私の太子様
太子と[#dn=1#]の交際が始まった次の日から、
太子は、いつものように仕事をサボって[#dn=1#]といちゃついていた。
妹子達から呪いの言葉を吐かれてる事等気にすることなく、
呑気に[#dn=1#]の膝の上で惰眠をむさぼっていた。
「太子様、そろそろお仕事をしないと駄目ですよ」
「嫌だ!私は、[#dn=1#]から離れると死ぬ病にかかっているんだ!」
「そんな病気ないですよ…」
[#dn=1#]自身、困り果てていた。
自分の事を好いてるのは嬉しいし、
自分も太子と共にいたいが、彼は曲がりなりにも摂政だ。
この国の政において重要な立場である彼に何とか仕事をしてもらわないといけない。
でなければ、涙を流しながら何とか太子に仕事をさせてほしいと訴えていた妹子に申し訳ない。
そこで、[#dn=1#]はある考えが思い浮かんだ。
「太子様は、私がいればお仕事するんですよね?」
「ま、まぁ…そう、かもな!」
「なら、私にいい考えがあるんです」
ちょっと耳を貸してください。と言うので、
太子が身体を起こすと、[#dn=1#]は太子の耳元で囁いた。
太子はふむふむと聞きながら、内心全く内容が頭に入ってこなかった。
長い睫毛にくりくりとした瞳鈴を鳴らすような可憐な声、耳にかかる吐息
それら全てに意識が向いてしまうからだ。
「太子様、聞いてました?」
「あ、…すまない。勿論聞いていたぞ!」
ムゥと頬を膨らますその姿すら愛らしいと感じていると、[#dn=1#]が徐ろに立ち上がった。
「あ、ちょっ、[#dn=1#]!」
「それじゃあ、太子様、また明日!楽しみにしていてくださいね」
パチンとウインクをして、[#dn=1#]は小走りで部屋を出て行った。
これから、父親の所に大急ぎで帰り準備をするのだ、と。
[#dn=1#]がいなくなった部屋は酷く静かに感じる。
少し前までは、何とも感じなかったのに。
太子は、静かになった部屋を見渡し
少し寂しさを感じながらも[#dn=1#]の事を思い出していた。
愛しい[#dn=1#]、私だけの大切な宝物。
「…そういえば、[#dn=1#]は何をするつもりなのか?」
結局、話を聞いていない太子であったが、
次の日「今日から太子様の元でお勉強をする…という名目でこちらに下宿することになりました」と
嬉しそうな顔で、太子に抱きつく[#dn=1#]であったが、
目論見とは裏腹に太子のサボり癖に拍車がかかったとか何とか。