脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
救急車で運ばれていった吹雪くんを追いかけるため、みんながイナズマキャラバンに
乗り込むなか、有人くんに呼び止められた。
鬼道「去り際の"ジェネシス”の発言とお前の言動について聞きたいことがある。」
湊川「あー…だよね。」
鬼道「やつらの言うお父様とやらはお前を勧誘しろと言っていたらしい。狙われている
可能性かある、注意しろ。」
湊川「でも結局何もなかったじゃん、むしろ目の前でド直球の悪口言われたんだけど。」
鬼道「それは”ジェネシス”の判断であって、お父様とやらの目的は分からない。警戒す
るに越したことはない。今後は自由時間であっても必ず2人以上でいるようにし
てくれ。」
湊川「えぇー…。」
鬼道「わかったな。それから、最後のお前のセリフはなんだ。」
…どこから話せばいいんだろ?大阪のことからでいいのかな?ケーキ4つ食べたこと
もバレてるし。おやつ禁止令は堪えたけど数日前の私グッジョブ。ケーキの話なしに大
阪のことを喋るのは至難の業だろう。もうバレて困るものなど何もないので有人くんに
は大阪の”なにわらんど”のレストランで相席したことを話した。
鬼道「待て、そもそも怪しさしかないんだが。向こうはお前のことを認識した上で接触
しに来てるじゃないか。」
湊川「えー、でもケーキ頼んでたし。」
鬼道「………………まぁいい。で、その時グラン、いや、ヒロトは何か言ってなかった
か?何かエイリア学園に関するヒントがあるかもしれない。」
湊川「特に何も。私がずっと喋ってて、ヒロトくんは頷きながら話聞いてくれてただけ
だよ。」
鬼道「俺たちの情報について何か聞かれたか?」
湊川「質問はなかったよ。観光に来たって行ってたから神戸のカフェいっぱい教えた!」
鬼道「何しに来ていたんだ?あの男…。」
アゴに手をあて考える素振りをしていた有人くんだが、すぐに手を空に向け肩をすく
ませお手上げのポーズをした。考えるよりも話を聞いた方が早いと判断したらしい。
湊川「で、一昨日の夜にヒロトくんが来て」
鬼道「ストップ。大阪で会ったやつと連絡先を交換したわけでもないのに、また一人
でいるタイミングで会うのはおかしいと思わなかったのか。」
湊川「世間って狭いんだな~とは思ってたけど。」
鬼道「偶然がいくつも重なったら人為的なものと疑え。」
湊川「難しいこというね。…で、その時にまた一緒にケーキ食べようねって約束しよう
としたら近々また来るからその時にもう一度誘ってほしいって。そして今日です!」
鬼道「怪しさしかない…。むしろエイリア学園関係者でよかった。いや、よくはないん
だが。あの言われようでよくヒロトをまた誘えたな。」
湊川「ケーキ食べながら笑ってたヒロトくんが偽りの姿だとは思えなくて。試合のと
きも大嫌いって言われたけどその後すぐにすれ違ったときに『ごめんね』とも言
ってたの。それに、私は遠くから見てたから分かるんだけどヒロトくんも吹雪く
んのことも心配してたよ。だから私は冷たい態度のグランじゃなくて優しいヒロ
トくんの方を信じたいって思ったよ。・・・私、一緒にカフェ巡りしてくれるお友
だちが欲しかったんだよね。」
鬼道「なるほど、それであの態度か。はぁ、めんどうなことになってるのは理解した…。」
大方の事情を話し終えると有人くんはしばらく頭を抱えていたが、キャラバンの出発
を知らせるクラクションが鳴り、すぐにキャラバンに乗り込んだ。
吹雪くんが病院に運ばれてひとしきり検査は終えたようで、みんなでお見舞いのため
に病室に寄った。命に別状はないとのことだけど吹雪くんはまだ目を覚ましておらず、
今も時折苦しそうな声を上げている。
栗松「俺たちのせいでやんす・・・。俺たちが止められなかったから、吹雪さんムリをし
て・・・。」
春奈「あの!吹雪先輩。本当にボールを取りに行っただけなんでしょうか?」
夏未「どういうこと?」
春奈「私、少し怖かったんです。あのときの先輩の顔。それに、”イプシロン"の試合のと
きも。ボールを持ったときに感じが変わることは何度かありましたけど。あのとき
は妙に気持ちが高ぶってたような・・・。」
円堂「実は俺、”イプシロン”戦のあと吹雪に聞かれたんだ。『僕、変じゃなかった?』
って。もしかしたら吹雪のやつ、そうとう悩んでたのかな。」
鬼道「監督は何か知ってるんじゃないですか。」
みんなの視線が瞳子監督に集まる。瞳子監督は私たちとは目を合わせようとはせず、
思い悩んだ表情だ。少し悩んだ末にようやく語ったのは吹雪くんの過去だった。
