脅威の侵略者編
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基山Side
気さくな友人のひとりである緑川の姿を見かけなくなったころ、エイリア石を
使って強化訓練を受けていたハズのジェミニストームが同年代の雷門イレブンに
敗れた、というウワサを聞いた。治兄さんが凱旋の準備といって近頃忙しくして
いたのはそのせいだったか。エイリア学園の施設は今秘密裏の作戦進行中でなか
なか外に出ることはできない。生活も大好きなサッカーのプレイさえも自由が失
われていく日々に窮屈さを感じ始めていた。しかし、父さんの指示に従いながら
も治兄さんは昔と変わらない治兄さんのままで、サッカーで強敵と戦えることに
ワクワクしているようだった。エイリア石で身体能力を増強して手に入れた仮初
めの強さについてはどう思っているのだろうか。どこまで父さんから話を聞いて
いるのか分からないけれど、ジェミニストームやイプシロンの存在意義は他の玉
を光らせる為の使い捨ての駒ようなものだった。何度も胸の内を相談しようとイ
プシロンの訓練後の治兄さんを訪ねたけれど、更衣室から聞こえてくるうめき声
に耐えきれず、踵を返してしまい、その後はなんとなく気まずくて治兄さんと話
す機会も少なくなってしまった。苦しい思いをしているのは治兄さんの方なのに、
俺が甘えるわけにはいかない。直接語りかけることはできなかったけれど、せめ
て治兄さんのサッカーをする姿が見たいと思い、イプシロンの試合を見に行くこ
とにした。最後に見たボールを追いかける治兄さんの笑顔は今も健在だろうか。
ジェミニストームを倒したという雷門の視察、という名目で俺は施設から外出
許可を得た。総理大臣に危害を加えた宇宙人に対抗する雷門イレブンは世間の注
目をあび、TVニュースでもよく取り上げられていた。その情報によると雷門イ
レブンはバスにのってエイリア学園を追いかけているらしい。治兄さんが宣戦布
告したのは京都の学校だっけ。雷門がいつ来るかは分からないけれど京都で待っ
ていればじきに来るだろう。そう日が立たないうちに中学生の一段を率いた雷マ
ークのついたバスが漫遊寺中に到着した。一団を眺めているとTVでは取り上げ
られていなかった少女が雷門の面々に囲まれて歩いているのが見えた。たしか北
海道での試合の時はいなかったはず、京都に来るまでの道中で新たに仲間に加わ
ったのだろう。一応建前とはいえ、雷門の視察に来たためあとで報告をしなけれ
ばならず、しばらく雷門を観察することにした。最近雷門に加わったであろう少
女について最初はただのマイペースな子だと思った。意味の分からないタイミン
グでケーキを食べ始めるし、みんながサッカーの練習をしているときも日傘をさ
して眺めているばかりで練習に加わる姿は見られなかった。しかし、夜になる
とその子はみんなが寝静まっているなか、1人でサッカーボールを蹴り始めた。
その姿は昼間の彼女からは想像できないくらい真剣そのもので、迷い人を導く
星のようでありながらも孤独なその瞬きはすぐに暗闇に溶け込んでしまいそうで
声を掛けることはできなかった。
雷門の観察を始めた次の日、ついにイプシロンが漫遊寺中にやってきた。彼女
は途中でベンチに下がってしまったが、必殺技を繰り返し発動し、ついには治兄
さんからゴールを奪うというMVPに匹敵するほどの功績をあげた。まだ短い期間
しか、それも一方的にしか彼女のことは知らないが、その水晶のような瞳は見る
たびに違う世界を映しているようで少し興味を持ってしまった。夜に1人でいた
ときの君は見間違いだったんだろうか。
基山「君たち、すごいね。宇宙人とサッカーしてるなんてさ。」
円堂「見てたんだ!漫遊寺の生徒?」
基山「ちがうよ。違うけど、見てた。」
円堂「そっか。もしかして俺たちのこと応援してくれてたのかな。」
基山「まぁね。俺、基山ヒロト。」
円堂「円堂守。雷門イレブンのキャプテンだ。」
基山「知ってるよ。フットボールフロンティアで優勝したんだよね。」
円堂「あぁ!…今日は負けちゃったみたいなものだけどさ。でも、今日の経験は
ムダにはならない!この悔しさは次の勝利に繋がるから。」
基山「そういえば、フットボールフロンティアで見たときよりもメンバーが増え
てるんだね。今日シュートを決めてた子とか。」
円堂「湊川のことか!最近雷門のメンバーに入ったんだ。アイツ、すっげーだろ!
湊川に振り回されることも何度かあったけど、湊川自身がサッカーを楽しんで
る。だから、湊川とやるサッカーは楽しいんだ!」
基山「いいなぁ。そういうの。」
円堂「お前も一緒にやろうぜ!ほら、パス!…おいおい、ちゃんと受けてくれよ。
ってあれ?」
基山「ただいま戻りました。」
吉良「偵察に行っていたんですって?どうでしたか、雷門の面々は。」
基山「・・・面白い人たちですね。でも、まだまだイプシロンの方が優勢なよう
です。」
吉良「そうですか。瞳子が雷門の生徒に限らず全国から有力な選手を募っている
ようですね。誰か気になる選手はいましたか。」
基山「・・・試合時間が短かったもので、あまり印象に残っていないです。
・・・では、失礼します。」
気になる選手といわれて浮かぶ人はいるけれど個人的な興味にすぎない。父さ
んに報告するには情報が少なすぎる。あとから考えてみれば彼女については名前
くらいしか分かっていない。もう少し彼女のことを調べてみる必要がある。自分
の中でそう結論づけて次の雷門偵察にいく予定を立てた。