歪形の一家
(“アナ”の異変に気づいたのはつい先ほど。二階へ行く途中、廊下で壁にかかった鏡の前を通ったとき。鏡を一瞥すると、手元のテディベアに“いつもあるはずのもの”がなくなっていた。それは、赤いリボン。アナの象徴ともいえる大切なものが頭から姿を消していることに内心驚き、すぐにリビングへ戻って探し始めた。まずは朝食を摂ったテーブルの上、見つからなければ椅子を動かし下を見て、ないと分かればキッチンの周りをウロウロし、兄の誰かが間違って捨てたかもしれないと思ってゴミ箱の蓋を開けて中を覗く。空っぽだった。期待はずれの結果に少しづつ焦りが募りながらアナに目を落とし「だいじょうぶ。……おねえちゃんが必ず見つけてあげるからね」モヘアの頭を優しく撫でて気丈に振る舞い。その後もカーペットを捲る、ソファーの隙間に身を屈める、窓辺に立つ、カーテンの裏、カーテンを揺する__思いつく限りのことをしてみたが、リボンは出てこなかった。一体どこへいってしまったのだろう、このまま見つからなかったらどうしよう。不安が、アナを抱く腕にぎゅっと力が込もることで滲み。望みは薄いが、ほかのところを探そうと決め、リビングを出ようとし。その間、自然と俯いた顔や歩くたびに軋む床板がさらにどんよりとした空気を増し加えて)
6/6ページ