脅威の侵略者編
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学園艦の中はどこも似たような構造になっていて、自分が目的地に近づいているのか
遠ざかっているのかさえも分からなくなってきた。そんなときは地上に出るのが一番!
ってことで階段を上って外に出ました。ここ、サッカー場の応援席?アルミの長椅子が
囲む中央のサッカーコートでは雷門VS真・帝国学園の試合が行なわれていた。あら?私
呼ばれてないんだけど?実況をしてくれている角馬くんの声から察するに試合時間は残
り僅かみたい。私1時間近くも探索してたのね。この学園艦どれだけ広いのよ。そうい
えば、有人くんのチームメイトが真・帝国にいるんだっけ、さっき対面したとき影山さ
んが有人くんのお友だちについて不穏な空気だしてたけど大丈夫かな~。せっかく眺め
がいい場所に来たので試合を観戦することにした。あれ?真・帝国にいるの、さっき道
を教えてくれた親切なPenguinボーイじゃん。サッカー部だったんだ。ただ、やはり彼
は体調が悪そうで、心配になるほどの汗をかき、一歩踏み出す度に苦痛の表情を浮かべ
ていた。
佐久間「っはぁ。・・・っ皇帝ペンギン、1号!」
鬼道「やめろ!佐久間!!」
佐久間「ぐわぁぁぁぁぁ!!!!!」
怒りに身を紅く染めたペンギンが佐久間と呼ばれたPenguinボーイの足に噛みつく。
えっ痛そ。ペンギンの口の中見たことある?トゲの口内カーペットだよ!肉食ペンギン
こわ・・・。普段から魚食べるから肉食ではあるか。ペンギンからの噛まれ心地は存知あ
げないけれど、その必殺技はあまりにも肉体的負担が伴うことは明らかだ。
鬼道「もうやめろ。これ以上、その技は打つな!」
佐久間「やめるわけにはいかない。・・・くっ、あ゛ぁっ?!」
鬼道「何故分からない!サッカーが二度とできなくなるんだぞ?!」
佐久間「分からないだろうな、鬼道。俺はずっとうらやましかった。チカラを持ってる
お前は先に進んでいく。俺はどんなに努力しても追いつけない。同じフィール
ドを走っているのに、俺にはお前の世界は見えないんだ。」
佐久間「だが、皇帝ペンギン1号があればお前に追いつける。いや、追い越せる。お前
すら手の届かないレベルに辿りつけるんだ・・・!」
湊川「・・・有人くんには分からない世界だよね。」
あの場に私がいなくてよかったかもしれない。サッカーコート全体を俯瞰して見てい
るからこそ、彼らの話を冷静に聞くことができる。他人事でありながらも、どこか聞
き覚えのある話をじっと聞いていられなくって、私は再び学園艦の中に戻った。
しばらく艦内を彷徨い歩いていると、今までの景色とは異なる広々とした空間にでた。
その先には装丁の凝った扉があり、いかにもゲームのラスボスが控えてそうな雰囲気が
あった。誰かの話し声がする。おそるおそる進んでいくと奥詰まった部屋の中央には艦
内を見渡せるだけの大きなモニターがあり、その画面を鑑賞するための特等席に座って
話す影山さんと不動くんの姿があった。
不動「まさか、あれほどヤワだとは。使えねェ奴らだ、ねぇ?影山総帥。」
影山「・・・使えないのはお前だ。」
不動「は?」
影山「私は一流の選手を集めてこいと行ったはずだ。だが、お前の集めてきた選手はす
べて二流。お前自身含めてな。・・・おや、湊川くん、どうしたんだね、そんなと
ころで立ち尽くして。」
湊川「えっ。どうして気づいて・・・」
影山「怖がらせてしまったかな。すまないね。・・・君のことも私が直々に指導をしてあ
げようと考えたことがある。でも、私の手がける作品として君はふさわしくない。」
湊川「また、そんな他人を値踏みするような言い方。・・・有人くんたちから今まで影山
さんがどんなことをしていたか聞きました。おもちゃみたいに人を扱って、振り
回して、壊れたらすぐ捨てるんですか・・・。そうやって今まで何人の子どもたち
を犠牲にしてきたんですか。」
不動「へっ。所詮お前も二流以下ってことだよ。」
影山「ん?なんだ。まだいたのか、二流が。」
不動「・・・っ!」
影山さんのにらみに一瞬怯む不動くん。・・・が、すぐに影山さんは不動くんの存在を
無視して話し始めた。
影山「何やら君は思い違いをしているようだ。誤解をさせてしまったお詫びに、君くら
いの年頃の少女が欲しがるようなアクセサリーはいかがかね?」
影山さんは暗闇の中でほんのりと光を放つ紫水晶のついたネックレスをポケットから
出して見せた。水晶の中には、小宇宙のようなきらめきが閉じ込められ、その輝きに不
思議な引力でもあるかのように、つい目を奪われる。
湊川「・・・気持ち悪い。」
停泊しているとはいえ、1時間以上も波に揺られて動く船の中を縦横無尽に走り回っ
ていたツケが回ってきたのだろうか。突然、すごく気分が悪くなった。影山さんが何か
ボソボソと言っているが、正直それどころではない。
影山「・・・そうか、身体に合わないか。」
影山「どれ、勇敢にもここまで一人でやってきた君に敬意を表して、一ついいことを教
えてやろう。・・・君は私に似ている。」
不動「は?」
影山「どうやら鬼道が私のことを呼んでいるようだ。では、君がこの先どのような人生
を歩むかせいぜい楽しませてもらうこととしよう。」
影山さんはその場から立ち去ってしまった。後に残されたのは体調が悪くてうずくま
る私と影山さんに突き放された不動くん。その場で動けない私を心配してか不動くんが
声をかけてくれる。
不動「・・・おい、大丈夫かよ?」
湊川「うぇぇ・・・」
不動「人が親切にしてやってんのに失礼なヤツ・・・。あ?もしかしてコイツのせいか?こ
んなモン持っててももう何の役にも立たねぇな。」
不動くんは胸から下げていたお守りのようなものを投げ捨ててしまった。え、肌身離
さず着けるくらい大事なものだったのでは?フツーに船酔いによる体調不良だと思うん
だけど。石のせいで体調不良になるとかどこのコミック。呪いじゃん、怖いよ。弧を描
いて遠くの地面に着地したそれは衝突の反動で壊れてしまったらしい。
ドォン!
