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まさか、自分の恋人の座をかけたデュエルが行われるなんて夢にも思わなかった。
夢主さんは、目の前で行われているデュエルをただ静かに見守っていた。
「フレイムウィングマンで、モンスターに攻撃!」
「うわぁあああ!!!!」
十代のフェイバリットモンスターであるフレイムウィングマンのモンスター効果により、
モンスターを破壊された上に、そのモンスターの攻撃力分のダメージを受けた男は、
十代とのデュエルに負けた。
デュエルの終了と共にソリッドビジョンが消え、十代は夢主さんの元に駆け寄る。
「夢主さん、大丈夫か!?」
「十代…うん、大丈夫」
「クソっ…遊城十代…っ!」
「約束通り、夢主さんは俺が貰うからな!」
十代は、夢主さんを抱きしめながら男に向かって高らかに宣言した。
唇を噛み締めて悔しそうな表情を浮かべる男を他所に
十代は、男に向けて勝ち誇った表情を浮かべている。
そんな2人の様子に、夢主さんは苦笑せざるを得ない。
そもそも、何故こんな事が起きたのか。
それは遡ること数時間前のことである。
**********************
桜舞う春の陽気の中、夢主さんは1人弁当を片手に
花見でもしながら昼食を食べようかと中庭に向かっていた。
その時、廊下で1人の生徒とぶつかってしまい、
夢主さんは見事に尻餅をつくことになった。
「すみません、大丈夫ですか?」
「あ、はい、すみません…」
顔を見上げると、同じオベリスクブルーの制服を着た男子生徒が立っていた。
柔和な笑顔を浮かべながら、こちらに手を差し伸べてくれるので、
男の好意に甘えて手を掴んだら、立ち上がる時の反動で男の胸元に向かって飛び込んでしまった。
「おっと、」
「あ、す、すみません!!」
「いいよ、気にしないで夢主さんさん」
「え…?ぁ、ちょ、…!」
夢主さんの身体に鳥肌が立った。
何故なら、男が夢主さんの身体に指を這わせてきているからだ。
驚いて男から離れようとする夢主さんだったが、
いつの間にか腰元に回された男の腕がそれを許さない。
夢主さんが、いくら腕で押し退けようとしてもビクリともしない
「な、なんですか!?」
「夢主さんさん、僕貴方に一目惚れしてしまいました。まさか、転入先にこんなに素敵な方がいるなんて…!」
「突然何を言うんですか!?離してください!」
「ツレナイね…そんな所も素敵だけど」
拒絶の言葉を意にも介さない男は、ゆっくりと夢主さんの頬に指を添えた。
ゆっくりと近付いてくる男の顔は、恍惚としたものである。
「い、いやぁ…!」
「おい、何してるんだよお前!」
唇が重なるまで後僅かとなった時、
遠くから馴染みのある声が聞こえた。
振り返ると、そこには友人兼片想い相手の
遊城十代がいた。
十代は、夢主さんの元へ駆け寄ってきた。
「十代!」
「誰だお前?」
「その手、離せよ。夢主さんが嫌がってるだろ」
十代と男は夢主さん越しに睨み合う。
いつも明るく元気な十代が、いつになく真剣な表情を浮かべながら、
自分を助けに来てくれた事が嬉しくてこの状況にも関わらず、夢主さんは内心浮かれていた。
男は、そんな夢主さんの表情を見て何かを察し、一瞬顔を歪ませる。
「…悪いけど、僕達は運命の恋人同士なんだ。
邪魔者はさっさとこの場から去れ」
男は、根も葉もないデタラメを口にした。
仮にも自分は、オベリスクブルーで相手はオシリスレッド。
少し強気な姿勢を見せれば、直ぐに引くだろうと考えたからだ。
だが、男の目論見はあっけなく潰えた。
「そんな訳ないだろ、夢主さんが好きなのは俺なんだからな!」
「「……へ?」」
十代から投下された爆弾発言により、
男と夢主さんは思わず呆気にとられた
何を言ってるんだこの男は、と信じられないといった表情で
十代と夢主さんを見比べる男に対して、
夢主さんは何故十代が知っているのかという
焦りと羞恥が入り混じった表情を浮かべている。
「俺も夢主さんの事が好きだ!だから、夢主さんを賭けて俺とデュエルしろ!」
「…え、えぇええ!?」
十代は、あっさりと夢主さんの事が好きだと告げると同時に
男に夢主さんを賭けたデュエルを申し込んだ。
まさかの両想いだったなんて、どうしよう嬉しすぎると喜ぶと同時に
いや、十代の場合友人としての好きの場合もある、と夢主さんが1人悶々としている中
男2人は最早夢主さんの事等お構いなしに話を進めていた。
「…いいだろう、ならばデュエルしてやる。ただし、負けた方は夢主さんさんに今後一切近付かない事が条件だ!」
「いいぜ、勝つのは俺だからな!」
「「デュエル!!」」
2人は、デュエルディスクを構え、高らかにデュエル開始を宣言した。
序盤こそ男側の優勢だったが、後半十代が逆転勝利を収めた。
そして、冒頭に至る。
***************
「なぁ、夢主さん」
「な、なに…?」
「なんで、こっち見ねえんだよ」
「そ、それは…えっと、」
十代と男のデュエルが終わった後、
夢主さんは何となくその場に留まっているのが
気まずく感じた為、1人寮に戻ろうとしたところ、
十代に寮の前まで送ると提案され、
渋々一緒に帰る事にしたが、先程の十代の発言が頭をよぎり、目を合わせられずにいた。
それを、十代本人により指摘されてしまい、
何て答えるべきか悩んでいると、十代に手を引かれた。
「さっきの話さ、あれ本当だから」
「……え、」
「俺は夢主さんの事が好きだ」
「うそ…」
「嘘な訳ないだろ」
いつになく真剣な十代の瞳が夢主さんを射抜く。十代の事を、デュエル大好きな純粋な少年に思っていたからこそ、
好意を抱いてもそれが叶うことはないと諦めていた。
だが、今回の出来事で十代も異性に想いを抱くのだと驚くと同時に、
その相手が自分である事が未だに信じられない。
「なぁ、夢主さんも俺の事好きだよな?」
十代は、夢主さんを自身の胸元に引き寄せ抱きしめた。
目の前の十代は、不安げに眉を下げながら夢主さんを見下ろす。
あぁ、これは現実なんだ。夢なんかじゃない、
夢主さんは感動で心が打ち震える。
「私も、十代の事が好き…!」
「本当か!?」
「うん!」
「ははっ、…よっしゃぁああ!!」
「十代、苦しいから、ちょっと離して!」
「離すわけないだろ!」
十代は、自身の喜びを表すかのように
力いっぱい夢主さんの身体を抱き締めた。
夢主さんは、苦しいから離すように伝えても離してくれない十代に対して、溜息を吐きつつも
その顔は満更でもないといったものであった。