脅威の侵略者編
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一日完全なオフを楽しんで、今日から練習再開。集合場所である河川敷のサッカー
コートにやってきた。みんながアップを始めているのを見て私も靴紐を締め直し急い
で合流する。
風丸「今日は朝から練習に参加するのか?」
湊川「まだ朝早いし、日差しもそこまで暑くないからね。それに、対策ならバッチリ
なのよ!」
昨日丸一日オフをもらったのでヌン活を楽しんだ後は、夏未ちゃんに雷門町を案内
してもらいながらショッピングを楽しんだ。日よけのグローブにUVパーカー、UVの
レギンス。外に出ないことが一番ではあるけれどないよりはマシだ。もちろん日焼け
止めは厚塗りで。ウワサの宇宙人と対面して見えてきた課題や、夏未ちゃんから雷門
サッカー部の話を聞いたこともあって、前よりもみんなとの練習を増やそうと思って
たところに夏未ちゃんがこの高性能UVウェアの売り場に連れて行ってくれた。欲をい
えばもっとパステルカラーのかわいい色が欲しいです。なかなか購入しない私にしび
れを切らして、結局、夏未ちゃんがプレゼントしてくれました。「先行投資」だそう
です。え~ん、もらったからにはちゃんと練習がんばるね!まぁ、暑さはどうしよう
もないからお昼近くなってきたら練習はサボる気満々ですけど。
風丸「探偵アニメの犯人みたいに全身真っ黒だなぁ。・・・試合のときはパーカーは置
いとけよ?」
湊川「はっ!?そっか!ユニフォーム隠すから着れないじゃん。」
盲点。そりゃチーム名も背番号も隠れちゃうもんね。やっぱり邪魔かもしれないけ
れど、これからも日傘のお世話になることが多そうだ。
目金「気のせいかみんな調子いいですね。」
秋「うん、この調子をキープして”イプシロン”に勝てるといいね。」
重大な使命を託されたといってもやっぱり中学生。長時間の移動を伴う旅や宇宙人
の脅威から地球を守るという責任はとても重いもので、みんな日々ストレスをため込
んでいたのだろう。ストレスをため込まないためには甘い物が一番!って思うけれど、
最近イナズマキャラバン内ではおやつ警察なるものが常に目を光らせている。少しな
ら食べても検挙されないらしいけれど、何故か私は高い確率で食べ物をおやつ警察に
没収されてしまう。合法おやつのハズだけど、なんで?私だけチェック厳しくない?
みんなもお菓子を自由に食べられないと余計なストレスをためることにならないかな。
これが監視社会の闇ってやつか。閑話休題。
久々に自分の生まれ育った町に帰ってきて、ふかふかのお布団のある実家で休日を
すごしたみんなはしっかりリフレッシュできたようで、今日の練習にはより一層精が
出ているように見えた。今は5人ずつDFとFWに分かれて実践形式の練習をしている
ところだ。お、今日は吹雪くんFWの方で参加してるんだ。吹雪くん、普段はふんわ
りとしたかわいらしいイメージだけれどオフェンスの時は強気なんだよね。運転する
と性格が変わるタイプ?車の免許が取れるのなんてまだ先の話ではあるけれど吹雪く
んの車には乗らないようにしよう。そう心に決めた。う~ん、そんな数年先のこと、
忘れる自信しかない!
吹雪「いいぞ!染岡、完璧だぜ!」
染岡「おう…」
鬼道「染岡!」
ゴール手前に来て、有人くんが染岡くんにパスを出す。染岡くんもシュートの体制
を整え、彼の必殺技のモチーフであるワイバーンが咆哮をあげはじめるが、技は不発
に終わってしまった。染岡くんが苦し気な叫びをあげ、足をかばいながら地面に倒れ
こむ。その場所は真・帝国学園と試合をしたときに負った怪我らしかった。練習を一
時中断して、染岡くんの怪我の様子を確認する。
円堂「染岡。お前、この怪我…。」
染岡「何だよ。みんな大げさなんだよ。うっ…!」
染岡くんはみんなに心配させないために気丈に振舞おうとするも、やはり痛みがあ
るようで額には汗がにじんでいる。アイシングをするために患部を出した際に見えた
足はパンパンに赤く腫れあがっていた。真・帝国学園との試合から数日経過している
のに、その腫れ具合って今まで歩くのも辛かったんじゃ?古株さんが怪我の状態を
見て、練習を続けようとする染岡くんをたしなめる。
鬼道「”イプシロン”との戦いは1週間後なんです。それまでに染岡は。」
古株「1週間やそこらで治るもんかい。」
染岡「治す!こんな怪我1週間で治して見せる...治らなくても、次の”イプシロン”戦、
最初の前半だけでもやらせてくれよ。せっかく完璧になったワイバーンブリザ
ードはどうなるんだよ!なぁ?!吹雪!」
吹雪「ごめんね、気づけなかった僕のせいだ…。」
メンバーもギリギリの人数しかいなくて、試合も控えている。今が大事な時期とい
う染岡くんの言い分も分かるけれど、染岡くんの身体のことはもっと心配だ。最初は
軽度の怪我だとしても、無理をし続けているといつか必ずガタは来る。彼は雷門サッ
