も良くてゆめおの事を一途に慕ってるから君のお嫁さんに相応しいと思ったからだよ」
組頭は本気だ、そのお顔を見た瞬間俺は察した。いや、まぁ確かに高坂は顔が良く器量も良いのだがこいつは男だし組頭を慕っているではないか。そもそも俺の事を慕ってるというのはどういう意味だ?こいつとはただの幼馴染で同期であるというだけなのに?
「ゆめお」
「…何だよ」
「私では駄目か?」
「…お前は嫌じゃねえのかよ。組頭の命令で俺と縁談させられるんだぞ?」
「これは命令等ではない、私から申し出たのだ」
高坂は普段の調子を崩さず真っ直ぐに俺を見据えて堂々と言い放った。まさか本当にこいつ俺の事を好いているというのか。いや、だがしかしそんな都合の良い事がある訳
「よし、じゃあ後はお若い2人でゆっくりしてね」
「あ、ちょ組頭!待ってくださいまだ話が!」
「陣左、ゆめおはね本当は嬉しいんだけど少し驚いちゃってるみたい。こういう時はこちらから押してあげるんだよ」
「心得ております組頭」
「あの、何の話を…って、おい!何脱がそうとしてるんだよ!?」
「くのいち達から手解きは受けた。安心して私に身を委ねろ」
その後、半ば強引に高坂を抱く形となり翌日には揃いの紋付袴を纏い祝言を挙げる事となった。完全に組頭と高坂の勢いに負けた気がするのだがその時の俺達を見た組頭や小頭達は一様に「推しカプが漸く結婚してくれた」と涙を流していた。
「陣左、お前組頭の事が好きなんじゃないのかよ」
「組頭は確かに尊敬しているが、私が好きなのはお前だけだ。でなければ嫁入り等せぬ」
「お前、名は」
「…ゆめお」
「何故こんな所に一人でいる」
「周りの人からしたら僕は余所者だからだよ」
「?お前はもうこの村の人間ではないのか?」
たった一言、されどその一言が俺の心を強く揺らした。余所者だと距離を取られる事が当たり前の日々の中で俺をあくまで村の人間の1人として扱ってもらえた事が嬉しかったからだ。それ以降俺は高坂の後ろへついて回るようになったし、それまで手を抜いていた忍としての訓練にも精を出すようになった。訓練そのものは過酷極まりないがあいつの隣にいる為には強くならないといけない気がしたからだ。そしてその努力の甲斐あってか、今では狼隊小頭補佐の地位にまで登り詰めた。
だが、どれだけ努力しても人間には越えられない壁というものがある。俺にとっての壁とは目の前にいるタソガレドキ忍軍100人を束ねる組頭の雑渡昆奈門様であった。
「組頭、私に縁談を設けて頂けないでしょうか」
「…藪から棒に、どうしたの急に縁談なんて」
組頭は凄い方だ、タソガレドキ次期跡継ぎである若様の正妻と忍軍の組頭という圧倒的な地位と実力を持ち合わせながら、常に俺達部下の事を重んじてくれ時には自己犠牲も厭わない高潔な精神をお持ちの方である。それにとても優しいからこそ今でも突然の訪問にも関わらず手を止め真っ直ぐに俺を見据えてこんな荒唐無稽な話に耳を傾けてくれる、そんなお人だからこそ組の中で組頭を崇拝する者もいる。そして、その代表格が俺の想い人の高坂だ。今よりも若い時は組頭より俺を見てもらいたくて必死に努力したが最近それに疲れてしまった。所詮凡人がいくら努力しようとも天上の存在に敵うはずがない。それに昔高坂は組頭の集いであったそうではないか。高坂はきっと1人の男として組頭を想っているに違いない…俺は端から勝てない戦に挑んでしまったようだ。ならば俺は勇気ある撤退をしようではないか。
「いつ死ぬか分からないからこそ、生きてる内に人に愛されたいと思いました」
これは俺自身の本音でもある。元々身寄りのない捨て子であった俺の事を快く思わない人間は少なからずいる。まぁ同じ組のものであれば真正面からねじ伏せてきたが、ふとした時に後ろ盾も守るべき存在も何も無い自分というのは脆い存在だと感じる。せめて俺の事を心から慕ってくれる存在がいてくれれば、高坂への情念が消えて遂に空虚そのものになった俺の心の臓に空いた穴を埋めてくれるのかもしれない。
「…陣左の事はどうするの?」
「何故、あいつの名を出すのですか?高坂は関係ないかと」
「…ゆめお、」
組頭は恐らく俺が高坂に対してどの様な想いを抱いてるのか気付いているのだろう。だが俺は敢えてそれを見て見ぬふりをする。今となってはそんなもの無意味に過ぎないからだ。
