寺光唯月
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ある日、私が近場を散策していると、公園で男の子がうずくまっているのが見えた
『…?どうしたんだろう…』
私は心配になって男の子に近づく
『…ねぇ、君大丈夫?』
私が男の子に声をかけると、にゃあ、と返事をしたのは、彼の膝でうずくまる子猫だった
『…子猫?』
男の子はバッと私を見上げると、子猫を撫でながら言った
「…この子、怪我してるみたいで…」
『え、そうなの?』
私はしゃがんで、子猫に優しく声をかけてから、子猫の体を確認する
「…?」
男の子は不思議そうに私を見ていた
『…あ、これか』
子猫の後ろ足には、痛々しい傷があって、私は顔をしかめる
『これは痛いわ…』
私はそう呟くと、ペットボトルに水を汲んできて、男の子にすり寄っている子猫に頬を緩ませながら、ハンカチを水で湿らせ、子猫に優しく声をかけてから、傷の部分を優しく拭いた
『…よし、あとは…』
私はハンカチの濡れてない部分を細長く破き、子猫の足に巻いた
『…うん、これで大丈夫なはず。よく頑張ったね~』
私がそう言いながら子猫の背を撫でると、子猫はごろごろと喉を鳴らす
「…あの、ありがとうございます」
男の子は子猫を抱いたまま、私にお礼を言う
『え?別にいいよ、私が放っておけなかっただけだし』
「…あの、お名前は?」
『私?私は江藤みのり。君は?』
「僕は、寺光唯月です」
『寺光くんか!いい名前だね』
私がそう微笑みかけると、彼は恥ずかしそうに目を伏せた
『…そういえばその子、寺光くんの飼い猫なの?』
「いえ…今日、たまたま通りかかったら、この子が鳴いていて…」
『そうだったんだ…ふふ、優しいんだね、寺光くんは』
「え?…そんなこと…」
『ふふ、だって、この子もこんなに懐いてるよ?まるで、ありがとう、寺光くん!って言ってるみたい』
そう言うと、彼は子猫に視線を落とし、微笑んだ
「…そうだったら、嬉しい、です…」
『絶対そうだって!ね!』
私が仔猫に問いかけると、子猫は答えるようににゃあと鳴いた
『ほら』
「…ふふ、なんだか不思議な人ですね」
『え、それって私のこと?』
寺光くんは頷く
『うーん…そんなこと初めて言われたなぁ…』
私が考え込んでいると、彼はクスッと笑った
「…それじゃあ、僕、そろそろ用事があるので…この子を…」
寺光くんがそう言いかけると、子猫は寺光くんの膝からぴょんと飛び降り、彼に向き直ると、にゃあ!と元気に鳴いたあと、茂みのなかに入っていった
寺光くんはそれを見て驚いていた
『…ふふ、動物って、人の感情に敏感だからね』
私はそう微笑みかけた
すると、ふって笑って、私の頭に手を伸ばした
『…?』
不思議に思いながらじっとそのままでいると、彼の手が私の髪をすっと撫でる
彼の手には、私の頭に落ちてきていたのか、桜の花があった
「…ついてた」
寺光くんはそう笑う
『…!ふふ、ありがとう』
それにつられて、私も笑った
その後、寺光くんは用事があるらしく、去っていった
翌日ー…
私が仕事に行こうと、その公園を通りかかると、声をかけられた
「…あっ…あの…」
『ん…?』
私が振り返ると、そこにいたのは昨日出会った寺光くんだった
『あれ、寺光くん?また猫が怪我してたの?』
私がそう問いかけると、寺光くんは首を横にふる
『じゃあ何で…?』
「…昨日、お礼、できなかったから…」
『え?あぁ…別にそんなこと気にしなくてもいいのに…』
寺光くんは律儀な子なんだな、と思った
『…あ、でも今から仕事なんだよね』
私がそう苦笑すると、寺光くんは慌ててポケットから何かを出して、私に差し出す
『…?あ、これ…ハンカチ?』
寺光くんは頷く
「…昨日、あの子の手当てのために、自分のハンカチ破ってたから…」
『…わざわざ買ってくれたの?』
彼は頷く
「…僕は、あんまり女の人の趣味とかわからないし、色々考えたけど…これがいいって、思ったから」
私が驚いていると、寺光くんは私の手を取ってハンカチをにぎらせると
「…じゃあ。お仕事、頑張ってください」
それだけ言って、走っていってしまった…
私は寺光くんが見えなくなるまで、彼を見つめていたが、ふとハンカチのことを思い出し、袋を開けてみた
そこには、白いレースの、花の模様がついた可愛いハンカチが入っていた
『…ふふ、ありがとう、寺光くん』
私は寺光くんが見えなくなったほうに、そう呟いて、ハンカチをしまい、仕事に向かった
ー…
「それが、お母さんとお父さんの馴れ初め?」
『うん、そうよ』
