脅威の侵略者編
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ガゼルという少年が帰った後、円堂くんが豪炎寺くんに「おかえり」と声を
かけた。豪炎寺くんを中心に輪ができて、それぞれが声をかけてにぎやかな状
態になる。豪炎寺くんがチームを抜け、雷門町さえも離れて沖縄にいた流れを
聞くと、妹の夕香ちゃんが人質に取られて自由に動くことができなかった、と
いうのが原因らしい。晴れて夕香ちゃんの安全が確保された今、豪炎寺くんが
チームに復帰することになった。
そして次の日、豪炎寺くんの加わった練習が始まった。雷門中にとっては馴
染みのある豪炎寺くんでも、今のイナズマキャラバンには多くの新規メンバー
がいる。もともとエースストライカーとして有名選手だった豪炎寺くんへの接
し方に戸惑っている人も多いみたいだ。
土門「豪炎寺!パス!!」
綱海「何だよ、俺とやるときもそれくらい楽しそうな顔しろよな!!」
立向居「アレが雷門のエースストライカー、豪炎寺修也さん・・・!」
リカ「Goえんじだか、ようちえんじだか知らんけど、エースストライカーは
うちやで?」
湊川「リカ姉さん・・・!強気でかっこいい女だ・・・!」
リカ「せやろ?アンタはよう分かってんなァ♡今に見とき!」
ウチやったんで、と息を巻いてグラウンドの中央へ向かったリカ姉さんが豪
炎寺くんへのパスを先読みし、ボールカットする。お、いいぞリカ姉さん!!
頑張れ~!
しかし、しばらくの攻防の結果、ボールは豪炎寺くんの足下に収まっていた。
リカ「アンタ・・・すごいな。」
リカ姉さんを含め、ボールを通じて豪炎寺くんと向き合ったみんなは、豪炎
寺くんのことを認め、すぐに受け入れていた。その様子を見て、すっかりみん
なの主役だね~、なんて吹雪くんと見学していたら、誰かがトラップミスした
のかボールがグランドの角にいる私たちのところにまで転がってきた。
豪炎寺「話しているところすまない。・・・吹雪は昨日話したが湊川は2日ぶり
か?昨日のうちに声をかけようと思っていたんだが、なんだかんだ話
せずじまいだったな。昨日の試合でケガでもしたのか?今日はまだ練
習に加わっているところを見ていない。」
一ノ瀬「豪炎寺、アンリのこと知ってるの?」
豪炎寺「俺はチームを離脱していたが、いつだって心はみんなと一緒にあった。
俺の居ない間に入った吹雪やほかのみんなも大事な雷門の仲間に変わり
ない。画面越しにだがずっと見守っていたさ。それに湊川とは2日前に
会話している。」
湊川「???」
吹雪「アンリちゃん、そんなに首を曲げたら痛めちゃうよ・・・。」
豪炎寺「あのときはまだ身を隠すためにフードを被っていたからか?・・・森の
中で一度会っているんだが。」
湊川「?・・・あ!フードの人!!!」
そういえばあのオレンジカラーベースの服は豪炎寺くんが昨日の試合前に着
ていた服と同じかもしれない。次の日が大海原中と試合したり、”イプシロン改”
や”ダイヤモンドダスト”が来たり、豪炎寺くんが帰って来たりと怒濤の忙しさ
だったからすっかり忘れていた。うん、仕方ないよね。
一ノ瀬「森の中・・・。あぁ、あの時か!もしかして森の中で案内してくれた人
って豪炎寺だったの?」
豪炎寺「あぁ。その時に湊川とは少し話した。そういえばあんな森のなかで一
人、何をしていたんだ?無心に木苺を集めていたが。」
湊川「木苺集めてた。」
豪炎寺「・・・?何故?」
湊川「甘いものあるところに湊川ありなので。」
一ノ瀬「ワオ。coolな豪炎寺がこんな不可解な顔してるの初めて見た。」
吹雪「あはは・・・。うーん・・・大体いつもこんな感じ。」
豪炎寺「・・・そうか。」
一ノ瀬「まぁ、すぐに慣れるよ。アンリは分かりやすいから。あと、屋外の練習
は誘わないとすぐ休むのはいつものことだから、ケガもしてないと思
うよ。ってことで練習のときは無理矢理にでも引きずって来てかまわ
ないよ。」
豪炎寺「分かった。」
湊川「大阪以降はちゃんと練習参加してるじゃん!!」
私の抗議の声も虚しく、話が一段落ついたと解釈した豪炎寺くんは吹雪くん
の方に向き直った。豪炎寺くんは、自分の抜けた後に雷門のストライカーとし
て活躍してくれた吹雪くんのことを特に気にかけてくれているみたいだ。
豪炎寺「吹雪、ある程度の事情は聞いている。雷門を守ってくれてありがとう。
・・・ボールが怖くなってしまったか?・・・怖くて当然だ。俺も怖いよ。
・・・でも、怖さを抱えて蹴る、それだけだ。」
豪炎寺くんが真剣な表情で言った。
夏未ちゃんから雷門サッカー部FF優勝の軌跡は聞いている。豪炎寺くんが
転校してきた当初サッカー部に入らなかった理由も、対宇宙人の旅路でも雷門