「私の希望は、顔と器量が良く私の事を生涯愛してくれる方です」
「…分かったよ」
組頭は小さくため息を吐かれた。あぁ、今絶対に呆れられたな。申し訳なさが生まれるがそれでもここで引いたら組頭の前で恥をかいた意味がないので耐え忍ぶしかない。
「それでは、失礼します」
そう言って障子を開けると廊下に高坂の姿があった。
「何でここにいるんだよ」
「…組頭に忍務の報告に来た」
「そうかよ」
何故か高坂に睨まれている気がするが気の所為だろうか?…まぁ、こいつ昔から目つきが悪いからな、きっと俺の勘違いだろうと高坂とは逆方向に歩を進めようとした時高坂に手首を掴まれた。
「何だよ」
「何故だ」
「は?」
「何故、縁談なんて…」
ちっ、こいつやっぱりさっきの話盗み聞きしてやがったな。別に俺が誰と縁談を組んでもらおうがお前に関係ないだろ、頭脳筋か?てめえは。
「お前に関係ないだろ」
「っ、!」
「じゃあな」
あんだけ想っていた筈なのに、今となったらどうでも良くなってしまった。もう忘れよう、高坂の事なんて忘れて俺は所帯を持つんだ。奥方となってくれる人とその間に産まれた子どもと慎ましく暮らすんだ。別に嫁さんの顔なんてどうでもいい、炊事洗濯が苦手だろうがいい。ただ俺のことを、俺だけを見てくれればいい。
****************************
「組頭」
「何?」
「何で、ここに高坂がいるんですか」
俺が組頭に縁談をお願いしてから数日経った頃、組頭から縁談が決まったと聞かされた俺は普段の忍装束ではなく私服に着替え組頭の元へ馳せ参じた。組頭はどんな相手を見繕ってくれたのだろうか。組頭が決めたのだからきっと素晴らしい女子なのだろう。相手はタソガレドキのくの一だろうか?それとも町娘?はたまた忍術学園のくのたまだろうか。まぁ相手は誰でも良い。誰であっても俺はその人を愛すると決めているんだ。俺がまだ見ぬ奥方となる相手の事を思い浮かべていた時ゆっくりと部屋の障子が開いた。きっと縁談相手に違いない、俺は期待の眼差しを障子のその先にいる人物へ注いだ。
「組頭、お待たせ致しました」
「…ん?」
しかし障子を開いて現れたのは高坂であった。いつもの忍装束ではなく俺と同じ休みの日の着物姿で。何故こいつがいるのか、忍務の報告か?いや、それにしては何故忍装束を纏っていないのか。俺の脳内に大量の疑問符が浮かぶ。
「ゆめお、待たせたね。彼が君の縁談相手だよ」
「…組頭、お戯れはおやめください。私は真剣に縁談を「うん、知ってるよ」…なら何故?」
「陣左が、顔が良くて器量も良くてゆめおの事を一途に慕ってるから君のお嫁さんに相応しいと思ったからだよ」
組頭は本気だ、そのお顔を見た瞬間俺は察した。いや、まぁ確かに高坂は顔が良く器量も良いのだがこいつは男だし組頭を慕っているではないか。そもそも俺の事を慕ってるというのはどういう意味だ?こいつとはただの幼馴染で同期であるというだけなのに?
「ゆめお」
「…何だよ」
「私では駄目か?」
「…お前は嫌じゃねえのかよ。組頭の命令で俺と縁談させられるんだぞ?」
「これは命令等ではない、私から申し出たのだ」
高坂は普段の調子を崩さず真っ直ぐに俺を見据えて堂々と言い放った。まさか本当にこいつ俺の事を好いているというのか。いや、だがしかしそんな都合の良い事がある訳
「よし、じゃあ後はお若い2人でゆっくりしてね」
「あ、ちょ組頭!待ってくださいまだ話が!」
「陣左、ゆめおはね本当は嬉しいんだけど少し驚いちゃってるみたい。こういう時はこちらから押してあげるんだよ」
「心得ております組頭」
「あの、何の話を…って、おい!何脱がそうとしてるんだよ!?」
「くのいち達から手解きは受けた。安心して私に身を委ねろ」
その後、半ば強引に高坂を抱く形となり翌日には揃いの紋付袴を纏い祝言を挙げる事となった。完全に組頭と高坂の勢いに負けた気がするのだがその時の俺達を見た組頭や小頭達は一様に「推しカプが漸く結婚してくれた」と涙を流していた。
「陣左、お前組頭の事が好きなんじゃないのかよ」
「組頭は確かに尊敬しているが、私が好きなのはお前だけだ。でなければ嫁入り等せぬ」