脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
前半からハイペースな試合展開で、試合開始のホイッスルから数分で、”イプシ
ロン”のシュート「ガニメデプロトン」が繰り出される。以前の京都で対戦した
ときは3人がかりでようやく止めることのできたシュート。今回は円堂くん一人
で止めてみせた。試合開幕早々に特訓の成果を示し、強気な笑みを浮かべる円堂
くんが背中にいることがとても頼もしいと思った。
10日間。人によってはあっという間の短い時間かもしれないけれど。私にとっ
ての10日間はとても充実したものだった。それはみんなにとっても同じようで、
前回に比べると、格段にスキルが上がっている。
風丸「やれる・・・!やつらの動きが見える!」
リカ姉さんの可憐なフェイントが成功し、一ノ瀬くん・有人くんが連携技「ツイ
ンブースト」を放つ。しかし、これは”イプシロン”のDFに防がれてしまう。さっ
きまで攻めていたかと思いきや、ボールはもうハーフコートのこちら側に運ばれ
ている。円堂くんがシュートを止めると、デザートさんも止めるというように、
なかなか点数に動きはないものの、両者互角のせめぎ合いが続く。みんな頑張っ
てきたんだもん、今日はみんなで勝ちたいっ…!
女子サッカーの競技人口が少ないこともあって、今まで私は練習試合くらいし
か参加できなかった。でも、今は雷門イレブンにもエイリア学園にも女子選手が
いて、私もチームの一員だと認められて。本気で挑みたいと思える相手にも恵ま
れた。いつの間にかお菓子を食べるため、というよりもチームの仲間と同じ思い
を胸にフィールドを走ることを望んでいる自分がいることに気づいた。…サッカ
ーってみんなでやるものなんだ。練習も、試合も。味方だけじゃなくて相手も含
めて全力でぶつかり合うから楽しいんだ。「もう一度」、「次こそは」、悔しさ
も楽しい気持ちも分かち合えるのがサッカーのいいところなんだ。
デザーム「そうだ...!この血の沸き立つ感覚こそ私の求めていたものだ!」
吹雪「いつまで守ってんだよ?!!」
DFの仕事をこなしてくれていた吹雪くんが突然怒りをあらわにし、一人でゴ
ール目前に攻めていく。これに対し、”イプシロン”DFのタイタン、ケイソンが素
早く前に出て応戦しようとするも、吹雪くんをメインディッシュと表現したデザ
ートさんは、タイタンとケイソンを下がらせた。徴発を受け、吹雪くんが「エター
ナルブリザード」を放つが、GK技「ワームホール」によって防がれてしまう。
デザーム「もっとシュートを打ってこい、私を楽しませろ!」
好戦的な勇将のようなセリフと同時に、ペナルティエリアからボールは投げら
れた。
互角に戦えるようになったとはいえ、やはり試合のテンポが速すぎる。フツー
にサッカーをするならまだしも必殺技を使っての超次元な戦いは体力の消耗が激
しいものだった。試合に集中しちゃうからなんだけど、ペース配分むずかしっ!
試合慣れしてないからまだ調子がつかめないや。なんとか余力を残したまま、両
陣営無得点で前半戦が終了した。
デザーム「やはりやつらは面白い。我らと戦うのにふさわしいチームだ。」
円堂「みんな、”イプシロン”の動きに負けてないぜ!」
秋「後半もこの調子でがんばって!」
塔子「任せとけ!このまま1点も入れさせるもんか!」
風丸「俺たちの力を見せてやろう!」
木暮「俺もやってやる!絶対に!」
春奈「木暮くん、DF、頼むわよ。」
円堂「俺たちは確実に強くなってる、勝てる、絶対に勝つぞ!」
みんな元気すぎない?こっちはもうヘトヘトなんだけど。これがアドレナリン
出まくってる状態ってやつ?試合で汗をかいた分、水分補給をかかさずに行なう。
今日は事前に試合があることが分かっていた上に、こちらは”イプシロン”を待つ
側だったので時間に余裕があり、Myドリンクを用意した。ニルギリ・ブローク
ンのクセが少なく穏やかな口当たりのブラックティーにキュウリのスライスとレ
モンを入れた、水分補給だけでなく栄養までとれちゃう英国式とっておきドリン
ク。アイスティーにすること前提で少し濃いめに淹れたニルギリの風味がキュウ
リの青臭さを緩和してくれている。…「青い山」の意味をもつニルギリが青臭さ
を消してるの、ちょっと混乱するな…。とりあえず、おいしくキュウリの栄養摂
取できるよ!これ飲んでおけば春奈ちゃんにてんこもりのサラダを盛られる必要
ないのでは?
