脅威の侵略者編
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エイリア学園の秘密を探るため、富士山麓にある「星の使徒研究所」という場所
に来た。ここに来れば全て分かる、慣れた操作で暗証番号付きの扉を突破していく
瞳子監督に続いて私たち雷門一行は研究所の中に足を踏み入れた。最終決戦、きっと
多くの敵が待ち構えている、気を引き締めるためにほっぺを叩いたにも関わらず、中
に入ると警備ロボットが出てきたくらいで、想像よりあっけないかんじでエイリア皇
帝陛下の前に案内された。和風の庭園にししおどしの音が木霊する。お茶を飲んで
る、この穏やかそうな人が黒幕?とも思ったが先ほど明かされた”ハイソルジャー
計画”は間違いなくこの人の口から発せられた恐ろしいものだった。
星二郎「先ほどのプロモーションはいかがでしたか。」
瞳子「お父さんは間違っています。今すぐ計画をやめてください!」
星二郎「フッ・・・。どうやら分かっていないみたいですね。お前たちも私の計画の中に
組み込まれていることを。」
瞳子「・・・どういう意味ですか?」
星二郎「エイリア学園との戦いの中で鍛え上げられたお前たちが、”ザ・ジェネシス”
にとっていずれ最高の対戦相手になると思ったからですよ。瞳子、お前は期
待通りの仕事をしてくれました。礼を言いますよ。」
瞳子「私のしてきたことは、エイリア学園のためだったというの・・・?」
星二郎「さぁ、試合の準備をしなさい。”ジェネシス”が待っていますよ。」
そういって、吉良星二郎は姿を消した。瞳子監督の手は固く結ばれ心なしか震え
ているように見える。お父様の過ちを止めるために立ち向かっていたはずなのに、
それが手のひらの上、何なら、お父様の計画の手助けになり得ると知らされたのだ
からムリはない。監督だって人間だ、迷いや苦悩を抱えないわけがない。・・・今まで
何人もの選手が雷門キャラバンを降りていった。その間もずっと瞳子監督は強くあり
続けた。雷門のフットボールフロンティア時の監督だった響木さんや他の強豪校の監
督を複数見てきたけれど瞳子監督は一番私たちに年齢が近い。もしかしたら、私たち
が不安にならないように気丈に振る舞ってくれているときもあったのかな。
瞳子「・・・・・・私は、今日まで父の計画を阻止するために戦ってきた。
・・・でも、あなたたちを利用することになってしまったのかもしれない。
私には、監督の資格は・・・。」
円堂「監督は俺たちの監督だ!監督は俺たちが強くなるための作戦を考えてくれた。
次に繋がる負け方があることを教えてくれた!俺たちの挑戦を見守ってくれ
た!」
湊川「瞳子監督は試合中の指示だけじゃない。普段の生活でも私たちのことを考え
て言葉をかけてくれた。ご飯のこと、行動を起こして終わりでなくきちんと
反省を行なうこと、すぐに答えを求めるのではなく自分自身で考えること。
瞳子監督は自分のために行動して雷門のみんなを利用したって言うけれど、
ちゃんと私たち一人ひとりのことも見てくれてる、だから私も瞳子監督のこ
とを信頼できる、って思う。瞳子監督が戦うなら私も力になりたい、そう思
う。もう、監督のこと大好きになっちゃったから。」
瞳子「湊川さん・・・。」
一ノ瀬「最初は馴染めなかったけど、今なら分かる。監督は俺たちのこと思ってく
れてたんだって。」
塔子「アタシたちは監督に鍛えてもらったんだ。」
立向居「そうです。エイリア学園のためじゃない、俺たち自身のために。」
円堂「監督、俺たちには瞳子監督が必要なんです!最後まで一緒に戦ってください!」
瞳子「みんな・・・」
富士山麓に来る前は瞳子監督のことが信用できないという人もいてどうなること
かと思ったけれど、長い間ともに旅をして、一緒に笑い合ってきたんだ、そりゃ、
瞳子監督も大切な仲間のひとりだよね。サッカーはチームスポーツだ。仲間がいな
きゃできない、みんな違って、それぞれに良いところがあって。多くの個性がぶつ
かってチームの色ができあがっていく。長い長いゴールまでの旅路、もしも暗闇
で迷って立ち止まってしまっても、仲間が手を差し伸べてくれる、仲間のおかげで
一番星を見失わずにすむ、瞳子監督の率いるチームはきっとそんなチームだ。
みんなの説得を聞いた瞳子監督は元気を取り戻したようで、深呼吸をするといつ
ものかっこいい監督の雰囲気になった。「何度でも父さんを説得する。そのために
力を貸してほしい。」と再度みんなにお願いをした。
しかし、お父様説得の最大の難関は”ジェネシス”と戦わなければならないことだ
った。前に福岡で戦ったときは一方的な戦いになってしまったけれど・・・。みんなの
顔を確認すると全員が勝つことを信じて疑わない、キリリとした表情を浮かべてい
る。・・・なんか瞳子監督みたい。私も目の前の試合に集中してがんばらないと。大
きく息を吸い、身体の中に新鮮な酸素をいれる。・・・公式戦じゃないから定刻は知
らされてないけど、試合って何時からなんだろう?