艦内が大きく音を立てて揺れる。びっくりして私は飛び上がるように立ち上がった。
部屋の中央を陣取るモニターには”Danger”の文字が赤く点滅しており、外のカメラの様
子を確認すると、いたるところで炎と黒煙があがっている。影山さんが真・帝国学園
の計画中止を決め、学園艦ごとなかったことにするつもりらしかった。
不動「あいつ・・・!俺たちごと消すつもりかよ。ちっ、さっさとズラかるか。おい、テ
メェ、帰り道は分かってんのか?」
湊川「それなら大丈夫!来るときにあめ玉落としながら来たから!ヘンゼルとグレーテ
ルみたいに!えっと・・・あれ?ない・・・?」
不動「食い物バラまいた2人がどうなったのか知らねェのかよ?」
先ほどの爆発で、学園艦が大きく揺れたせいで床に落としてきたはずのあめ玉はどこ
かに転がっていってしまったらしい。拝啓、みんなのところに絶対帰るって自信満々に
言った自分へ、その約束は果たせなさそうです。そして私のあめ玉、君と共に走った日
々を私は忘れないよ。ちゃんと食べてあげられなくてごめんね!・・・輸入品店で買った
レアなおこげ味のあめ玉。まだ1コしか食べてないのに。
不動「はぁ・・・。おい、ついて来な。とりあえず外に出るぞ。」
さすがに爆風と火事が襲ってくる艦内にいつまでも留まるわけにいかない。不動くん
の先導に従い、地上をめざす。地上に出ると有人くんと影山さんが対面しているところ
だった。有人くん一人?他のみんなは?
鬼道「佐久間をあんな目に遭わせて満足か?」
影山「満足?できるわけなかろう!常に勝利する最高のチームを作りあげるまではな!
・・・これまで私が手がけた最高の作品を教えてやろう!それは、鬼道、お前だ!」
その後、ひときわ大きな爆音が鳴り、辺り一面は煙に包まれた。消防車や消防隊のヘリ
が出動し、ようやく落ち着いた頃には影山さんの姿はどこにも見えなかった。
消防隊員による安否確認や警察の簡単な事情聴取を終え、雷門のみんなと合流した。
秋「湊川さん!!大丈夫だった?ケガはない?心配してたんだから!」
湊川「私は大丈夫だけど、あめ玉がっ・・・。うぅっ。」
土門「通常運転だな。大丈夫そうだ。」
佐久間「悪いな、鬼道。久しぶりだっていうのに握手もできない。」
鬼道「かまわない。」
佐久間「おかげで目が覚めたよ。でも、嬉しかった。一瞬でもお前の見てる世界が見え
たからな。」
佐久間「しばらく入院になるんだってさ。バカだよな、俺・・・。」
佐久間「なぁ、鬼道。元気になったらさ、またみんなでペンギン、見に行かないか。前
みたいに。」
鬼道「あぁ、行こう。」
佐久間「神戸に、新しく水族館ができたらしいんだ。今日、そこのチケットもらってさ。
・・・音と光の幻想的なアクアリウムもあるんだって、どんなのだろう。」
鬼道「神戸か。修学旅行みたいで楽しみだな。」
佐久間「ははっ。俺も思った。身体、治ったらまた、サッカー一緒に、やろうぜ。」
鬼道「あぁ、待ってる。」
鬼道「・・・さて、アンリ。お前、この大事なときに今までどこに行ってたんだ?こっ
ちはいろいろと大変だったんだぞ。」
湊川「え~と、偵察?」
鬼道「ありもしないスコーン目当てに走り回っていた、の間違いではなく?」
湊川「なんで知ってるの?!!!」
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不動「ふぅ。ここまで来りゃ大丈夫だろ。」
湊川「学校、なくなっちゃったね…。」
不動「別に帝国学園に愛着なんてねぇし、何も困らねぇけどな。」
湊川「クロテッドクリームのスコーン…。」
不動「あぁ?…あぁ~そういや、そんな理由でここまで引っ張ってきたんだっけか…。」
湊川「楽しみにしてたのに。」
不動「…あのなぁ、あの艦内にそんな小洒落たモン置いてると思うか?ねェよ、バァーカ。」
湊川「ないの?!!!!」
不動「分かりやすく落ち込むな…。ちょっと考えりゃ分かんだろうがよ。」
湊川「クロテッドクリームを知ってる人に悪い人はいないもん。」
不動「あっそ。…んじゃ、ま。事情聴取とかめんどうだし、俺は行くぜ。」
湊川「不動くん!道、案内してくれてありがとう!」
不動くんはこれ以上面倒ごとに巻き込まれたくないと言わんばかりに、雷門のみんな
が騒いでいるのとは逆の、人気がない方向へ歩き出した。最後にお礼を伝えると振り返
ることはしなかったがヒラヒラと手を振ってくれた。