アネモネ
夢小説
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何も聞いていなかった。
あの人は何も言わずに姿を消した。
姿を消したことすら知らずにいた。
鶴見中尉がうちへ来た時、始めは食事に来てくれたのだと思い嬉しかった。
鶴見中尉が嬉しそうにしている私を見ると驚いたような表情をして、
「何も聞かされていないのかい?」
と尋ねた。
その言葉に不安を憶えたが何も知らない。
ただ、あの人の後ろ姿が脳裏に浮かんだ。
「尾形上等兵に何かあったのですか、、?」
沈黙の後、恐る恐る尋ねると、
「尾形上等兵が姿を消した」
という事実を知らされた。
その事実は自分でも思ってた以上の衝撃だった。
あの人が消えた?
私に何も言わず?
確かに私達は友達でなければましてや恋仲ではない。
ただの料理屋と客の関係だ。
そんなことを知らせる義理はないといったところだろう。
ただ、その時には何となく連れて行ってもらえるのだと思っていた。
例え、連れて行ってもらえなかったとしても別れの一言くらいはくれるものだと思っていた。
名前も分からない感情に頭を殴られたような感じがする。
頭がぐわんぐわんと揺れる。
涙はまだ出ない。
「尾形上等兵は君には心を開いているように見えていたのでね。様子を見に来たんだよ。まさか全く話を知らなかったとは」
頭を横に振りながら鶴見中尉が私に言う。
続けて、
「そうか。君は置いてかれてしまったのだね。」
置いてかれた。
その一言が鉛のように私の中に沈んでいく。
そうか。
私は置いていかれたのだ、あの人に。
なんで?
なんで私に何も言わなかったの?
なんで?
なんで私を連れて行ってくれなかったの?
悲しみにも似た感情が段々と憎しみにも似た感情へと変化するのが自分でも分かった。
どうしようもない感情に戸惑っていると、
「君を置いていった尾形上等兵に一言文句を言ってやりたいだろう」
鶴見中尉が耳元で囁いた。
あの人は何も言わずに姿を消した。
姿を消したことすら知らずにいた。
鶴見中尉がうちへ来た時、始めは食事に来てくれたのだと思い嬉しかった。
鶴見中尉が嬉しそうにしている私を見ると驚いたような表情をして、
「何も聞かされていないのかい?」
と尋ねた。
その言葉に不安を憶えたが何も知らない。
ただ、あの人の後ろ姿が脳裏に浮かんだ。
「尾形上等兵に何かあったのですか、、?」
沈黙の後、恐る恐る尋ねると、
「尾形上等兵が姿を消した」
という事実を知らされた。
その事実は自分でも思ってた以上の衝撃だった。
あの人が消えた?
私に何も言わず?
確かに私達は友達でなければましてや恋仲ではない。
ただの料理屋と客の関係だ。
そんなことを知らせる義理はないといったところだろう。
ただ、その時には何となく連れて行ってもらえるのだと思っていた。
例え、連れて行ってもらえなかったとしても別れの一言くらいはくれるものだと思っていた。
名前も分からない感情に頭を殴られたような感じがする。
頭がぐわんぐわんと揺れる。
涙はまだ出ない。
「尾形上等兵は君には心を開いているように見えていたのでね。様子を見に来たんだよ。まさか全く話を知らなかったとは」
頭を横に振りながら鶴見中尉が私に言う。
続けて、
「そうか。君は置いてかれてしまったのだね。」
置いてかれた。
その一言が鉛のように私の中に沈んでいく。
そうか。
私は置いていかれたのだ、あの人に。
なんで?
なんで私に何も言わなかったの?
なんで?
なんで私を連れて行ってくれなかったの?
悲しみにも似た感情が段々と憎しみにも似た感情へと変化するのが自分でも分かった。
どうしようもない感情に戸惑っていると、
「君を置いていった尾形上等兵に一言文句を言ってやりたいだろう」
鶴見中尉が耳元で囁いた。
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