を離れていた理由も、豪炎寺くんがサッカーをやっていたことで事件に巻き込
まれてしまった夕香ちゃんが関係している。夕香ちゃんは悪いことをしていな
いのに、自分がサッカーを続けていることが原因で夕香ちゃんが不幸な目に合
うことに、これだけチームのことを慮ることのできる彼が何も考えないわけが
ない。エースストライカーとして有名な豪炎寺くんでさえ恐怖と戦いながら、
悩みながらボールを蹴ってきた。先ほどの言葉は吹雪くんへの彼なりのエール
なのだろう。
円堂「豪炎寺ィ!立向居の相手をしてやってくれ!吹雪!湊川!お前らも入れよ、な!」
湊川「え~、さっき休憩に入ったところなのに~!」
豪炎寺「そう言うな。俺もお前の実力が気になる。土方の弟たちもお前の技に
憧れてマネしていたぐらいだしな。」
湊川「そうなの?!・・・そこまで言われたら仕方ないな~!!」
土門「お前は分かりやすくてかわいいなぁ。」
湊川「褒めてる?」
土門「どちらかというと?」
土門くんは目をくるりと回しながらオーバー気味に肩をすくめた。なんだ
かナメられてる感がなくもなくもない。まぁ、私にはサーターアンダギーがあ
るし?何を言われても無敵ですけど。さっき、豪炎寺くんと話してて記憶を振
り返った拍子にサーターアンダギーを喜屋武ちゃんにお裾分けしてもらったこ
とも思い出した。豪炎寺くんに感謝。
練習に加わり、その暑さとレベルの高い練習に汗を拭っているとみんなが豪炎
寺くんVS立向居くんのデュエルに注目していた。豪炎寺くんの『ファイアトル
ネード』に対し、立向居くんは真っ正面のポジションに入り、GK技を出した
けれどあえなくゴールネットが揺れた。次はお前の番だと言うように、豪炎寺
くんの後方にいた吹雪くんに有人くんからパスが渡されるが吹雪くんは足がす
くんで動けなくなってしまったようだった。豪炎寺くんVS立向居くんで注目
を集めていた流れでみんなの視線がボールを追い、吹雪くんにピントを合わせる。
湊川「あ~!!」
塔子「わっ。何だよ、突然大きな声出して。」
湊川「せっかく沖縄に来たのに塩アイス食べてない!」
塔子「塩?それっておいしいのか?甘いものに塩って、変なの。」
湊川「甘さが引き立っておいしいよ。ほら、スイカに塩かけるのと同じ原理。」
塔子「分かるような分からないような・・・。塩なのに甘くなる?・・・ダメだ、こん
がらがってきた。」
湊川「食べたら分かる、おいしいよ!って事で、もうアイスの口になってるの
で行ってきます!」
瞳子「まだ練習中でしょう。」
湊川「でも!暑いし、外だし。こんなとこで練習してたら熱中症になっちゃい
ますよ!」
そう言うと瞳子監督は空を見上げ太陽の傾きを確認した。そしてため息をつ
きながら午前練習終了の合図をした。
観光客向けに出されたアイス店のテラス席は青と黄色のジャージ集団で占拠
されていた。しかし、そのアイス店の前を通る人はみんなにこやかにジャージ
の中学生に目を向けた。昨日の”イプシロン改”との戦いを見てくれていたらし
い。沖縄を守ってくれてありがとう、と感謝を述べる人もいれば、俺もいつか
雷門に入ってサッカー選手になるんだ!と鼻息を荒くしている男の子もいた。
雷門のファンなのかサッカーボールにはイナズママークが描かれている。豪炎
寺くんもそれが目に入ったのか、少年を見てわずかに笑っていた・・・気
がする。大口を開けて笑うタイプじゃないけどあれは笑ってた、絶対。たぶん、
そう、きっと・・・。
人数が多いため、アイスは店員さんがトレイに乗せて一度に運んできてくれ
た。待ち望んでいた塩アイスはミルクベースの白色で、角度によって塩の結晶
が太陽の光に反射しキラキラと輝きを放っている。さっそくスプーンを雪玉の
ように丸くスクープされたアイスに差し込んだ。暑さのせいか少し溶けてちょ
うどいい固さだ。・・・美術で絵の具の扱い方を教わったときに水と絵の具の混
ぜる量は「溶けたアイスクリームぐらい」になるのが適当ってアドバイスをも
らったことがあったなぁ。絵の具は食べられないので苦行の時間でした。今は
アイスに集中!と現実に戻り、アイスを口にする。やっぱ暑いときはアイスだ
よね。冷たくておいしい!ミルク味というけれど、ただのミルクではなく、生
クリームやコンデンスミルク、バニラの香りが複雑で濃厚なハーモニーを織り
なしている。ミルキー感はあるけどラクトアイスタイプだからパクパクいけち
ゃう!そして何よりも塩の存在感。フレーバーの中に溶け込んでもいるが、ト
ッピングにかけられた塩の結晶のおかげで、味が単調にならず飽きを感じさせ
ない仕上がりになっている。お腹を壊す心配さえなければもっと食べたいのに!