カー部に入学当初から所属していたメンバーの一人だと昨日夏未ちゃんから聞いた。
元からサッカーが好きでサッカー部に入部したはずだ。この先、サッカーをしたくて
もできないなんて辛い思い、染岡くんにはしてほしくない。みんな、染岡くんの気持
ちを痛いほどに理解できるからこそ、染岡くんに対して安易な言葉も「休め」という
言葉もかけられずに、あたりには重い空気が張り詰めていた。その空気を刺すように
鋭い言葉を発したのは瞳子監督だった。残酷なことでも、本人のためを思って、臆せ
ず言葉を紡ぐ大人をとてもかっこいいと思った。
瞳子「染岡くん、あなたにはチームを外れてもらいます。」
風丸「本人がやると言っているんです!やらせてやってもいいじゃありませんか!今
の俺たちに必要なのは自分の身体がどうなろうが勝つという気迫です!」
円堂「風丸…。」
風丸「円堂、お前なら分かるだろう。染岡は最初から雷門サッカー部を支えてきた仲
間なんだ。俺は、染岡の気持ちを汲んでやりたい。」
湊川「でも、このまま無理をしたらもっと怪我が悪化しちゃう!それじゃあ、宇宙人
の戦いが終わった後、染岡くんはどうなるの。人生100年なんて言われてるよ
うな時代、まだまだ先は長いのに染岡くんはずっと足が悪いままかもしれない
んだよ。」
瞳子「湊川さんの意見に同感ね。風丸君、あなたの言葉を借りるなら”仲間だからこ
そ”よ。彼はきっとチームのためにムリをする。そうなればみんなが彼を気遣
って、満足に戦うことができなくなるわ。」
風丸「でも!」
ガンッ!
染岡くんから発せられた音に驚き、みんなが染岡くんに注目する。
染岡「もういい、風丸。悔しいけどカントクの言う通りだ。仕方ねぇよ。…吹雪、
雷門のストライカー任せたぜ。」
吹雪「あ…うん…。」
染岡「何だよ、みんな、そんな顔すんなって。一時撤退ってやつだ。また、すぐに
戻ってくる。」
円堂「必ず、戻って来いよ。」
染岡「あぁ。湊川も、風丸もありがとな。」
染岡くんが風丸君の手を借りながらベンチにおさまると、春奈ちゃんがしんみりし
た空気を変えるために努めて明るい声で木暮くんに必殺技ができたことを発表した。
漫遊寺中で”イプシロン”が去り際に放ったボールを止めて見せたあの動きが「旋風陣
」という必殺技に昇華していた。
円堂「旋風陣か…。いい技だ!」
鬼道「あぁ、これからの戦略にも幅ができそうだ。」
円堂「よーし、みんな、木暮につづけ!この勢いでもっともっと強くなろうぜ!…俺
さ、サッカーやっててよかった。染岡とも出会えたし、こんなに仲間も増えた。
サッカーってやっぱおもしれぇ!って思った。だから、宇宙人にもサッカーは
楽しいって教えてやろうぜ。そうしたら、みんな平和にサッカーできるじゃな
いか。」
湊川「賛成っ!みんなで走って、笑いあえたらもう仲間だよね!」
笑顔で試合ができるようにまずは”イプシロン”のレベルに追いつかなくちゃ。それ
で、ギリギリのいい勝負をした後には「強かったね!」ってお互いに健闘を称えあっ
て、それから同じごはん、いや、お菓子を食べるの。これがおいしかった、とか、あ
れがよかった、なんて話しながらみんなの好きなもの、いいところを探していこう。
地球初、宇宙人のともだちができちゃうかも?
染岡「お前も、『楽しもう』ってよく言ってたよな。」
吹雪「ふふ、まぁね。」
雷門父「久々の雷門町では鋭気は十分に養えたかな?…尋ねるまでもなかったね。い
い顔をしている。では、そんな君たちにぴったりの計画をしようじゃないか。」
おちゃめにウィンクしてみせる夏未ちゃんのお父様。イナズマキャラバンの次の目
的地は大阪に決まったらしい。今回は、エイリア学園の後を追うような移動ルートと
は一転して、エイリア学園が利用しているであろう施設に乗り込むという強気な指令
だった。これまでは試合にやる気マンマンなエイリア学園に会いに行くしかできなか
ったけど、逆に試合やる気モードじゃないエイリア学園に会いに行けば、腰を据えて
の話もできるんじゃ?
一ノ瀬「今度は大阪かぁ。」
湊川「大阪…ロールケーキにチーズケーキと…」
塔子「アンリ、何しに大阪に行くかはちゃんと分かってるんだよな?」
土門「きいたか?大阪には敵のアジトがあるんだってよ。」
壁山「すごいっすね。乗り込んでこっちから攻撃をしかけるんすね!」
雷門のメンバーと話しながら大阪出発の合図を聞き、キャラバンに乗り込んでいく。
円堂くんがステップに足をかけたところで瞳子監督が円堂くんに話しかけた。話しか
けたというには、会話がつづくような問いの投げかけはなく、独り言のようにも聞こ
えた。
瞳子「円堂くん。河川敷でのあなたの言葉。なぜか頭に残っているの。サッカーは楽
しいもの。…あの人にもそれに気づいてほしい。」
寂しげな輪郭が描いた瞳子監督の横顔は、いつもの堂々としたかっこいい女性監督
のイメージとは大きく異なって見えた。