脅威の侵略者編
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吹雪くんが自分を試合に出してくれ、と瞳子監督に申し出た。たしかに今のまま
では勝てないし、体力を温存していた吹雪くんが出てくれるのは助かるけど・・・。
円堂くんと向き合った吹雪くんはいつもより引き締まった表情をしている。まぁ、
本人から申し出たなら大丈夫、なのかな。
試合が再開する。”ジェネシス”のシュートレンジでボールが飛び交うがその間を
縫って豪炎寺くんが『ファイアトルネード』を打った。このタイミングでの『ファ
イアトルネード』はたしかに不意をつくことはできるけどゴールマウスまでの距離
が遠いとその分シュートの威力も落ちてしまう。そのボールを繋ぐべく吹雪くんが
シュートコースに並走していた。
吹雪「俺は、完璧になる!・・・吹き荒れろ、『エターナルブリザード』」
せっかくのシュートチェインも”ジェネシス”のネロの『プロキオンネット』によ
り止められる。シュートが止められたため”ジェネシス”ボールになる。ネロは先ほ
どのシュートが気になったのかボールと手を何度も見ていた。なかなかボールを蹴
り出さないので、スティールを狙って近づくと、ハッとしたようにネロは意識を試
合に戻して、ボールをヒロトくんに渡した。ボールの動きと連動して選手もそれに
続く。吹雪くんは先ほどシュートを狙ったばかりだというのにもうDFに参加し
『アイスグランド』を繰り出していた。
・・・前に見たときよりも『エターナルブリザード』の威力が落ちている。それに、
またアツヤくんの人格出てたよね・・・。試合に貢献しようとフィールドを駆ける吹
雪くんは、焦燥と心の葛藤のせいか見ていて痛々しい。本人の意志で”ジェネシス”
や自分の課題と戦ってはいるが、そうカンタンには解決するものではない。
吹雪くんは、自分だけが雪崩事故から生還したことの負い目から、自分が生き
ることに対し誰かに許可を求めている節があった。それまでは何とかなっていた心
のバランスも、長年住んでいた北海道を離れたことや共に過ごす仲間が変わったこ
と、いわば非日常に投げ出されたことで決壊してしまった。
雷門は豪炎寺くんが戻ってくるまで圧倒的パワーをもつFWが欠けていた。その
ときはまだみんな吹雪くんの事情を知らなかったとはいえ吹雪くんのシュートを頼
りにしているところが多々あった。でも、吹雪くんの使うシュート技はアツヤくん
のもので。周りから求められる声に、吹雪くんは、吹雪士郎としての存在意義を見
失ってしまった。どんな吹雪くんでも、私たちの大切な吹雪くんだよ。だけど、み
んなの心の声は吹雪くんには届かない。
吹雪「あの日僕は誓った。アツヤと一緒に強くなろうって。完璧になろうって。で
も、僕だけじゃ完璧にはなれないよ・・・。」
塔子ちゃん、綱海くん、木暮くんが試合に入ってからの土壇場で新技『パーフェ
クト・タワー』を完成させる。そして、うまく連携して”ジェネシス”からボール
も奪った。有人くんは即座にフィールドを見渡して、人の密集していないところに
いた吹雪くんにパスをだした。しかし、吹雪くんは反応に遅れそのまま、ボールは
サイドラインを超えてしまった。”ジェネシス”ボールから再開のはずなのに逆サイ
ドにいる豪炎寺くんがわざわざボールを取りに行ったことを疑問に思っていると、
視界に矢が横切ったかのように、サッカーボールが空気を切り裂いていった。そし
て、豪炎寺くんが蹴り上げたボールはまっすぐに吹雪くんへ・・・。って豪炎寺くん?!
けっこうな威力ですけど!!吹雪くん大丈夫かな。
吹雪「豪炎寺くん・・・?」
豪炎寺「本気のプレイで失敗するならいい。だが、やる気のないプレイだけは絶対
許さない。お前には聞こえないのか、あの声が。」
吹雪「声・・・?」
吹雪「・・・聞こえる。ボールからみんなの声が。これは、みんなの思いが込められ
たボール・・・。みんなの・・・。みんな・・・チームのみんな。今まで僕はみんな
の声を聞いていた?仲間の声に応えられていた?みんなはずっと手を差し伸
べてくれていたのに。他人の声を気にするくせに、ちゃんとみんなの声を聞
けてなかったのは僕の方だった。みんな、こんなにも優しい声で僕のことを
呼んでくれていたんだね。・・・やっとわかったよ、父さん。完璧になるって
いうのは僕がアツヤになることじゃない。仲間と一緒に戦うこと、
仲間と一つになることなんだ!」
???「そうだ。アニキはもう、一人じゃない!」
湊川「今の声・・・吹雪くん?だけど・・・ちょっと違うような?」
鬼道「アンリ!受け取れっ!」
湊川「はいっ!!?」
鬼道「ぼうっとするな!みんなでつないだこのボール、ゴール下まで何としても持
っていくぞ!」
吹雪「アンリちゃん、こっちだ!」
湊川「吹雪くん・・・!おかえり!!」
吹雪「うん、ただいま。」
ウルビダ「今までと動きが違う・・・?!」
吹雪くんの名前を呼ぶと、吹雪くんは静かに微笑んだ。その微笑みはいつものふ
わふわとしたかわいいものではなく、何かを慈しむような、ちょっと大人っぽいも
ので少し驚いた。男子3日会わざればって言うけど、さっきまでと別人では?私ぼ
うっとしてる間に3日くらい寝てた?トンチンカンなことを考えている間に吹雪く
んはゴール前にたどり着き、気合いの雄叫びをあげる。
吹雪「これがっ!完璧になることの答えだ!!・・・『ウルフレジェンド』!!」
新必殺技が炸裂し、電光掲示板に1-1と表示される。みんなはやっととれた1点
を喜ぶため、吹雪くんが復活したことを喜ぶために、集合した。
円堂「吹雪!もう、大丈夫なんだな。」
吹雪「うん・・・。みんなのおかげだ。みんなが諦めずに僕にボールを繋いでくれた
から、僕にはみんなの声が聞こえたんだ。」
立向居「俺も負けてられません!次こそ止めてみせます!」
綱海「そのいきだぜ、立向居!なぁに、俺たちも身体張って守るからよ、大船に乗
ったつもりで納得するまで挑戦してみろ!な!」
塔子「あぁ!!アタシだって、まだまだ進化するんだから!」
吹雪くんの1点のおかげでみんなそれぞれ必殺技を進化させることに前のめりに
なった。試合再開のホイッスルがなる前、吹雪くんはフィールドラインの外に置い
たままになっていたマフラーを拾い上げて軽く汚れを払った。そして、丁寧にマフ
ラーを畳んでベンチに置いた。
吹雪「今までありがとう。これからもよろしくね、僕の味方。」