落乱の男主攻め
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初めて、その人に会ったのは俺が幼子の時であった。今は亡き母に「どうしても外に出たい」と無理を言って国内を視察するという名目で近くの村を訪れた時に敵対国の刺客に囲まれたことがあった。黄昏甚兵衛の1人息子でありその跡継ぎとなれば常に暗殺の危険が付いて回ってくるなんて事を知らない俺は、護衛として付いてきてくれた顔見知りの者達が次々と血を流しながら倒れていくのを涙を流しながら見ている事しか出来なかった。そして、気付けばその場に残ったのは俺と母だけとなった。戦う術を持たない母であったが気丈にも恐怖で震える俺を抱きながら“殺すならば私を殺しなさい。その代わりこの子には指一本触れないでと刺客に対して啖呵を切った姿は今も覚えている。しかしながら勇ましさだけでどうにかなる訳でもなく、母諸共命を奪われかけたそんな時1人の男が俺達の前に現れた。
「奥方様、若様ご無事でしょうか」
突如現れた忍装束に身を包んだ大男は俺達の前に恭しく跪いた。見知らぬ男に対して怖がる俺とは対照的に母は男の姿を見て一瞬安堵の表情を浮かべてから男の問い掛けに言葉を返した。
「雑渡さん、来てくれたんですね…ゆめお、安心してもう大丈夫。怖い人は雑渡さんが退治してくれるから!」
「ざっと…?」
「お初にお目にかかります、若様」
雑渡は母の着物に縋る俺の手にそっと自身の大きな手を重ねてきた。恐らく安心させる為なのだろうが当時の俺には突然現れた得体のしれない男の手を握り返すことは出来なかった。だが、雑渡はそんな俺に対して優しい声色で「私が来たからにはもう大丈夫ですよ」と言葉をくれた。
「雑渡さん、お願いします」
「勿論です、貴女と若様の命を狙う不届き者は私が懲らしめてやりますよ」
その後は本当に一瞬であった。母に「貴方は見ては駄目」と視界を遮られたのだが次に俺の目が開かれた時既に刺客達は全員地に伏せられていた。多勢に無勢の状況で、それも二人を庇いながら戦わねばならない状況をものともしない雑渡の圧倒的な強さに対して俺は畏敬の念を抱くと同時に別の言いしれぬ感情を抱いた。それが何なのかはその時は分からなかったが、今なら何となく分かるかもしれない。俺はあの時からあいつのことが
**********************
「あいつって誰の事ですか?」
「うわぁあああ!?」
「ちょっと、大きな声を出さないでください。びっくりしちゃうじゃないですか」
「それはこっちの台詞だ!」
城の一角にある道場にて目を瞑り過去の記憶に対して想いを馳せている時突然頭上から声が聞こえたので、顔を上げるとそこにはかつて命を救ってくれた恩人であり俺の世話人である雑渡昆奈門が天井から顔を覗かせていた。突然の事に動揺し尻もちをついてしまったじゃないか!最悪だ!!!何故お前は気配を完全に消した状態で突然天井から顔を出してくるんだよ!忍者かてめぇは…あ、そういえばこいつ忍者だったわ。
「若様、今私に対して失礼な事を考えていたでしょう?」
「はて、何のことだ?」
「まぁ、いいですけど。そんな事より、そろそろ休憩した方がいいんじゃないですか?」
もう昼餉の時間ですよ、と雑渡の言葉を聞き外の景色を見ると俺が最初に見た寒々しい冬の朝から穏やかな昼の様相へと移り変わっていた。そうか、もうそれだけ時間が経っていたのか…稽古をしているとどうしても時間を忘れてしまう。
「そうだな、腹も空いてきたから飯にするか」
「それがいいです。あ、そうだ昼餉ですけど若様の為に私が作ってきましたよ」
「お前のは、どうせいつもの粥だろう」
「違いますよ、お腹が空いてるだろうと思って塩むすびを握ってきました。私の愛情たっぷりですよ」
「…そうか、ならば頂こう」
はい、どうぞと差し出されたのはやや大ぶりな塩むすびであった。これが雑渡の手作りか塩むすびか、と感慨に耽っていると早く食べないと冷めますよと急かされたので言われるがまま口に含むと塩分と米の甘みが口内いっぱいに広がる。稽古で汗を流していた俺にはうってつけの昼餉だな。
