落乱の男主攻め
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それを聞かされたのはいつもの様に忍務から帰ってきた時だった。忍務の報告を殿と若様にしなければと考えながら城の長い廊下を歩いていた時廊下の突き当たりから出てきた山本と目が合ったので、挨拶の意味を込めて手を上げようとしたら山本が血相を変えて私の方に近づいてきて「殿が呼んでいるので至急向かってください」と伝えてきた。あの山本が血相を変える程だなんて余程の事態なのだろうと悟った私は直ぐに殿の元へ向かった。そして、殿がいらっしゃる広間に足を踏み入れると上段の間には殿とゆめお様が座しておられたのだが、その時のゆめお様のお顔が普段とは対象的に暗く沈まれていることを見逃さなかった。
「雑渡、良く来たな」
「はっ、…殿、本日はどの様な御用命で」
「ふむ…急ではあるがこの度ゆめおに側室を迎えさせようと考えておってな」
「…!、左様でございますか」
殿の口から側室という単語を聞いた瞬間一瞬身体が硬直したものの直ぐに冷静さを取り戻し殿に対して言葉を返した。いつか対峙すると分かっていながらずっとその問題から目を逸らしてきていたけど、ついにその時がきてしまったようだね。私とゆめお様は確かに気持ちが通じ合っている事は間違いない。周知の事実であるからこそ私は「正室」として扱って貰えているのだけど、それだけではどうにもならない問題がある。それは「跡継ぎ」の問題だ。こればかりは、どれだけ私達が愛し合っていたとしても私が男である以上跡継ぎは産まれない。別に男色自体珍しいものではないけれど、跡継ぎが産めない嫁等価値はないと言っても過言ではない。ましてや相手はタソガレドキ国の次期領主となるゆめお様には当然跡継ぎが求められる。何もおかしな事はない。
「…お相手は既に決められたのでしょうか」
「相手は同盟国の姫君じゃ」
「左様で」
「ゆめお、雑渡。お前達は儂を恨むか」
「…いえ、異議はございません」
「滅相もございません」
ならばこの話は終いだ、そう言い残して殿はお一人で広間を後にされた。残ったのはゆめお様と私の2人だが互いに言葉を発そうとしない為外の雨の音だけが室内に響き渡る。
「昆奈門」
「はい」
「後程、俺の部屋に来てくれ」
「承知いたしました」
そう言ってゆめお様はお一人で広間を立ち去られてしまった。幼年期からお側にいた私には分かる、広間を立ち去る時の横顔あれはご自分を責められている時のお顔だ。ゆめお様は亡き奥方様に似てお優しい方だ。お忍びで出掛けられた先で困っている老人や怪我をしている子どもに対して自ら手を差し伸べられる尊い方なのだが、反面その優しさ故に苦しまれることがある。この間なんて自分の命を狙ってきた刺客に対して「命までは奪うな」って言ってきたんだよ?まぁ、しっかり私が始末したけどね。その後それとなく私に刺客の事を尋ねてきたから始末した旨を伝えると「…あいつにも家族がいただろうに」と小さく呟いたんだよ。そんなお人好しなゆめお様だから、きっと今夜「俺と離縁したくなったら申し出てくれ」「お前には余計な気苦労等せず幸せになってほしい、俺の事は忘れろ」とか言うに違いない。もし外れたら裸で逆立ちしてこの国を一周してもいいぐらいには自信がある。別に側室が出来たって私の気持ちは変わらないし、例えゆめお様が私の事を飽きたとしても離れるつもりなんてないのにね。
「組頭」
ゆめお様の元にでも向かおうとした時背後から声を掛けられたので振り返るとそこには山本がいた。口布をしているから分かりづらいけどその表情から何を考えているかなんて一目瞭然。
「組頭、大丈夫ですか」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう心配してくれて」
「…あの、組頭」
「山本、私なら本当に大丈夫だよ」
何か言いたげそうな山本の言葉を敢えて私は遮る。そりゃあ、私だって側室を迎え入れると聞いて動揺はしたけどそれ以上に大丈夫だという確信があった。だってゆめお様は私以外の人間に靡く様な男ではないもの。
「それじゃあ、私は若様の元に行くよ」
「…承知いたしました」
山本の心配そうな目線を背後に感じながらも私はひとまずゆめお様がお待ちであろう御邸へ向かう事にした。このまま1人にしていたらどんどん悪い考えに至るからね、うちの可愛い若様は。
