私の太子様
「太子様、起きてくださーい。もう、朝ですよ~」
「んぅ、もう少しだけ…」
「そう言ってこの間、寝坊して妹子さんに怒られてたじゃないですか」
「ちょっ、おま!やめんしゃい!!」
布団に頭まで潜る太子から、必死に布団を剥ごうとする[#dn=1#]と
布団を奪われない様に必死に手で押さえる太子
朝から、何とも不毛な争いを繰り広げている。
しかも[#dn=1#]が太子の邸宅に下宿を始めてから毎日だ。
しかも、自分がいれば仕事をする。と言うから、父にだいぶ無理を言って
太子の世話人という立場で朝廷に出入りできるようにしてもらったのに、
太子は変わらずサボってばかりであった。
これでは、自分は以前の様に国にいた方が良かったのだろうかと
最近[#dn=1#]は、自身の選択は正しかったのか、と考えていた。
「はぁ…」
「っ!な、なんだよ溜息なんて吐いて…」
「太子様がお仕事を全然しないからですよ!…私、余計なことをしちゃったのかな、と思って」
「余計な事…?」
「…太子様が、私がいればお仕事頑張るって言うからお父様にお願いして、
ここに来たのに、太子様ったらいつもサボってばかりなんだもん」
「う”っ…そ、それはすまなかった」
「脱いだ服は裏返しにしたままだし、カレーを食べたお皿にお水をつけないし、靴下とか脱ぎっぱなしだし!」
「ぐぬぬ…」
「何か、変な匂いするし…」
「ぐはぁあああああ!!!!!」
[#dn=1#]の口から出る太子への不満は、一つ一つがナイフとして太子の身体に刺さった。最早貫通していた。
そして、止めと言わんばかりの加齢(カレー)臭発言で太子のライフポイントは0となった。
「とりあえず、私は先に朝廷に行ってますから。妹子さん達のお仕事を手伝わないと」
完全に布団に沈んだ太子を見て、言い過ぎたと後悔した[#dn=1#]は気まずさから、立ち去ろうとした。
しかし、部屋を出ようとした[#dn=1#]の足首を太子に掴まれた。
振り返ると、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになった太子がいた。
「…するから…だから…」
「太子?」
「私のダメな所を直すから、私の事を嫌いにならないでくれぇえええええ!!!!」
「分かりましたから!嫌いになんてなりませんからぁ!!」
[#dn=1#]を逃がさないと言わんばかりに、掴む手の力を強める太子
細身な身体のどこにそんな力が!?と驚きながら、[#dn=1#]は観念することにした。
泣きながら嫌いにならないで、なんて言う太子の姿を見てときめいてしまったなんて事は絶対に言ってやらない、と心に誓って。