吹雪くんにはアツヤという名前の弟がいて、吹雪くんがDFでボールを奪い、FWの
アツヤくんが得点を決める名コンビだったらしい。だが、そのコンビは雪崩が原因で永
久に見ることができなくなってしまう。ボールを持つと時折性格が変わっていたのは、
心のバランスを保つために生まれた吹雪くんの中にアツヤくんの人格が生まれたからら
しい。しかし、そのバランスはエイリア学園と戦う中で揺らいでいくことになる。吹雪
くんはもともとDFなのに求められていたのは、強力なアタック力を持つFWのアツヤく
んの方で。次第に吹雪士郎の「アイデンティティの喪失」に繋がっていったようだ。話
を聞いた秋さんが思わずといったように言葉をもらした。
秋 「どうして、吹雪くんをチームに入れたんですか!だって、監督は知ってたんです
よね、吹雪くんの過去に何があったのか。だったら、今日みたいな事がいつか起
こるかもしれないって分かってたはずじゃないですか!なのに、どうして吹雪く
んを?エイリア学園に勝つためですか?エイリア学園に勝つためだったら吹雪く
んがどうなってもいいんですか?」
瞳子監督がくるりと目を回転させる。しかし、すぐにその動揺を隠すように厳しい声
で、「それが私の使命です」と告げた。瞳子監督が出て行き病室の中が再び静まり返る。
円堂「あのとき俺が気づいていれば、こんなことにはならなかったんだ・・・!」
鬼道「やめろ、お前は悪くない!お前のせいでも、監督のせいでもない。・・・これ
は俺たちチームの問題だ。たしかに、俺たちはエターナルブリザードに頼りすぎ
ていた。吹雪にさえボールをつなげれば、点を入れてくれると。吹雪にとってそ
んな思いがかなりの重圧になっていたに違いない。戦い方を考え直すべきかもし
れない。そして、俺たちがさらに強くなって、エイリア学園に勝つために。」
みんなが有人くんの言葉に賛同する。一度集団の中で声に出したら何とかなる気がし
てくるらしい。先程まで一方的な試合をされていたにも関わらずみんなが次の試合に向
けて前を向こうとしていた。しかし、それはその場の空気を読んでみんなが同調した強
がりなようなもので、解散してバラバラになるとその強がりも長くはもたなかった。そ
れが明らかになるのは翌日以降のことだった。
ジェネシスとの試合の翌日、風丸くんがチームを抜けたと瞳子監督から告げられた。
栗松「風丸さん・・・。」
秋 「どうして止めなかったんですか?ここまで一緒に戦ってきた仲間なんですよ?」
瞳子「サッカーへの意欲をなくした人を引き留めるつもりはないわ。私はエイリア学園
を倒すためにこのチームの監督になったの。戦力にならなければ出て行ってもら
って結構。」
土門「あぁ、アンタはそういうヤツだよな!」
瞳子「空いたポジションをどうするか考えておきなさい。」
壁山「風丸さんの代わりなんているわけないっす・・・」
一ノ瀬「エイリア学園を倒すって言っても、昨日の試合もあんなだったし・・・。」
雷門の初期メンバーでもある風丸くんが抜けた穴は戦力面だけでなく、精神面にも大
きな影響を及ぼしていた。…せっかくみんなとするサッカーが楽しいって思えたのに。
またみんながバラバラになっていく。ねぇ、宇宙人にサッカーは面白いって教えるって、
言ってたよね、みんなで平和にサッカーをやろうって声をそろえてたじゃん。いつから
「倒す」ことが目標になったの。暗い表情のみんなにいつも通りのトーンで有人くんが
喝をいれた。
鬼道「練習に戻るぞ。俺たちがサッカーをするのは監督のためじゃない。円堂がいつも
言っているだろう、サッカーが好きだからだ。サッカーを守るためにもエイリア
学園には勝たないとな。」
有人くんがグラウンドに足を向け、ついて来いと言うようにマントを翻す。風になび
くマントはまるで、民衆を導く旗印のようだ。私たちの話にきちんと耳を傾け言葉を丁
寧に選んでくれているのが分かる。
そうだよ、まだエイリア学園の方がスキルは上だ。同じテーブルで話すためには対等
な関係にならないと。そのために今日もサッカーをしよう。相手も味方も楽しいと思え
るサッカーをするために。
私も一団に並んで有人くんの後に続く。厳しいときもあるけれど常に周りに気を配っ
て的確な判断をする有人くんは、昔から絶えず私の道しるべ。…いつもならここで円堂
くんの元気な声がみんなを鼓舞し、さらに勇気づけてくれるところだけど、今日はそ
の声があがらない。秋さんが疑問に思い、ボールを円堂くんに渡しながら声をかけるも、
円堂くんは手でそれを制した。
円堂「今の俺に…ボールを蹴る資格はないんだ。」