吹雪「ほんとおいしそうに食べるよね。」
あまりの塩アイスのおいしさに感動していると向かい合って座っている吹雪
くんが声をかけてきた。
湊川「おいしいものを食べているから当然では?」
吹雪「うん、そうだね。ひんやりしておいしい。」
湊川「あれ、みんな塩アイスだけど吹雪くんは違うのにしたの?」
吹雪「これもめずらしい味かなって。シークヮーサーっていう柑橘系の果物な
んだって。」
湊川「聞いたことはあるけど食べたことない!一口もらっていい?」
吹雪「いいよ。」
許可を得たところで余っているスプーンを手に取り、吹雪くんのアイスから
一口すくい取った。
壁山「一匙だけどごっそり持っていったっス・・・。」
湊川「香りが良くておいしい!クリームもいいけど夏真っ盛りの暑いときなら
フルーツ系のアイスの方が爽やかでいいかも!え、他の味も食べてみた
い。アイス制覇したいよ~。明日には雷門町に戻るって言ってたけど来
週くらいにしない?」
叶わないとは思いつつも、頭に浮かんだ願いをそのまんま口にする。え、ほん
とに全部の味食べたいんだけど?シークヮーサー味もおいしかったからもう一
口。いやもう二口食べたい。冷たいアイスを堪能していると吹雪くんが一息つ
いて、真面目な顔つきで言った。
吹雪「・・・ねぇ。練習で僕がボールを前に動けなかったから空気を変えるため
にアイスを提案してくれたんだよね。・・・僕、このチームに必要なのか
な。ボールを蹴ることももうできなくなっちゃったのに・・・。」
湊川「え?フツーにアイス食べたかったのが一番だけど。・・・そんなこと言わ
ないで。吹雪くんはこのチームに必要だよ。・・・私ね、今サッカーが
すごく楽しい。それはサッカーに真摯に向き合っているみんなが私をチ
ームに受け入れてくれたからだし、みんなが私を呼んでくれるから。私
を信じてパスをくれるから。ボールを通じてみんなの、前にボールを繋ぐ
ぞ、勝つぞ、って気持ちが伝わってくるんだ。それがすごく嬉しい。
だから私も。私がそうしてもらって嬉しかったみたいに、吹雪くんの名
前を何度でも呼ぶよ。吹雪くんが必要だから。
・・・それに、吹雪くんがいるから今私は塩アイス以外の味も食べること
ができてハッピーです!ほら、やっぱり、吹雪くんがいてくれてよかった!」
吹雪「・・・やっぱり試合は勝ってこそだよね。・・・勝つために僕は必要?」
湊川「必要だよ。ねぇ、吹雪くんはみんなとするサッカー、楽しい?」
吹雪「・・・」
湊川「じゃあ、みんなとサッカーするのが楽しすぎて、ずっとゲームが終わら
なければいいのに、って吹雪くんが思っちゃうくらい私、がんばるから。
だからそれまでは勝手にチームを抜けちゃダメ。これ以上大事な仲間が
減るのは許さないんだから。」
木暮「『それまでは』っていうけど、それって一生チーム抜けられないじゃん。
ワガママだね。」
湊川「そうかも!もちろん木暮くんもだよ。チームを抜けようなんて少しでも
考えたらどこまでも追いかけるから覚悟しててね。」
木暮「俺は漫遊寺中にはしばらく戻りづらいし・・・。ちゃ、ちゃんとみんなと
のサッカー楽しいって思ってるよ。だから抜けろって言われても雷門は
抜けてやらないんだからな!」
湊川「言わないよ。みんなでずっとサッカーしようね。」
吹雪「アンリちゃん・・・。」
木暮くんが会話に入ってきたなぁとは思ったけど、いつの間にか私の手にあ
った白いはずの塩アイスに赤いパウダーがかかっていた。いつものパターンか
ら考えてこれ絶対辛いやつ~!
木暮「うっしっし。油断したね。おすすめのチリパウダーだよ。まさかアイス
を残さないよね?」
湊川「そんなぁ!なんでそんな試練を課すの?私のスイーツ好きが試されてる・・・。
甘いものを残すのは末代までの恥!えーい、ままよ!」
覚悟を決めて口に含むと、思いのほか刺激はなく、むしろおいしかった。
湊川「あれ?思ったよりイケる?」
鬼道「チリパウダーも結局香辛料の一種だからな。味を調えたり食欲促進の効
果がある。聞いた話によるとメキシコの方ではスイーツやフルーツにチ
リパウダーをかけて提供する店もあるらしい。」
木暮「へ~そうなんだ。でも残念。あんまり面白いものは見れなかったや。ちぇっ。」
試練を乗り越えた私は、スイーツ好きの看板を下ろされることはなく、その
後もおいしくアイスをいただいた。でも、せっかくの沖縄塩アイス、ちゃんと
本来の味を堪能したかった・・・。次やったら許さないんだから。