*****************************
「昆奈門、良く来てくれた。実はお前に話が「離縁はしませんよ、ゆめお様が嫌だと言ってもこの命尽きるまで貴方様のお側におります」…俺が言おうとした事を先に言うな…」
「貴方のお考えなど全てお見通しです」
ゆめお様の自室に入るや否や私の予想は見事的中したので、私は湯呑みの茶を啜りながら私の気持ちを簡潔に伝えるとゆめお様は拍子抜けした表情を浮かべる。
「お前、ここはお互いの気持ちがすれ違いながらも最後には手を取り合う場面なんじゃないのか。南蛮の絵巻物で読んだぞ」
「そんなの知りません、文句ならこの話を書いてる管理人に言ってください」
「急にメタ的発言はやめろよ…」
ゆめお様が頭を抱え始めたけれど私はそんな事一切気にせず私は言葉を続けることにした。
「側室と聞いて確かに驚きはしましたが、お世継ぎを産む事は貴方に課せられたお勤めの一つです。そこは貴方様もご理解されているかと」
「…だが、俺がお前以外の者と夜を共にするのだぞ」
「側室様との閨は義務ですが、私との閨は義務ではなく互いに想いを寄せ合ってのものですので意味合いは異なるかと」
「…俺が側室殿に心を奪われないか心配ではないのか?」
「貴方様のお気持ちはその程度で変わるものなのですか?」
「…」
私がゆめお様のお言葉の全てを切り捨てたところ最後には一言も発せられなくなった。全く、このお方は私の事を何も分かっていないのだから。
「いいですかゆめお様。私は別に今も亡き奥方様を想ってるのに望まない婚儀を強いられたという訳ではありません。私の意思で貴方様のお側にいたいんです。例えどんな手段を取ってもゆめお様のお側にいたいんです」
「…お前、実は結構重い奴なのか?」
「はい、私はしつこい男ですよ」
「…昆奈門」
私の言葉を聞いたゆめお様は一拍置いてからいつものゆめお様ではなく黄昏ゆめおとしてのお顔を見せられたので、私も床に手をつき頭を下げ言葉を賜る姿勢を見せた
「お前には何かと気面倒をかけるが、よろしく頼むぞ」
「勿論でございます、ゆめお様」
結局、その後ゆめお様とご側室殿のご縁談は破談となった。何でもお相手の姫君が想いを寄せている殿方がおり、その方と結ばれないのなら自害すると啖呵を切ったんだって。
…まぁ、そのお姫様と殿方が結ばれる事はないんだけどね。だってその相手は私だもん。え、何でそんな事をしたかって?そりゃあねぇ、殿とゆめお様の手前側室の事は受け入れると言ったけどやっぱり嫌じゃん。お家の為とかそんなの私の知った事じゃないし。だから少しばかりお相手のお姫様の前に変装して近付いてちょっとばかり手心を加えただけだよ…あ、これゆめお様には内密にね。
「雑渡、良く来たな」
「はっ、…殿、本日はどの様な御用命で」
「ふむ…急ではあるがこの度ゆめおに側室を迎えさせようと考えておってな」
「…!、左様でございますか」
殿の口から側室という単語を聞いた瞬間一瞬身体が硬直したものの直ぐに冷静さを取り戻し殿に対して言葉を返した。いつか対峙すると分かっていながらずっとその問題から目を逸らしてきていたけど、ついにその時がきてしまったようだね。私とゆめお様は確かに気持ちが通じ合っている事は間違いない。周知の事実であるからこそ私は「正室」として扱って貰えているのだけど、それだけではどうにもならない問題がある。それは「跡継ぎ」の問題だ。こればかりは、どれだけ私達が愛し合っていたとしても私が男である以上跡継ぎは産まれない。別に男色自体珍しいものではないけれど、跡継ぎが産めない嫁等価値はないと言っても過言ではない。ましてや相手はタソガレドキ国の次期領主となるゆめお様には当然跡継ぎが求められる。何もおかしな事はない。
「…お相手は既に決められたのでしょうか」
「相手は同盟国の姫君じゃ」
「左様で」
「ゆめお、雑渡。お前達は儂を恨むか」
「…いえ、異議はございません」
「滅相もございません」
ならばこの話は終いだ、そう言い残して殿はお一人で広間を後にされた。残ったのはゆめお様と私の2人だが互いに言葉を発そうとしない為外の雨の音だけが室内に響き渡る。
「昆奈門」
「はい」
「後程、俺の部屋に来てくれ」
「承知いたしました」