ティーカップがないため、普通のドリンクボトルに入れるしかなかったのが残
念だけど、中身は紅茶!満足!あ、それ、紅茶入りボトルです、私専用です。一
ノ瀬くん間違えてボトル取らないで。目金くんがスツール代わりにしていたドリ
ンクケースを強奪し、紅茶入りボトルをベンチ横の目立たない場所に移動させる。
疲れはあるものの少し休んで息も整ってきたころ、瞳子監督が後半のフォーメ
ーションについて方針を明かした。
瞳子「…それから、吹雪くん。攻撃に気を取られすぎよ、DFに集中しなさい。」
鬼道「そのことなんですが、監督。吹雪をFWにあげてください。今のままじゃ
攻撃力が足りません。デザームのワームホールを打ち破るには吹雪の力が
必要なんです。」
瞳子「それは分かってるわ。でも、この試合は1点勝負よ。絶対に失点はできな
いの。」
鬼道「ですが、守るばかりでは勝利には近づけません。」
瞳子「吹雪くんはDFから瞬時に攻撃に移ることができる。イプシロンの攻撃を
防いだときこそチャンスよ。カウンター攻撃を繰り返せば必ず得点の機会
がある。」
鬼道「それでは、吹雪に負担がっ!」
吹雪「…大丈夫、任せてよ。」
瞳子「湊川さんは?何度も"イプシロン”の猛攻を止めてくれているけれど、序盤
からハイペースだったでしょう。」
湊川「う~ん…そろそろ限界かも。ずっと必殺技打ってるもん。」
瞳子「そう。じゃあ湊川さんに代わって後半は栗松くんが入りなさい。」
栗松「特訓の成果、見せるときが来たでやんす!」
10分の休憩を挟んだ後、結局吹雪くんのポジションはDFのまま後半戦がはじ
まった。しんどいときはしんどいって言ってもいいのに。瞳子監督の指示があっ
たからか、吹雪くんはボールを奪うたびに猛攻をかけていく。前半のデザートさ
んとの1対1の勝負で敗れたことが影響しているのか、それとも「得点を決める」
という重圧に押されているのか。もはや敵だけでなく、味方からもボールを奪う
始末だ。ただゴールだけを瞳に映す吹雪くんには、パスを呼ぶ有人くんの声も、
ベンチからの声援も届いていないようだった。
吹雪「点をとるには俺が必要だろ!ジャマだ!」
吹雪「出るなアツヤ…!今はDFに、集中っ…!」
ボールをずっと追いかけ疲れが見え始めたMF、身体を張って自陣を守るDF、
繋がらないパス。チームが心なしかバラバラに離れてきているように見える。ずっ
と必殺技で応戦していた木暮くんがついにおし負けてしまい、身体ごとゴールラ
インの向こう側に飛ばされる。
円堂「木暮!大丈夫か?」
木暮「キャプテン、ごめん。俺のせいで…俺がいたから必殺技も出せなかったん
だよね…。」
円堂「時間はまだあるぞ、気にするな!走り続ければなんとかなる。さあ、こ
こからだ、気持ちを切りかえていくぞ!」
木暮「キャプテン…!」
暗い夜が太陽の光で照らされていくように、みんなの心に円堂くんの明るいこ
とばがしみこんでいき、歯車がうまくかみ合わないかのような不穏な空気が霧散
していく。みんなの闘志に再び火がつき、表情も試合前の強気な顔つきに戻った
のがベンチからだとよく見える。いつもゴールを守ってくれる、後ろから私たち
に声をかけて支えてくれる円堂くんの言葉はまるで魔法だ。円堂くんが声をかけ
たのはフィールドのプレイヤーに向けてのものだったけれど、そのことばにベン
チにいた秋さんや夏未ちゃんたちも安堵の息をもらした。
秋「そうよ、これが円堂くんの強さ」
夏未「彼は、どんな試合でも負けることは考えなかった。今まで一度も。」