脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日、円堂くんが練習試合の申し出を受けたというのでそれに併せてウォー
ミングアップを済ませる。普段なら日傘を絶対に手放さないところだが、午前の
晴天はどこへやら、今は雨が怪しまれるほどの曇天だ。一番陰の短くなる12時に
試合開始と聞いたときには逃げだそうとさえ考えていたが、これならその必要も
ないだろう。校舎についた大きな時計を確認するとあと1,2分ほどでお昼になろ
うとしていた。っていうか今日の試合相手って誰なんだろう。サッカーできるだ
けの人数を率いて来ようと思ったらそれなりに時間もかかるだろうし騒がしくも
なるだろう。予定時間近くなっても周囲からは環境音くらいしか聞こえない。
春奈ちゃんが時計を見て12時になったと知らせてくれた瞬間、黒いモヤがあ
たりに立ちこめた。これってエイリア学園のお出ましのときにでるあれ?いや、
試合相手は待ってるけど今デザートさんたち”イプシロン”は待ってないんだよね。
マカロンだけ置いて帰ってください。モヤが晴れるとともに現れたのは初めて見
るユニフォームのチームだった。・・・真ん中の人すっごい見たことある気がする
んだけど?髪は赤かったけどあんなワイルドな髪型だったっけ。う〜ん?
基山「やぁ、円堂くん。」
円堂「っ!・・・まさか、ヒロト?」
風丸くんはエイリア学園にまだ他のチームが存在したことに驚いているけれど
私も驚いている。やっぱあの人ヒロトくんじゃん。近々会いに来るってそういう
こと〜!?君サプライズの才能あるよ!そっか〜ヒロトくんエイリア学園だった
のか・・・エイリア学園?!雷門と戦ってる学校じゃん!どうやら本当の名前はグ
ランというらしい。円堂くんもヒロトくん(・・・グランの方が正解?まぁ言い
慣れてるから「ヒロト」でいいや)とは会ったことがあるようで警戒の眼差しを
向けていた。
土門「どういうことなんだ?どうして円堂の友だちがエイリア学園に?」
目金「まんまとダマされたみたいですね。やつらの目的は友だちになったフリを
して円堂くんを動揺させること。宇宙人の考えそうなことで…」
グラン「それは違うよ!・・・俺はただ君たちとサッカーがしたいだけ。君たちの
サッカーを見せてよ。」
目金くんの発言に被せるようにヒロトくんが大声で否定した。ビックリしてヒ
ロトくんの方を見ると一瞬だけ目が合ったがすぐにそらされてしまった。一度も
聞いたことなかったけどヒロトくんサッカーがそんなにしたかったんだ。一緒に
やろうって言ってくれたらいつでも・・・ってそれが今回なのか。殺伐とした空気
のなか、エイリア学園の”ジェネシス”との試合が始まろうとしていた。…ヒロト
くんならエイリア学園の侵攻について話し合いができるかもと思っていたが全然
そんな雰囲気じゃなさそうですね!今のヒロトくんはすごく挑戦的な目をしてい
て円堂くんと睨みあっている。私は今日姿を現したばかりのグランじゃなくて、
優しいヒロトくんの方を見ている時間の方が長いからすごく違和感がある。どち
らが本当のヒロトくんなんだろう。
試合直前のフォーメーションの打ち合わせが始まるが吹雪くんの姿が見当たら
ないため何人かで探しに行くことになった。校舎内の廊下の突き当たりに来たと
ころだろうか、名前を呼びながらキョロキョロと辺りを見回していると「来るな!」
という叫び声が聞こえた。
湊川「え゛っ!!!なんかごめんなさい。」
吹雪「アンリちゃん?ごめんね!アンリちゃんに言ったんじゃなくって。
・・・気にしないで。何でもないんだ。」
湊川「えぇー・・・。何でもないことなくない?」
吹雪「うん・・・でも僕の問題だから。」
湊川「ムリには聞かないけど・・・。仲間なんだからいつでも相談に乗るからね!」
吹雪「うん、ありがとう・・・。」
吹雪くんと合流してグラウンドに戻ってくると吹雪くんはリカ姉さんとの2ト
ップFW、私はMFでスタメンだと知らされた。ホイッスルが鳴り、雷門ボールか
ら試合が始まる。しかし瞬きほどのわずかな間にボールはジェネシスの足元に移
動していた。ジェネシスのメンバーたちは声をかけあってパスを繋いでいく。声
はちゃんと聞き取れるのにパス回しや移動速度が通常の2倍ほどの速さに感じた。
追い付くこともできず、ゴール前のヒロトくんにボールが渡った。小手調べとい
うようにノーマルシュートが放たれるが、身体の動きの速さに比例して威力の強
いシュートになる。円堂くんがマジン・ザ・ハンドを出そうとするがシュートが
生んだ突風に負けてしまいゴールにボールが押し込まれてしまった。ここまで
試合開始からわずか1分の出来事だった。
風丸「信じられない…マジン・ザ・ハンドがあんなカンタンに破られるなんて。」
円堂「なんてパワーだ、これがジェネシスの力。でも、負けない!もうゴールは