私と寺光くんは、あれから公園で会えば話す間柄になり、気が付いたら彼を好きになっていた
私の片想いなんだろうな、何て思っていた所に、寺光くん…唯月くんから告白されて、それから、翌年の春には、結婚式を上げた
その後すぐに彼の子を身ごもり、出産
彼は、仕事があるのにも関わらず、家事、育児共に協力してくれて、娘のこともとても可愛がってくれる
所謂親バカだ
そして、その娘が大分大きくなると、私と唯月くんの馴れ初めを聞きたいと言ってきたのだ
それを話し終わると、娘は嬉しそうに笑う
「じゃあ、その頃からお母さんはお父さんことが大好きだったんだね!」
『えぇ、そうよ。だってとっても素敵な人だもの。誰だって惚れちゃうわ』
「うわ、お母さんがのろけた!」
『ふふ、幸せの証拠よ』
そこへ、ガチャリと玄関のドアが開く音がした
「あ、お父さんかな?」
『きっとそうよ。お迎えに行ってあげなさい』
「はーい!」
娘は元気よく返事し、お父さん…唯月くんのもとへとかけていく
「…あれ、お父さん、それ…」
「しっ!」
なにやら玄関で唯月くんと娘が話し込んでいるようだ
少しすると、娘が唯月くんをつれてきた
「お母さんお母さん!お父さん帰ってきたよ!」
『えぇ、そうね。…お帰りなさい、唯月くん』
私がそう微笑みかけると、唯月くんも穏やかに笑う
そしてー…
「…これ」
『え?』
唯月くんが娘の後ろに隠していた花束を差し出す
花束の中には、〝結婚記念日おめでとう〟と書かれた小さな立て札がたてられていた
『…!これ…わざわざ買ってきてくれたの…?』
唯月くんは笑顔で頷く
「お父さん、結婚記念日の今日のために、色々準備してたんだって!…よかったね、お母さん」
二人の暖かな笑顔に、私は思わず涙した
それを見た唯月くんは、そっと私を抱き締めてくれた
娘は、空気を呼んだのか部屋に行くね!と言って出ていった
「…みのり」
『え…?』
名前を呼ばれて顔をあげると、頬に手を当てて優しく唇を奪われた
『んっ…』
唇を離すと、至近距離で唯月くんが笑う
「…結婚記念日、おめでとう。僕を好きになってくれて、ありがとう。…これからも、よろしく」
『…えぇ。私こそ…』
私がそう答えると、また唯月くんに引き寄せられ、唇をふさがれる
その感覚に、私は幸せを感じていたー…
結婚記念日
(私たちを出会わせてくれた、あの子猫には感謝しなきゃね)
『…?どうしたんだろう…』
私は心配になって男の子に近づく
『…ねぇ、君大丈夫?』
私が男の子に声をかけると、にゃあ、と返事をしたのは、彼の膝でうずくまる子猫だった
『…子猫?』
男の子はバッと私を見上げると、子猫を撫でながら言った
「…この子、怪我してるみたいで…」
『え、そうなの?』
私はしゃがんで、子猫に優しく声をかけてから、子猫の体を確認する
「…?」
男の子は不思議そうに私を見ていた
『…あ、これか』
子猫の後ろ足には、痛々しい傷があって、私は顔をしかめる
『これは痛いわ…』
私はそう呟くと、ペットボトルに水を汲んできて、男の子にすり寄っている子猫に頬を緩ませながら、ハンカチを水で湿らせ、子猫に優しく声をかけてから、傷の部分を優しく拭いた
『…よし、あとは…』
私はハンカチの濡れてない部分を細長く破き、子猫の足に巻いた
『…うん、これで大丈夫なはず。よく頑張ったね~』
私がそう言いながら子猫の背を撫でると、子猫はごろごろと喉を鳴らす
「…あの、ありがとうございます」
男の子は子猫を抱いたまま、私にお礼を言う
『え?別にいいよ、私が放っておけなかっただけだし』
「…あの、お名前は?」
『私?私は江藤みのり。君は?』
「僕は、寺光唯月です」
『寺光くんか!いい名前だね』
私がそう微笑みかけると、彼は恥ずかしそうに目を伏せた
『…そういえばその子、寺光くんの飼い猫なの?』
「いえ…今日、たまたま通りかかったら、この子が鳴いていて…」
『そうだったんだ…ふふ、優しいんだね、寺光くんは』
「え?…そんなこと…」
『ふふ、だって、この子もこんなに懐いてるよ?まるで、ありがとう、寺光くん!って言ってるみたい』
そう言うと、彼は子猫に視線を落とし、微笑んだ
「…そうだったら、嬉しい、です…」
『絶対そうだって!ね!』
私が仔猫に問いかけると、子猫は答えるようににゃあと鳴いた
『ほら』
「…ふふ、なんだか不思議な人ですね」
『え、それって私のこと?』
寺光くんは頷く
『うーん…そんなこと初めて言われたなぁ…』
私が考え込んでいると、彼はクスッと笑った
「…それじゃあ、僕、そろそろ用事があるので…この子を…」