「美味い」
「そうでしょう?まだまだ沢山ありますから食べてください」
あ、お水飲みます?と女子座りをしながら俺に竹筒を差し出す雑渡の姿は我が国が誇る最強の忍衆の組頭ではなく幼子の世話を焼く母の様である。
「おい、あまり稚児扱いするな」
「えー、何でですか?私にとって若様は可愛い御方ですから、ついお世話したくなるんです」
「…」
雑渡の言葉に俺は人知れず肩を落とす。そう、こいつは昔から俺の事を稚児扱いしてくるのだ。雑渡と俺は干支が一周しても足りない程に年齢差がある故に一向に1人の男子として見られていない事には気付いていたが、ここまでとはな。
「戯れはやめろ、俺はとうの昔に元服を済ませている成人男子だ」
「なんですか、怒ってるんですか?」
「…怒ってなどいない」
「どうしたんですか、おむすびの味が気に食わなかったんですか…って、若様何してるんですか?」
雑渡があまりにも俺を茶化すのて俺の中の導火線に火がついてしまい気付けば俺は雑渡を床の上に押し倒していた。普段ならば俺より高い位置にある雑渡の顔を見下ろすその光景は微かな優越感を感じられるな。
「驚いた、お前ほどの男が俺の様な稚児に倒されるとはな」
「も〜、何をそんなに怒ってるんですか?」
「…お前、今の状況がわからないのか?」
「わかりますよ、私が若様に押し倒されてこれから破廉恥な事をされてしまう状況だと」
「な…、はぁ!?」
雑渡を少しでも驚かせてやろう、あわよくば少しは俺の事を男として見させてやろうとしか考えていなかった為雑渡の返答を聞いて俺は思わず立ち退いてしまった。さも当然の様な顔をして何を言ってるんだこいつは…
「あれ、しないんですか?」
「す、するわけないだろう!お前には貞操観念かないのか!」
「あるに決まってるでしょう、じゃなきゃわざと押し倒されりしませんよ。若様は強いですけど私はもっと強いので」
「…何だ、それはどういう意味だ」
「だーかーら、若様になら抱かれてもいいかなーと思ったってことですよ」
「…は?」
「じゃあ、私忍務あるので。昼餉ちゃんと食べてくださいね」
「あ、おい雑渡!!待て!!」
そう言って雑渡は天井裏に移動し俺に向かって手を降ってから姿を消した。
「どういうことだ…?」
その場に1人取り残された俺は雑渡の言葉を何度も反芻していたのだが、その内家老から説教を受ける事となった。
「奥方様、若様ご無事でしょうか」
突如現れた忍装束に身を包んだ大男は俺達の前に恭しく跪いた。見知らぬ男に対して怖がる俺とは対照的に母は男の姿を見て一瞬安堵の表情を浮かべてから男の問い掛けに言葉を返した。
「雑渡さん、来てくれたんですね…ゆめお、安心してもう大丈夫。怖い人は雑渡さんが退治してくれるから!」
「ざっと…?」
「お初にお目にかかります、若様」
雑渡は母の着物に縋る俺の手にそっと自身の大きな手を重ねてきた。恐らく安心させる為なのだろうが当時の俺には突然現れた得体のしれない男の手を握り返すことは出来なかった。だが、雑渡はそんな俺に対して優しい声色で「私が来たからにはもう大丈夫ですよ」と言葉をくれた。
「雑渡さん、お願いします」
「勿論です、貴女と若様の命を狙う不届き者は私が懲らしめてやりますよ」
その後は本当に一瞬であった。母に「貴方は見ては駄目」と視界を遮られたのだが次に俺の目が開かれた時既に刺客達は全員地に伏せられていた。多勢に無勢の状況で、それも二人を庇いながら戦わねばならない状況をものともしない雑渡の圧倒的な強さに対して俺は畏敬の念を抱くと同時に別の言いしれぬ感情を抱いた。それが何なのかはその時は分からなかったが、今なら何となく分かるかもしれない。俺はあの時からあいつのことが
**********************
「あいつって誰の事ですか?」
「うわぁあああ!?」
「ちょっと、大きな声を出さないでください。びっくりしちゃうじゃないですか」
