ポケモンまとめ


人もポケモンも寝静まった深夜0時
ブレイブアサギ号のクルー個人の居住スペースの
一角にあるフリードの部屋の前で
闇夜に紛れるかのように息を潜めながら[#dn=1#]は竚んでいた。
[#dn=1#]は、フリードの扉をノックしようと
伸ばした手を直ぐに引っ込めた。
今更ながら、こんな時間に部屋を訪ねては
迷惑ではないだろうか、という考えがよぎったのだ。
散々悩みぬいた末に、[#dn=1#]は覚悟を決めた様な表情を浮かべた後、小さく深呼吸をしてから扉をノックした。

「誰だ?」
「あ、あのフリード…私、[#dn=1#]です」
「[#dn=1#]?」

少しの沈黙の後に、フリードが部屋の扉を開くと、
そこには寝間着姿の[#dn=1#]がいた。
少し驚きながらも、どうかしたのか、と問い掛けるものの
返ってくるのは「うー」「あー」等容量を得ない返答のみ。
その上、[#dn=1#]の目線は泳いでいる。
このまま問答を繰り返していても、埒が明かないと考えたフリードは、
ひとまず部屋の中に招き入れることにした。
本来なら、深夜に異性を自室に招き入れるというのはご法度ではあるが、
今回ばかりは仕方ないとフリードはまるで言い訳のように心の中で念じた。

「適当な所に座ってくれ」
「ありがとう…ございます」

フリードに促されるまま[#dn=1#]は、
ベッドの上に座り、フリードは壁際に置かれた椅子を引っ張り出して、
[#dn=1#]と向かい合うように座った。

「で、どうしたんだ?こんな時間に」
「えっと、少し話があって…」
「話?どうした、何か悩み事か?」
「悩みというかなんというか…」

[#dn=1#]は、この日フリードに告白しようと決めていたのだ。
だが、いざ本人を前にしたら臆病風に吹かれてしまった。
二人の間に流れる沈黙が気まずく感じ始めた時、
不意にフリードが口を開いた。   

「そういえば、[#dn=1#]がうちに来てもう半年経つよな」
「そうでしたっけ?」
「最初はお前に嫌われてるのかと思ったけど、今となってはお前と出会えて良かったよ。ありがとうな」

フリードの言葉を聞いて、[#dn=1#]の胸に淡い期待が生まれた。
それは、今告白すればもしかしたらOKを貰えるのではないだろうかというものだ。
[#dn=1#]自身恋愛経験は少ないが、それでも明確にいつもと空気が違うという事には気付ける。
ポケモンバトルで、強敵とバトルする中で
相手がわずかでも隙を見せた時を逃さず攻撃を畳み掛ければ勝てる。
そんなチャンスが生まれた時と同じくではないか、と。

「あ、あの!フリード!」
「ん?」
「わ、私もフリードと出会えて良かった…です!これからも一緒にいたいし、その、わ、わたし…フリードの事が…」
「お?」
「す、好きです!!!!」

[#dn=1#]はついに秘めていた想いを告げたが、フリードからの返答は
[#dn=1#]が期待していたものとは異なるものであった。

「ありがとう、嬉しいよ。けど、ごめんな[#dn=1#]の事は…なんつうか妹の様に思ってたから…」

その瞬間、[#dn=1#]の目の前は真っ暗になった。
遠くでフリードが何か話す声は聞こえるような気がしたが、
[#dn=1#]の脳は思考することを拒否した。
その後、どうやって自室にまで戻ったのか記憶はない。
覚えているのは、自室のベッドの上で一晩中泣いてたということだけ。

*****************

翌日、朝ご飯の時間になっても一向にミーティングルームに現れない
[#dn=1#]を心配したマードックが、[#dn=1#]の自室を訪れると
そこには彼女の姿はなく、代わりに1枚の手紙が置かれていた。

「お世話になりました
皆さんの旅が素敵なものになることを
陰ながらお祈りしています。」

手紙には、ただ1言だけ書かれていた。
その日、[#dn=1#]はブレイブアサギ号から
姿を消した。


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