GXまとめ


[#dn=1#]は、猛烈に後悔していた。
こんな事になるなら、素直に「迎えにきてほしい」と
お願いすればよかった、と。

「うぅ、どうしよう先輩に電話した方がいいかな…!」

そう考え、ポケットからPDAを取り出してみたが画面は真っ黒のまま。
充電は切れていた。

「う、嘘でしょ…」

頼みの生徒手帳が使えないと知り、[#dn=1#]は絶望した。
辺りを見渡しても、どれだけ歩いても景色は変わらない。
むしろ、アカデミアからどんどん遠ざかっている様に感じる。
歩きすぎて足に痛みが生じていた。
[#dn=1#]の目にじんわりと涙が溜まっていった。

「助けて、ヨハン先輩…」

震える声で、ヨハンの名を呼ぶ[#dn=1#]。
そもそも、何故こんな状況になったのかと言うと、至極単純なものであった。
授業が終わり、交際しているヨハンからレッド寮で十代達と遊ぼう、と
誘われたので、オシリスレッドの寮まで向かう事になった。
しかし、[#dn=1#]はいつも誰かしらと一緒に行っていた為、
一人でレッド寮にまで行ったことがなかった。
その上、[#dn=1#]自身ヨハンに負けず劣らず方向音痴であった。
それでも、大丈夫だろうと高を括り、現在に至る。

[#dn=1#]は、ひとまず近くにあった大きな木の根元で休むことにした。ふと、空を見上げると虹が見えた。

「あ、虹だ」

虹を見て、思い出したのはヨハンの笑顔と彼の家族である宝玉獣達だった。
宝玉獣を初めて見た時、七色に輝くその美しい光、
そして彼の姿に思わず感動してしまった。
それから、虹を見ると自然と彼を思い出すようになっていた。

「先輩…」

しかし、ヨハンの事を思い出したことで、一瞬上向きになった気持ちは直ぐに下を向いてしまった。
このまま学園に戻れなかったらどうしよう、もう、先輩に会えないのか、と
[#dn=1#]の目から、大粒の雫が零れ落ちたその時だった。

「[#dn=1#]!」

誰かが自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
顔を上げると、そこにはヨハンの姿があった。

「[#dn=1#]、無事か?怪我はないか!?」
「先輩、苦しいです!」

ヨハンは、[#dn=1#]の身体を抱きしめた。痛いぐらいの力で。
[#dn=1#]が、苦しくて背中を叩いたことで慌てて離した。
翡翠色の瞳は、揺らいでいた。

「無事で良かった…っ!連絡がないから、何かあったのかと思った」
「ごめんなさい、道に迷っちゃって…えへへ」
「えへへ、じゃないだろ。俺がどれだけ心配したと思っているんだ」
「いひゃいです、しぇんぱぁい」

ヨハンにより、両頬を摘まれる[#dn=1#]。
痛い、とは言うが本当は痛みよりもヨハンが探しに来てくれた喜びが勝っていた。
しかし、ふと[#dn=1#]は疑問を抱いた。
ヨハンは、極度の方向音痴なのにどうしてここが分かったのだろう、と。
摘まれた場所を手で摩りながら、[#dn=1#]はヨハンに尋ねた。
すると、ヨハンはフッと小さく笑いながらこう言った。

「あの虹が、教えてくれたんだ」

虹を背景に笑うヨハンの姿を見て、[#dn=1#]は時々なら迷子になるのも悪くないかも、とヨハンに抱き着いた。
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