遊戯王ゴーラッシュ!!の男主攻め
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もしも大切な人が自分の目前からいなくなったら、
貴方はいつまでその人を想って待つことが出来るか。
「私は、いつまでも待ちます。その人にも何か事情があったのかもしれないし」
最近、テレビでよく見掛けるようになった女性タレントが司会者から振られた質問に対して回答したことをきっかけに、スタジオ内の芸能人達が口々に自身の意見を話し始める。どうやら、待つ派と待たない派に別れたようでそれぞれの意見をぶつけ始める。その中で、最初に口火を切った女性タレントが再び口を開いた。
「離れてていても気持ちか通じ合っていれば、必ずまた会えるって信じたいです」
その回答を聞いた瞬間、俺は反射的にリモコンを手に取り電源を切り、俯いた。あまりにも夢見がちなその発言に俺の腹の虫がおさまらないからだ。じゃあ、お前はそらを体験したことがあるのかよ。くそ、最悪だ。漸く忘れ始めていたのに、嫌な事を思い出させやがって!俺はテレビの向こうのタレントに対して恨めしい視線を送った。届くわけなんてないと分かっているが、それでもこの想いを少しでも発散したい。何故なら、俺の脳内にある奴の顔が思い浮かんでしまったから。
「だぁあああ!!くそっ!!」
頭を掻きむしって、脳内からそいつの顔を消そうとする程逆にそいつと過ごした数ヶ月間の記憶が俺の脳内に流れてくる。2年前、ある日突然俺の目の前に現れて、衣食住の世話をしろと言ってきたかと思えば、俺の事が好きだと押し倒して童貞と恋心を奪った男…名はズウィージョウ・ズィル・ベルギャーと言い俺にとって初めての彼女だった。
「…はぁ、女々しいな俺」
あぁ、またこれだ。ズウィージョウの事を思い出すと今でも涙が出る。好きだった、いや違う今でも好きだ。涙が出るぐらいあいつのことが好きだ。
「さっさと忘れちまえばいいのにな」
2年経って、当時中学生だった俺も高校生になり身長が伸びて、今ではズウィージョウを僅かながら越すことができた。ラッシュデュエルも昔より強くなった。
あれだけ苦戦していたカレーパン作りだって今ではお手の物だ。全ては、ズウィージョウが帰ってきた時に、自信を持って出迎える為に。毎日毎日、明日こそ帰ってくるかもしれない。そんな不確かな物を心の支えにして生きてきたが、時が経つにつれてその支えが風化し始めてきている。
友達からも、いつもでも元カノを引きずってないで新しい恋を始めろと言われる。それに対して、適当に返していた時俺の事が好きだと言ってくれる女の子が現れた。小柄で色白で可愛い笑顔を浮かべる女の子だ。
この子と付き合えば、いずれはズウィージョウの事を忘れられるのかと一瞬考えたが、やっぱり、それはできなかった。好きでもないのに付き合うなんて女の子に失礼だし、何よりズウィージョウが帰ってきたら「ワレというものがありながら、貴様…良い心掛けだな」なんて言いながらあいつに半殺しにされかねないからな…。
「早く帰ってこいよ、ズウィージョウ」
高ぶった感情を冷ます為に、部屋の窓を開けて、夜空を見上げる。煌煌と輝く星を見て、この宇宙のどこかにズウィージョウがいる。そう思うと冷めるどころか余計に悲しくなってきた。知ってるんだ、あいつがどうしていなくなったのか。それは、故郷のベルギャー星団の戦いを終わらせる為。当然、俺も一緒に行くと言ったがそれは許されなかった。この夜空の向こうの宇宙で、今も戦っているのだろうか。会いたい。会ってお前を抱きしめたい。
「ん…?」
ズウィージョウの事を考えていた時、ふとある星が一際輝いて見えた。よく見ると、何か動いてる気がする。流れ星か?と思ったが、それにしてはおかしい。
だって流れ星って下に落ちていくものだろ?小さく見えていた流れ星が、少しずつ大きくなっているなんておかしい
「……って、こっちに近付いて来てる!?」
まさか、流れ星じゃなくて隕石かと思い慌てふためく俺を他所に近づいてくる隕石?が、俺が住む家の窓に近づいた所でピタリと動きを止めた。よく見ると、目の前のソレは隕石ではなく小さな宇宙船の様にも見える。そして、俺自身ソレに見覚えがあった間違いない、これはあいつのザイガ・ベルギャーだ。
「久しいな、ゆめお」
「ズウィージョウ…」
空気の抜ける音と共に、扉が開き男の癖に中から腰よりも長く、鮮やかな黄色と紫のグラデーションの髪の男が現れた。そいつは、昔と変わらず何を考えているか分からない表情で、俺を見下ろしたかと思えば、静かに宇宙船から俺の部屋に降り立った。少し部屋の中を見渡してから、俺の顔をじっと見てきた。
「なんだよ」
「ゆめお…暫く見ない内に戦士の顔つきとなったな」
「…そりゃあ、2年も経てば俺だって成長ぐらいする」
ズウィージョウの再会を喜ぶ言葉に対して、俺が少し皮肉を込めて返してやるとズウィージョウは俺の返事に対して表情を曇らせた。
「そうか、地球では2年も経っていたのか…」
一言、そう呟き俯いてしまった。それを見て、何故か俺が悪い事をしたような気持ちになり居心地悪く感じてしまい、咄嗟にズウィージョウを抱きしめた。
「んな顔するなよ…悪かった、意地悪い事言って」
「いや、謝るのはワレの方だ」
震える手で俺の背中に腕を回すズウィージョウ。なんだ、こいつも俺と同じ想いだったのか。
「ずっと待っていた、お前とこうしてまた会える日を」
「ゆめお…」
「…おかえり、ズウィージョウ」
俺達は、どちらからともなくキスをした。ふと、先程の女性タレントの言葉を思い出した。想いが通じ合っていればまた会える。あれは案外本当なのかもしれないな。