「それはこっちの台詞だ!」
城の一角にある道場にて目を瞑り過去の記憶に対して想いを馳せている時突然頭上から声が聞こえたので、顔を上げるとそこにはかつて命を救ってくれた恩人であり俺の世話人である雑渡昆奈門が天井から顔を覗かせていた。突然の事に動揺し尻もちをついてしまったじゃないか!最悪だ!!!何故お前は気配を完全に消した状態で突然天井から顔を出してくるんだよ!忍者かてめぇは…あ、そういえばこいつ忍者だったわ。
「若様、今私に対して失礼な事を考えていたでしょう?」
「はて、何のことだ?」
「まぁ、いいですけど。そんな事より、そろそろ休憩した方がいいんじゃないですか?」
もう昼餉の時間ですよ、と雑渡の言葉を聞き外の景色を見ると俺が最初に見た寒々しい冬の朝から穏やかな昼の様相へと移り変わっていた。そうか、もうそれだけ時間が経っていたのか…稽古をしているとどうしても時間を忘れてしまう。
「そうだな、腹も空いてきたから飯にするか」
「それがいいです。あ、そうだ昼餉ですけど若様の為に私が作ってきましたよ」
「お前のは、どうせいつもの粥だろう」
「違いますよ、お腹が空いてるだろうと思って塩むすびを握ってきました。私の愛情たっぷりですよ」
「…そうか、ならば頂こう」
はい、どうぞと差し出されたのはやや大ぶりな塩むすびであった。これが雑渡の手作りか塩むすびか、と感慨に耽っていると早く食べないと冷めますよと急かされたので言われるがまま口に含むと塩分と米の甘みが口内いっぱいに広がる。稽古で汗を流していた俺にはうってつけの昼餉だな。
「美味い」
「そうでしょう?まだまだ沢山ありますから食べてください」
あ、お水飲みます?と女子座りをしながら俺に竹筒を差し出す雑渡の姿は我が国が誇る最強の忍衆の組頭ではなく幼子の世話を焼く母の様である。
「おい、あまり稚児扱いするな」
「えー、何でですか?私にとって若様は可愛い御方ですから、ついお世話したくなるんです」
「…」
雑渡の言葉に俺は人知れず肩を落とす。そう、こいつは昔から俺の事を稚児扱いしてくるのだ。雑渡と俺は干支が一周しても足りない程に年齢差がある故に一向に1人の男子として見られていない事には気付いていたが、ここまでとはな。
「戯れはやめろ、俺はとうの昔に元服を済ませている成人男子だ」
「なんですか、怒ってるんですか?」
「…怒ってなどいない」
「どうしたんですか、おむすびの味が気に食わなかったんですか…って、若様何してるんですか?」
雑渡があまりにも俺を茶化すのて俺の中の導火線に火がついてしまい気付けば俺は雑渡を床の上に押し倒していた。普段ならば俺より高い位置にある雑渡の顔を見下ろすその光景は微かな優越感を感じられるな。
「驚いた、お前ほどの男が俺の様な稚児に倒されるとはな」
「も〜、何をそんなに怒ってるんですか?」
「…お前、今の状況がわからないのか?」
「わかりますよ、私が若様に押し倒されてこれから破廉恥な事をされてしまう状況だと」
「な…、はぁ!?」
雑渡を少しでも驚かせてやろう、あわよくば少しは俺の事を男として見させてやろうとしか考えていなかった為雑渡の返答を聞いて俺は思わず立ち退いてしまった。さも当然の様な顔をして何を言ってるんだこいつは…
「あれ、しないんですか?」
「す、するわけないだろう!お前には貞操観念かないのか!」
「あるに決まってるでしょう、じゃなきゃわざと押し倒されりしませんよ。若様は強いですけど私はもっと強いので」
「…何だ、それはどういう意味だ」
「だーかーら、若様になら抱かれてもいいかなーと思ったってことですよ」
「…は?」
「じゃあ、私忍務あるので。昼餉ちゃんと食べてくださいね」
「あ、おい雑渡!!待て!!」
そう言って雑渡は天井裏に移動し俺に向かって手を降ってから姿を消した。
「どういうことだ…?」
その場に1人取り残された俺は雑渡の言葉を何度も反芻していたのだが、その内家老から説教を受ける事となった。
1/5ページ