遊戯王GXの置き場
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『万丈目サンダーの立ち入りを固く禁じる』
「何なんだ、これは」
万丈目は、とある理由でオベリスクブルーの寮の前にいた。
しかし、そこには自分の立ち入りを禁ずると書かれた貼り紙と
大勢のブルーの生徒が万丈目を睨みつけながら彼の行く手を塞ぐ。
「そこをどけ雑魚共」
「いいや、だめだ。俺達の天使からのお願いだからな」
「お前、よくもゆめちゃんを泣かせやがって!」
「そうだ、そうだ!俺達のゆめちゃんを泣かせるな!!」
「誰が、貴様らのだ!ゆめは、この俺万丈目サンダーの恋人だ!!」
「恋人のデュエルを応援しない奴が、よくそんな事言えるな」
「何様のつもりだよ」
「その上、負けた彼女を慰めないとか最低だわ」
「ぐっ…!」
生徒達から向けられる冷ややかな視線と言葉で、万丈目は
今日の授業の時の出来事を思い出し、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。
きっかけは、今日の授業での出来事だった。
・・・・・・・
今日は、月に一度実技試験に向けた模擬戦を行う日であった。
その対戦カードに、何とゆめと明日香が選ばれた。
座学も実技もトップレベルの明日香に対して、
座学はそこそこだが、実技は苦手なゆめという組み合わせだった。
それでも、ゆめは辞退したい思いを封印し、
デュエルに挑むことを決めた。
何故なら、自分のデュエルを友人達と、そして恋人である万丈目が
見てくれるからだ。普段の言動はあれでも、デュエルに関しては、
学園の五本指に入る強さを誇る万丈目の彼女として、情けないデュエルは出来ない。
それに、自分だってデュエリストの端くれなのだから、と。
しかし、震える身体で舞台に立ったゆめの耳に聞こえたのは
最悪の歓声だった。
「天上院くーん!!今日もなんて美しいんだー!!!」
「…え?」
ゆめの彼氏である万丈目はあろうことか、明日香を応援していた。
丁寧に明日香の名が入った法被を身に纏い、明日香の名前入りの横断幕まで出して。
いやいやいやいや、応援する相手間違えてないか?とゆめは混乱した。
もしかして、万丈目にとって彼女のデュエルなんて、
どうでもいいということ?とゆめは考え出してしまった。
何とか、デュエルに集中しようとしたが、
万丈目の言葉が何度も脳裏をよぎった事もあり、
結果は惨敗だった。負けて落ち込むゆめに、
十代達が励ましの言葉をかける中、万丈目は違った。
「おい、何ださっきのデュエルは。ブルーの生徒として、
気が緩んでいるんじゃないか?」
万丈目の言葉に、ゆめの中の何かがキレた。
静かに、万丈目に近づき、思い切り頬を平手打ちし、そしてこう言い放った。
「準君なんて、嫌い…大っっっ嫌い!!!そんなに、
明日香ちゃんの事が好きなら、別れてあげる!さようなら!!」
「…万丈目、流石に、あれはだめだと思うぜ…」
十代にすら呆れられた万丈目は、ただ茫然とその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
そして、その後何とか冷静さを取り戻した万丈目は、
ゆめを追いかけてブルー寮に来たのだ。
だが、そのブルー寮はゆめのファンクラブの会員達によって
固く閉ざされている。
万丈目は確実に追い詰められていた。
そう、例えるならばライフポイントが少ない中、
伏せカードも、モンスターカードもないそんな絶望的な状況と同じだ、と
・・・・・・・・・
「あれ、私いつの間に…」
ゆめが目を覚ますと、辺りは暗くなっていた。
どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
どれぐらい寝ていたのだろうか、と時計を見ると
時刻は午後9時を回っていた。
授業が終わってから、既に半日が経過していた。
「あ、雨…」
窓の外を見ると、雨が降っていた。
そういえば、授業が終わった後万丈目が寮の前に来ていた事を
思い出した。まぁ、こんな時間だからもうレッド寮に帰っただろう
そう思い、何気なく窓の外を見た時だった。
「え、嘘…!?」
ゆめは慌てて部屋を飛び出した。
何故なら、寮の前に万丈目らしき人物がいたからだ。
もし、あれが万丈目本人なら何時間も外で待っていたということだ
しかも、雨が降る中。放っておいたら風邪を引いてしまう、と
「準君!」
「ゆめ…来てくれたのか」
「何で、こんな…私、酷い事言ったのに」
「酷いのは俺の方だ、すまなかった」
ゆめは自分の耳を疑った。
何故なら、あの万丈目が。山よりも高いプライドを持ちつツンデレ万丈目が、素直に謝罪をしたから。
驚いて何て言葉をかければいいのかゆめが迷っていると、
万丈目はその場で膝をついた。
「頼む!もう一度、俺とやり直してくれ!俺の悪い所は直す。
もう、天上院君のことは口にしない!お前が負けた時は、慰めの言葉をかける!」
「準君…ううん、もう、いいよ」
ゆめの言葉を、悪いものと捉えた万丈目が絶望の表情を浮かべた。ゆめは、ここまで必死になる万丈目の姿を見て、
最初からしなければいいのに、と思うと同時に可笑しくて思わず
笑みを零してしまった。
「いいよ、許してあげる。だけど、次からはしないでよね」
「ゆめ…、あぁ、分かった。約束する」
こうして、二人は無事に仲直りした。
次の日から、やたらゆめの事を褒め倒し、
いつになく甘やかす万丈目の姿が見られたとか。