遊戯王GXの置き場
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オシリスレッド寮の食堂にて、
一人の少年が、非常に苛立っていた。
黒の制服を身に纏った黒髪の少年の名は、万丈目準。
彼は、普段から騒々しい部類に入る人間ではあるが、
怒りという感情はあまり表に出さない。
だが、そんな彼でも激しく怒りを抱く場面はある。
何が、彼をここまで苛立たせているか。
それは、目の前の男女二人組が原因であった。
「ゆめのエビフライ、も~らい!」
「あっー!だめ、返して!」
目の前の赤い制服を着た少年こと遊城十代と
青の制服を着た少女ことゆめ。
この二人が、最早恒例になりつつある
朝食のおかずの奪い合いをしているのだが、
これが何とも楽しそうに行っているのだ。
二人は、万丈目にとっての共通の知り合いである事が
きっかけで仲良くなったのだが、
二人の仲良しさは、時折、目に余る事がある。
寮や教室での雑談やデュエルの対戦であれば、まだいい。
学生であれば、それぐらいあって普通だ。
だが、今日のようなおかずの奪い合いはどうなのだろうか。
彼氏である自分の目の前で、他の男とじゃれあうなんて、
ダメに決まっているだろう、と。
極めつけは、これだ。
少し前、光の結社に洗脳された状態の万丈目と十代が
デュエルをした時、あろうことか、
ゆめは自分ではなく十代を応援していた。
その後、無事に洗脳は解けたのでゆめを呼び寄せたが、
その時の形容しがたい感情は、
今も尚万丈目の心の中に残っている。
ゆめは、万丈目が崇拝する明日香と
比べれば精神性が子供である為、
最初は気にしないようにしていたが、
万丈目の堪忍袋は、もう限界寸前であった。
「もういいもん!十代の卵焼き食べちゃうから!」
「あ、バカ!それ俺が口付けたやつだぞ!」
この時、万丈目の中で何かが切れる音が聞こえた。
「貴様ら、いいかげんにしろぉおお!!!!!
十代、お前はそんなに食いたければ、他のやつらから奪え!
ゆめ、お前はもう少しこの俺の女であるという自覚を持て!!!}
肩で息を整える万丈目と、万丈目が本気で怒る姿を見て
二人を含めた周囲の人間達は、固まった。
万丈目は、未だ怒りが収まらないのか
朝食をかきこんだかと思えば、足早にその場を後にしてしまった。
あの後、万丈目は自室のベッドの上に寝転がり、
ひたすら先程の光景を反芻していた。
なんで、あいつは俺の目の前で他の男に構うんだ。
まさか、この俺に愛想を尽かしたとでも言うのか?
バカな、そんな訳がない。
そんなハズでは…
それまで、無意識に避けていた考えに到達してしまった万丈目。
一度、考えてしまうと脳裏には
次々と考えたくもない光景が浮かび上がってくる。
「準君、ごめんね。私、十代とお付き合いするんだ」
嬉しそうに十代の腕に絡みつき、手を振るゆめ
二人は、万丈目に背を向け遠く離れた場所へどんどん歩んでいく。
必死に追いかけようとも、その距離が縮まることはない。
万丈目は、ゆめの名前を叫びながら、
必死に暗闇の方へ手を伸ばした。
「ゆめ、行くな!頼むから、行かないでくれ!」
・・・・・・
「準君?」
誰かに名前を呼ばれたことで、
闇に落ちかけていた意識が呼び戻された。
目を覚ますと、そこにはこちらを
心配そうに見つめるゆめの姿があった。
「ゆめ!」
「く、苦しいよ準君…!」
万丈目は、目の前の存在を確かめるように
ゆめの身体を力いっぱい抱きしめた。
この温度感、女子らしい柔らかさ、そして仄かに香る甘い匂い。
間違いない、これは現実だ。と安堵した。
「何が現実なの?」
「こっちの話だ。それより、だ。何しに来たんだ?」
「あ、うん。さっきの事謝ろうと思って!十代とばかり仲良くしてごめんね、準君」
「ふん、当たり前だ。何故あんな馬鹿となれ合うんだか」
「…もしかして、準君焼きもち妬いちゃった?」
「うるさい!」
正直に言えば、図星だった。
ゆめは、万丈目に対しては「皆の前では恥ずかしいから」
と言い、人目がある場では、カップルらしい振る舞いをしたがらない。
部屋も、オシリスレッドに転がり込んだ万丈目と違って
ゆめはオベリスクブルーの生徒であるので、
当然別々に過ごしている。
故に、恋人としての時間が少ない事に万丈目は不満を抱いていた。
だが、それを本人に言えば、小さな男に見られることを恐れ、
敢えて口にはしなかった。
「準君って、あまり焼きもち妬かないから、私だけが好きなのかと思ってた」
ゆめは小さく、自身の胸中を明かした。
万丈目から告白をされたのがきっかけで付き合い始めたが、
手を繋ぐぐらいで、キスもその先も何もない。
その上、自分が他の仲間と話したりしても何も言わないから、
気を引きたくてわざとやった部分もあるのだ、と。
「馬鹿か、お前は。どうでもいい女に告白なんてするか」
「いいか?これからは、お、俺だけを見ていろ!わかったな!」
そして、万丈目はやや身体を震わせながら
ゆめの唇に触れるだけのキスをした。
言葉とは裏腹の、精一杯の可愛い行動にゆめは満面の笑みを浮かべた。
次の日から、顔を真っ赤にしながらもクールに構える万丈目と
彼の隣に寄り添うゆめの姿が見えるようになったとか。