割らせない!」
グラン「それでこそ円堂くんだ…!」
シュートが決まる度に雷門ボールでセンターラインからプレイ再開するがすぐ
にボールを奪われてしまい一方的な試合展開が続いた。
ジェネシスに15点目の得点が入ったとき、円堂くんはうつ伏せになったまま
ついに立ち上がれなくなってしまう。まだ試合は終わってない、と声を振り絞り
立ち上がる。諦めなければチャンスは必ず来る、それまでは俺がゴールを守って
みせる。その目から光が消えていないことを見て、円堂くんばかりに負担をかけ
るわけに行かないと気合いを入れ直す。有人くんがコーマとアークのパスの隙間
をぬってボールを奪うことに成功する。吹雪くんにボールを渡すもジェネシスの
DFによって防がれてしまった。責任を感じたのか吹雪くんが立ち尽くす。
湊川「やっぱり動きが速いね!だいじょーぶっ!まだまだ体力も時間もあるし、
次は私もがんばるね!」
吹雪「アンリちゃん…うん、次こそ”僕”がシュートを決めてみせるよ」
ボールを奪った塔子ちゃんに合流し、有人くんの指示に従いながらラインをあ
げていく。私の前に同じMFのクィールが立ちふさがる。
湊川「ミルリトン!」
円形のタルトがコイントスのようにくるくるとその場で回転している間に相手
の死角に入る。回転の勢いをなくしたタルトはそのまま横にそれて倒れその衝撃
で中からアーモンドがはじけ飛ぶ。相手がそれに気をとられているすきにゴール
ポストの前まで距離をつめた。当然ながらジェネシスのDFキーブがボールを狙
ってチャージしにくる。
鬼道「アンリ!フリーの吹雪に!」
有人くんに言われて吹雪くんにパスを出す。エターナルブリザードを繰り出す
吹雪くんはとても苦しそうで、心なしかシュート前の回転もいつもより遅い気が
する。いつも頼りにしていた吹雪くんのシュートは必殺技を使うこともなく止め
られてしまった。
吹雪「ごめんね、ちょっとタイミングが合わなくて…。」
円堂「気にするなー、吹雪!次は決めて行こうぜ!」
湊川「ちょっとー!円堂くん!新しい必殺技出したんだから私の方にコメントし
てよー!…だからね吹雪くん、さっきみたいにまたボール取ってくるから、
何度でも。焦らなくていいんだよ。」
吹雪「うん…。」
とは言ったものの、広すぎるフィールドでボールを追いかけるのは限界があっ
て、私の活躍も数える程度しかないままジェネシスは得点を重ねていった。21点
目をいれるべくヒロトくんが必殺技の流星ブレードを放つ。そこにDFの位置ま
で下がってきていた吹雪くんが割り込んだ。強力なシュートに当てられて悲痛な
叫び声がグラウンドに響く。土煙が収まったグラウンドにぐったりとした吹雪く
んが倒れているのを見てみんなが吹雪くんの元に集まる。遠巻きにだが、シュー
トを打ったヒロトくんも心配そうに吹雪くんの顔を覗き込んでいる。呼び掛け
ても返事がないため立向居くんが急いで救急車を呼ぶ手配をしてくれた。
ハウザー「試合も一方的だし、中断されたしで興が削がれちまった。帰ろうぜ
グラン。」
ゲイル「そういえば何とかって選手勧誘して来いって言われてなかったっけ?」
アーク「あー、たしか湊川ってやつじゃなかったっけ?」
グラン「それは必要ないよ。」
アーク「えー?でもお父様からの言い付けだろ?」
グラン「お父様の意図は聞いてる?」
アーク「いや?ただ勧誘して来いとだけ。」
グラン「・・・お前たちも彼らの実力を見ただろ。それに、湊川って選手は・・・どの
試合を見てもフルで試合には出てないじゃないか。勧誘したところで役
に立つとは思えないね。」
ウルビダ「グランにしては珍しく語気が強いな、そんなにお気に召さなかったか?」
グラン「あぁ、・・・・・・っ大嫌いだ。」
ゲイル「そうか、なら無理に誘わなくてもいいんじゃねぇの?勧誘したけど来ま
せんでしたってな。行こうぜ。」
突然話題の中心にされて悪口言われたんですけど、ウケる(ウケない)。これ聞
こえていい話?フツーの音量でしゃべってるよね。…ヒロトくん、前にTVで見
たって言ってたけどそんな風に思ってたんだ。事実だから言い訳できないけど。
ジェネシスのチームメイトに呼ばれてヒロトくんが歩いてくる。すれ違うとき
にまた目があって私にだけ聞こえるように「ごめんね。」と言った。その声は
挑発的なグランではなく、私の知っている優しいヒロトくんのものだった。なん
だ、もう宇宙人ととっくに友だちになってたんだ。ケーキ好きな人に悪い人はい
ないんだよね!
湊川「ヒロトくん」
グラン「…。」
湊川「約束、また今度ね!」
グラン「…!」
黒いサッカーボールから発せられる轟音のせいでヒロトくんに私の言葉が届い
たかは分からない。ジェネシスが去った後に残されたのは重く淀んだ空気だった。
風丸「勝てない…実力が違いすぎる…。」
吹雪「…」
鬼道「…どういうことだ?」