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夢小説設定
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「…んー」
朝日は昇り、部屋の中に春の暖かい空気が漂う朝。
定刻通りにけたたましい音を放つ目覚まし時計が止まった。
夢の中で好物のモンブランを口に運んだ瞬間、至福の一時を邪魔する様に怒号が響き渡った。
「優貴っ!! お前いつまで寝てるんだよ!!」
椎名翼。
この家の長男にして一人っ子。
何故“西園寺”の性を名乗る私が居るのかと言うと…
この家に姉と一緒に居候させて貰っているからである。
「…ん~」
でも、私はどうしてもこのモンブランを食べきりたい…!
夢と頭で分かっていても、幸せな夢はそのまま続けて見たいものである。
―うん、モンブラン最高!
口に広がる甘みに、「もう一口…」なんて思っていたら…
「…そう。そんなに起きる気が無いんだったら…こうしてやるっ!」
夢の中のモンブランがグルグル…
―違う! 私が回ってるのか!!
気が付いた時には、ゴツン、と鈍い音を立てて壁にぶつかっていた。
「い、痛い…。――って! ウソッ!?もうこんな時間っ!?」
「だからさっきから俺がそう言ってただろ!?」
「うっそ!ああ!もう!着替えなきゃ!! 翼、着替えるから今すぐ出てって!!」
近くに転がっていた目覚まし時計を見てビックリ仰天!
自分でも驚く程脅威のスピードで起き上がり、部屋から翼を押し出した。
翼は、起してやった事の礼と苦労した自分に謝罪をな…とか、何か言っていた気がしたが…そんなのは後!
昨日の夜寝る直前に準備しておいたワイシャツ、スカート、セーター、靴下、ブレザーを着々と身に着けていった。
最後にシュッとネクタイを絞め、化粧台の鏡に映した自分を見ながらネクタイを叩いて気を引き締めた。
―何てったって、今日は転校初日だ!
「おばさん、ゴメンなさい!寝坊しちゃった!」
「大丈夫よ。優貴ちゃんの朝ご飯、今出来たから」
慌ててリビングに駆け込むと、朝食を片手に微笑む翼のお母さん。
そんなお母さんにお礼を言いながら、時間のロスを取り戻す為、慌てて目の前の朝食を書き込み始める。玄関から翼の急かす声が聞こえる。
口をモゴモゴさせながら返事を返すと、新聞を取って戻ってきたお姉ちゃんが呆れた様に注意する。
「そんな慌てて詰め込んじゃって…。お腹壊しても知らないわよ?」
「らっへ!ひぃひゃんふぁい!!」
「それは昨日早く寝なかった貴方が悪いのよ」
口いっぱいに詰め込んでいても私の言葉を聞き取れるなんて、流石、姉。
と言う所だが、今朝の私は急いでいるので姉との会話もそこそこにカバンを掴んだ。
そんな中、取ってきた新聞を広げながら用意されたコーヒーを優雅に口に運んだ。
―これこそ、本来の朝の一時なのであろう。
「それじゃ!行ってきます!」
「優貴、ちゃんと顔洗って、歯研いた?」
「やった!」
バタバタと慌ただしく玄関でクツを履いていると、リビングから顔を覗かせたお姉ちゃん。
そして、それに続き翼のお母さんが玄関口まで出て来てニッコリ天使の笑み。
「優貴ちゃん、忘れ物は無い?」
「えっと…、はい!大丈夫です!」
カバンを確認すると、お母さんにつられ私も満面の笑みで思わずピースした。
パタン…と、ゆっくり玄関のドアが閉まるさっきまでの慌ただしさとは打って変わって平穏な空気が流れ込んだ。
それと共にふぅと小さく溜め息を吐き、お姉ちゃんは隣で微笑む翼のお母さんに話し掛ける。
「本当にごめんなさいね、おばさん。無理言って、妹までこっちに住まわせちゃって…。」
「いいのよ、玲ちゃん。この年の女の子の面倒が見れるのは楽しいんだから。」
「それに、翼じゃ一緒に買い物も行ってくれないでしょ?」と笑うおばさんに、お姉ちゃんは「それもそうですね」と吹き出していたらしい。
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