そう言ってゆめお様はお一人で広間を立ち去られてしまった。幼年期からお側にいた私には分かる、広間を立ち去る時の横顔あれはご自分を責められている時のお顔だ。ゆめお様は亡き奥方様に似てお優しい方だ。お忍びで出掛けられた先で困っている老人や怪我をしている子どもに対して自ら手を差し伸べられる尊い方なのだが、反面その優しさ故に苦しまれることがある。この間なんて自分の命を狙ってきた刺客に対して「命までは奪うな」って言ってきたんだよ?まぁ、しっかり私が始末したけどね。その後それとなく私に刺客の事を尋ねてきたから始末した旨を伝えると「…あいつにも家族がいただろうに」と小さく呟いたんだよ。そんなお人好しなゆめお様だから、きっと今夜「俺と離縁したくなったら申し出てくれ」「お前には余計な気苦労等せず幸せになってほしい、俺の事は忘れろ」とか言うに違いない。もし外れたら裸で逆立ちしてこの国を一周してもいいぐらいには自信がある。別に側室が出来たって私の気持ちは変わらないし、例えゆめお様が私の事を飽きたとしても離れるつもりなんてないのにね。
「組頭」
ゆめお様の元にでも向かおうとした時背後から声を掛けられたので振り返るとそこには山本がいた。口布をしているから分かりづらいけどその表情から何を考えているかなんて一目瞭然。
「組頭、大丈夫ですか」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう心配してくれて」
「…あの、組頭」
「山本、私なら本当に大丈夫だよ」
何か言いたげそうな山本の言葉を敢えて私は遮る。そりゃあ、私だって側室を迎え入れると聞いて動揺はしたけどそれ以上に大丈夫だという確信があった。だってゆめお様は私以外の人間に靡く様な男ではないもの。
「それじゃあ、私は若様の元に行くよ」
「…承知いたしました」
山本の心配そうな目線を背後に感じながらも私はひとまずゆめお様がお待ちであろう御邸へ向かう事にした。このまま1人にしていたらどんどん悪い考えに至るからね、うちの可愛い若様は。
*****************************
「昆奈門、良く来てくれた。実はお前に話が「離縁はしませんよ、ゆめお様が嫌だと言ってもこの命尽きるまで貴方様のお側におります」…俺が言おうとした事を先に言うな…」
「貴方のお考えなど全てお見通しです」
ゆめお様の自室に入るや否や私の予想は見事的中したので、私は湯呑みの茶を啜りながら私の気持ちを簡潔に伝えるとゆめお様は拍子抜けした表情を浮かべる。
「お前、ここはお互いの気持ちがすれ違いながらも最後には手を取り合う場面なんじゃないのか。南蛮の絵巻物で読んだぞ」
「そんなの知りません、文句ならこの話を書いてる管理人に言ってください」
「急にメタ的発言はやめろよ…」
ゆめお様が頭を抱え始めたけれど私はそんな事一切気にせず私は言葉を続けることにした。
「側室と聞いて確かに驚きはしましたが、お世継ぎを産む事は貴方に課せられたお勤めの一つです。そこは貴方様もご理解されているかと」
「…だが、俺がお前以外の者と夜を共にするのだぞ」
「側室様との閨は義務ですが、私との閨は義務ではなく互いに想いを寄せ合ってのものですので意味合いは異なるかと」
「…俺が側室殿に心を奪われないか心配ではないのか?」
「貴方様のお気持ちはその程度で変わるものなのですか?」
「…」
私がゆめお様のお言葉の全てを切り捨てたところ最後には一言も発せられなくなった。全く、このお方は私の事を何も分かっていないのだから。
「いいですかゆめお様。私は別に今も亡き奥方様を想ってるのに望まない婚儀を強いられたという訳ではありません。私の意思で貴方様のお側にいたいんです。例えどんな手段を取ってもゆめお様のお側にいたいんです」
「…お前、実は結構重い奴なのか?」
「はい、私はしつこい男ですよ」
「…昆奈門」
私の言葉を聞いたゆめお様は一拍置いてからいつものゆめお様ではなく黄昏ゆめおとしてのお顔を見せられたので、私も床に手をつき頭を下げ言葉を賜る姿勢を見せた
「お前には何かと気面倒をかけるが、よろしく頼むぞ」
「勿論でございます、ゆめお様」
結局、その後ゆめお様とご側室殿のご縁談は破談となった。何でもお相手の姫君が想いを寄せている殿方がおり、その方と結ばれないのなら自害すると啖呵を切ったんだって。
…まぁ、そのお姫様と殿方が結ばれる事はないんだけどね。だってその相手は私だもん。え、何でそんな事をしたかって?そりゃあねぇ、殿とゆめお様の手前側室の事は受け入れると言ったけどやっぱり嫌じゃん。お家の為とかそんなの私の知った事じゃないし。だから少しばかりお相手のお姫様の前に変装して近付いてちょっとばかり手心を加えただけだよ…あ、これゆめお様には内密にね。
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