寺光くんがそう言いかけると、子猫は寺光くんの膝からぴょんと飛び降り、彼に向き直ると、にゃあ!と元気に鳴いたあと、茂みのなかに入っていった
寺光くんはそれを見て驚いていた
『…ふふ、動物って、人の感情に敏感だからね』
私はそう微笑みかけた
すると、ふって笑って、私の頭に手を伸ばした
『…?』
不思議に思いながらじっとそのままでいると、彼の手が私の髪をすっと撫でる
彼の手には、私の頭に落ちてきていたのか、桜の花があった
「…ついてた」
寺光くんはそう笑う
『…!ふふ、ありがとう』
それにつられて、私も笑った
その後、寺光くんは用事があるらしく、去っていった
翌日ー…
私が仕事に行こうと、その公園を通りかかると、声をかけられた
「…あっ…あの…」
『ん…?』
私が振り返ると、そこにいたのは昨日出会った寺光くんだった
『あれ、寺光くん?また猫が怪我してたの?』
私がそう問いかけると、寺光くんは首を横にふる
『じゃあ何で…?』
「…昨日、お礼、できなかったから…」
『え?あぁ…別にそんなこと気にしなくてもいいのに…』
寺光くんは律儀な子なんだな、と思った
『…あ、でも今から仕事なんだよね』
私がそう苦笑すると、寺光くんは慌ててポケットから何かを出して、私に差し出す
『…?あ、これ…ハンカチ?』
寺光くんは頷く
「…昨日、あの子の手当てのために、自分のハンカチ破ってたから…」
『…わざわざ買ってくれたの?』
彼は頷く
「…僕は、あんまり女の人の趣味とかわからないし、色々考えたけど…これがいいって、思ったから」
私が驚いていると、寺光くんは私の手を取ってハンカチをにぎらせると
「…じゃあ。お仕事、頑張ってください」
それだけ言って、走っていってしまった…
私は寺光くんが見えなくなるまで、彼を見つめていたが、ふとハンカチのことを思い出し、袋を開けてみた
そこには、白いレースの、花の模様がついた可愛いハンカチが入っていた
『…ふふ、ありがとう、寺光くん』
私は寺光くんが見えなくなったほうに、そう呟いて、ハンカチをしまい、仕事に向かった
ー…
「それが、お母さんとお父さんの馴れ初め?」
『うん、そうよ』
私と寺光くんは、あれから公園で会えば話す間柄になり、気が付いたら彼を好きになっていた
私の片想いなんだろうな、何て思っていた所に、寺光くん…唯月くんから告白されて、それから、翌年の春には、結婚式を上げた
その後すぐに彼の子を身ごもり、出産
彼は、仕事があるのにも関わらず、家事、育児共に協力してくれて、娘のこともとても可愛がってくれる
所謂親バカだ
そして、その娘が大分大きくなると、私と唯月くんの馴れ初めを聞きたいと言ってきたのだ
それを話し終わると、娘は嬉しそうに笑う
「じゃあ、その頃からお母さんはお父さんことが大好きだったんだね!」
『えぇ、そうよ。だってとっても素敵な人だもの。誰だって惚れちゃうわ』
「うわ、お母さんがのろけた!」
『ふふ、幸せの証拠よ』
そこへ、ガチャリと玄関のドアが開く音がした
「あ、お父さんかな?」
『きっとそうよ。お迎えに行ってあげなさい』
「はーい!」
娘は元気よく返事し、お父さん…唯月くんのもとへとかけていく
「…あれ、お父さん、それ…」
「しっ!」
なにやら玄関で唯月くんと娘が話し込んでいるようだ
少しすると、娘が唯月くんをつれてきた
「お母さんお母さん!お父さん帰ってきたよ!」
『えぇ、そうね。…お帰りなさい、唯月くん』
私がそう微笑みかけると、唯月くんも穏やかに笑う
そしてー…
「…これ」
『え?』
唯月くんが娘の後ろに隠していた花束を差し出す
花束の中には、〝結婚記念日おめでとう〟と書かれた小さな立て札がたてられていた
『…!これ…わざわざ買ってきてくれたの…?』
唯月くんは笑顔で頷く
「お父さん、結婚記念日の今日のために、色々準備してたんだって!…よかったね、お母さん」
二人の暖かな笑顔に、私は思わず涙した
それを見た唯月くんは、そっと私を抱き締めてくれた
娘は、空気を呼んだのか部屋に行くね!と言って出ていった
「…みのり」
『え…?』
名前を呼ばれて顔をあげると、頬に手を当てて優しく唇を奪われた
『んっ…』
唇を離すと、至近距離で唯月くんが笑う
「…結婚記念日、おめでとう。僕を好きになってくれて、ありがとう。…これからも、よろしく」
『…えぇ。私こそ…』
私がそう答えると、また唯月くんに引き寄せられ、唇をふさがれる
その感覚に、私は幸せを感じていたー…
結婚記念日
(私たちを出会わせてくれた、あの子猫には感謝しなきゃね)
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