選手控え室でスターティングメンバーの確認など簡単なミーティングを行ない、
案内されたサッカースタジアムに出ると”ジェネシス”の面々が並んで待ち構えてい
た。ずっと待っててくれた感じですか・・・?練習とかしててくれていいんだよ・・・と
思ったけれど、「ハイソルジャー計画」で強化しているなら練習はいらないのかも?
グラン「とうとう来たね。雷門イレブン。」
円堂「あぁ、お前たちを倒すためにな。」
グラン「俺はこの戦いで”ジェネシス”が最強の戦士であることを証明してみせる。」
円堂「最強だけを求めたサッカーが、楽しいのか?」
グラン「っ!・・・それが、お父様の望みなんだ。」
円堂「お父様?」
グラン「俺はお父様のために最強になる。・・・お父様の描く理想に忠実じゃなくちゃ
いけないんだ」
円堂「誰のためとか関係ない、ヒロト、お前自身はどうなんだ?」
グラン「俺は・・・・・・。円堂くん、お互いの信じるもののために全力で戦おう。」
試合は”ジェネシス”の攻撃から開始された。開始後、ボールはアークからウルビ
ダ、ウルビダからウィーズへと渡る。彼らの連携は実にスムーズで安定しており、
もはやパスの掛け声もない。あっという間に立向居くんの守る雷門ゴール前にスポ
ットが絞られた。が、リベロの円堂くんが新技『メガトンヘッド』を披露し、有人
君へパス。そしてハーフラインを越えて雷門のオフェンスへと切り替わった。さす
がにすぐに得点とまではいかなかったが、前に戦った時よりも確実に私たちが成長
していることは実感できた。…やっぱり豪炎寺くんは要マークされてるよね。先ほ
どもシュートを打つには打ったが、ボールを運ぶまでのマークが厳しくシュートコ
ースが限られてしまい、そのおかげでいとも容易く止められてしまった。豪炎寺く
んだけに頼るんじゃなくて、可能であれば積極的にゴールを狙え。
湊川「『ドラジェットシュート!!』」
パステルカラーの卵型ロケットが宙を舞う、通常であればロケットがデコイのよ
うに陽動の役割を担うはずだったが不発に終わった。私の大好きなシュート技。”ジ
ェネシス”戦で使うのは初めてだったはずだけど、それを打破したのは”ジェネシス”
のキャプテンだった。
湊川「ヒロトくん…。」
グラン「…君らしい技だね。でも、タネが分かれば簡単だ。」
円堂くんがいくら『ヒロト』と呼びかけても頑なに否定し、『グラン』を強調して
いたのに、『ドラジェットシュート』を「私らしい」と言ったのはヒロトくんだっ
た。さっきエイリア学園の生徒も人間だって言ってたし、素はやっぱりヒロトくん
なんだよね。まぁすぐ_仕事できそうなグランモードに戻っちゃったけど。今のヒ
ロトくんは楽しむためにサッカーをやるんじゃなくて、ハイソルジャー計画をお披
露目するための手段としてサッカーをプレイしている。グランを演じるのも、サッ
カーをするのも苦しそう。瞳子監督の願いももちろんだけれど、私も、”ジェネシス”
の子たちのためにこの試合、絶対勝たないと。
ボールが自陣敵陣と何度も往復する。雷門のボール支配率が勝っているが、必殺技
の使用回数と破られた数も多いため、こちらが優勢とは言いづらい状況だ。そして、
ヒロトくんが『流星ブレード』を決め、エイリア学園が本格的に試合をリードし始
めた。必殺技は進化し続ける、立向居くんの『ムゲンザハンド』も”ダイヤモンド
ダスト”との戦いの後相当練習して当初よりも強力な技になっているはずだ。にも
関わらず雷門が先制点をとられた。
一ノ瀬「なんてやつらだ。本当に俺たちと同じ人間なのか?」
立向居「技が破られた・・・?パワーアップしているはずなのに。」
壁山「あんなやつらに勝てるワケないッス・・・」
木暮「パワーが違いすぎる・・・」
瞳子「顔を上げなさい!今日までの特訓を思い出して。あなたたちは強くなってい
る。諦めず、立ち止まらず、一歩一歩積み重ねてきてここまできた。自分を信
じなさい。そうすればあなたたちは勝てる。私は・・・私も、あなたたちを信じ
ているわ!」
土門「そうだ・・・はじめはジェミニストームにも全然敵わなかった・・・。」
一ノ瀬「でも今は最高ランクの”ジェネシス”と戦うまでになった・・・。俺たちは
強くなっているんだ!」
瞳子監督が声をかけたことで後ろ向きだったメンバーが活気づく。走っても走っ
ても、技術やセンスが上手な”ジェネシス”に本当に勝てるのかってみんな心のどこ
かで不安が大きくなっていたのかもしれない。しかも、今回は絶対に勝たなきゃい
けない、次のない試合。プレッシャーも大きかったに違いない。でも、瞳子監督が、
みんなの成長を一番近くで見守ってくれていた監督が大丈夫って言ってるんだ。心の
中にあった焦燥が消えて視界がクリアになる。瞳子監督が私たちを信じてくれるな
ら、私たちもそれに応えないとだよね。
・・・そういえば、瞳子監督がもともと「星の使徒研究所」側にいたってことはエ
イリア学園の子たちとも知り合いなんだよね?聞いた話だとヒロトくんが瞳子監督
のことを「姉さん」って呼んでたみたいだし。度々、学生の本分は勉強だといって
みんなの学習の様子を見ていた瞳子監督のことを思い出す。温かい目をしていたの
も、教えるのが上手だったのも、今までの瞳子監督の生活があってこそだったんだ。
家族が心配だよね、家族を助けたいよね。私も家族のように過ごしてきたみんなが
困っていたら真っ先に助けに行きたいって、力になりたいって思う。大好きな人
たちには笑っていてほしい。
湊川「さっきも円堂くんが言ってたじゃん。『次につながる負け方を瞳子監督に教
えてもらった』って。1回1回のプレイの度に考えよう。試合の中で強くなれ
ばいいんだよ!」
鬼道「あぁ、アンリの言うとおりだ。お互いに声をかけあって改善できるとこ
ろはすぐに修正していこう。」
壁山「そんな頭と身体を同時に動かすなんて器用なこと、俺にできるッスかねぇ?」
湊川「できるよ!壁山くん、この前の特訓もがんばってたじゃん!足もすごく速く
なってた!」
壁山「そうッスか・・・?なら、俺、やるッス!」
木暮「でも相手が強すぎる・・・。」
湊川「木暮くん、サッカーは好き?」
木暮「え?・・・う、うん。」
湊川「だったら、だいじょーぶ!!」
木暮「・・・分かったよ、やるよ!やればいいんだろ!」
秋「湊川さん・・・?」
春奈「大丈夫かな、木暮くん・・・。」
夏未「大丈夫よ。言うでしょ『好きこそものの上手なれ』とか『下手の横好き』と
か・・・。『好き』にはそれだけ人を夢中にさせるパワーがある。もっと上手
になりたい。もっと身近に感じたい。それだけ熱を注いだものだもの、ます
ます好きになってのめり込むのは当然よね。サッカーが好きである限り、彼
らには無限の伸びしろがある。アンリが言いたいのはそういうことよ。」
瞳子「えぇ。あとは全力でサッカーを楽しんでくれれば、それでいい。サッカーが好
きという純粋な思いはプレイを通してあの子たちにも届くと思うから。」
ただ単にシュートを打つだけじゃダメだ。相手はエイリア学園最後の最強チーム。
簡単に勝てる相手とは思っていない。出し惜しみなんていらない。フェイントも、
必殺技も、シュートチェインも、自分にできることをひねり出せ。相手のクセも技
術も目で見えるもの、感じるものはすべて自分の糧に変えて。私、もっと頑張るよ。
だから、試合終了のホイッスルがなったら「かっこよかった」って笑いながら髪を
撫でてほしい、そっと。