第6話『惹かれ合う二人』
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翌日、私は仕事だったのだが…
朝起きて、いつも通りに朝食を作ってお姉ちゃんを待つけど、どれだけ待っても起きてこない
『…どうしたんだろう…』
心配になった私は、お姉ちゃんの部屋を尋ねた
こんこん
『お姉ちゃん?私、みのりだけど…大丈夫?』
しかし、部屋からは返事は返ってこない
『開けるよ…?』
そう前置きしてからそっとお姉ちゃんの部屋の扉を開けると…
『…!お姉ちゃん…?』
お姉ちゃんはまだベッドで横になっており、なんだか様子がおかしい…
私はお姉ちゃんのベッドまで行き、お姉ちゃんの額に手を当てると…
『っ!!すごい熱…!』
お姉ちゃんの額はとても熱く、頬も熱を持っていた
「…あれ、みのり…?」
お姉ちゃんが目を覚ました
『お姉ちゃん…大丈夫?すごい熱だけど…』
「…たぶん、ただの風邪よ。私は大丈夫だから、貴女はお仕事でしょう?」
『何言ってるの!今日は休むよ。お姉ちゃんが心配だし…』
「え、大丈夫なの?」
『何とかする。…だから、お姉ちゃんは風邪を治すことだけ考えて。私、ちょっと連絡してくるね』
そう告げると、お姉ちゃんは頷いた
私はお姉ちゃんの部屋を出て、会社に電話をかける
『…あ、もしもし、お疲れ様です、江藤です。実は…』
私がお姉ちゃんが熱を出していることを伝え、休ませてほしいとお願いすると、会社の人は承諾してくれた
『ありがとうございます。それでは、失礼します。…よし』
休みがもらえたことに安堵すると、私は早速お姉ちゃんのために動き始めた
『えっと…薬と冷えピタと、あとゼリーとシャーベット…あ、スポドリも買っとこう』
まずは看病の道具を揃えるために薬局に来た
必要になるだろう物を全部かごに入れると、結構重かった…
レジを済ませ、重い荷物を持って自宅まで向かう
『ただいまー』
声をかけて自宅に入り、手洗いうがいを済ませると、お姉ちゃんの部屋に荷物を持っていった
お姉ちゃんは私が部屋に入ったことに気づくと、目を開けてこちらを見る
「みのり…?」
『あ、起こしちゃった?ごめんね、今買い物済ませてきたから』
荷物をベッド脇に置き、私も傍に座る
ガサガサとビニール袋からスポドリを出し、お姉ちゃんに差し出す
『はい、これ飲んで。大分汗かいてるから、水分取らないと』
「ありがとう…」
お姉ちゃんはゆっくり半身を起こし、スポドリを開けて飲んだ
『それから、はい、シャーベット』
「…これは…」
『こういうのなら、食べられるでしょ?』
お姉ちゃんは頷く
『良かった。はい、どうぞ』
ついてきたスプーンと、シャーベットをお姉ちゃんに渡す
お姉ちゃんはゆっくりとシャーベットをすくい、食べた
「冷たくて美味しい…」
『良かった。…額、ごめんね』
私はそう言って、ハンカチでお姉ちゃんの額の汗を拭くと、冷えピタを貼った
お姉ちゃんが食べ終わったタイミングで、薬を差し出す
お姉ちゃんは薬と飲むと言った
「ごめんね…迷惑かけて」
『ううん、こんなの迷惑じゃないよ。ほら、そんな顔してないで、横になって。薬が効いてきたら、眠れるはずだから』
「うん…」
お姉ちゃんは目を閉じた
それからどれだけたっただろう…
私も、いつの間にかお姉ちゃんのベッドに寄りかかって寝てしまっていたようで、インターホンの音で目が覚めた
『…誰だろう』
私はインターホンのモニターまで向かうと、覗き込む
そこには、唯月が立ってて…
『えっ、唯月くん!?』
私は慌てて通話ボタンを押す
『唯月くん、どうしたの?』
私がそう声をかけると、モニター越しに目があって…
「…風邪引いたって、聞いたから…」
『え…?』
私はとりあえず唯月くんを家にあげるため、ドアを開けた
今度はしっかりと私と唯月くんの目があって、唯月くんは私の姿を確認すると、目を丸めた
『とりあえず、入って?』
「…うん」
『…はい、お茶』
「ありがとう…」
リビングの椅子に座る唯月くんに、コップに入れた冷たい麦茶を渡す
唯月くんは、持ってきていた袋からアイスを取り出して、私に差し出す
「これ…」
『…え、もらってもいいの?』
唯月くんは頷く
『ありがとう…それで、唯月くんは、何でわざわざ家まできたの?』
アイスを受け取って、唯月くんにたずねる
「…夜叉丸さんから、みのりが風邪引いたって、聞いたから…」
唯月くんは心配そうに私を見つめる
『…あ、そっか…』
わざわざ心配して、来てくれたんだ…
『…でもね、ちょっと言いにくいんだけど…』
「?何…?」
『えっと…風邪を引いたのは、私じゃなくて、私のお姉ちゃんで…』
そう言うと、唯月くんの目が丸くなって、安心したように顔を綻ばせる
「…良かった。貴女が、苦しんでるんじゃなくて…」
本当に心配してくれていたらしく、そう呟くと、唯月くんの肩から力が抜けた
『うーん…ちゃんと、会社の人にはお姉ちゃんが風邪でって言ったのになぁ…』
私が考え込むと、唯月くんがふわりと笑う
「…たぶん、その人から夜叉丸さんに伝わるまでの過程で、どこかで聞き間違いがあったんじゃないかな」
『なるほど…』
「…そういえば、お姉さんの様子は?」
唯月くんの瞳が、また心配の色を帯びる
私の家族のことまで心配してくれるなんて…やっぱり、唯月くんは優しいな
『お姉ちゃんなら、今は寝てるよ。薬を飲ませたから、たぶんじきに熱は引くと思う』
「そっか…」
唯月くんは、それを聞いて微笑む
「…みのりは、優しいね」
『え…?』
どういう意味だろう…そう思って首を傾げる
「だって…お姉さんのために、仕事を休んで看病して…偉いと思う」
唯月くんが余りにも優しく笑うから、私は恥ずかしくなって、視線を反らす
『…そうかな』
「うん。僕は、そう思うよ」
そこで、唯月くんの額に汗が滲んでいることに気付いた
『…唯月くん、ちょっとごめんね』
さっきお姉ちゃんの額を拭いた感覚で、唯月くんの額の汗も拭う
すると、唯月くんがぱっと顔を赤くしたから、慌てて離れる
『あ、ご、ごめんなさい!つい、お姉ちゃんの汗を拭いたときの感覚で、唯月くんにも…』
私は気まずくなって俯く
「…ううん、ありがとう」
その唯月くんの声に顔をあげると、彼は嬉しそうに笑っていた
唯月side
今日はラジオの収録で、仕事の待ち合わせ場所に向かう
その途中で、夜叉丸さんから連絡が入った
《実は、みのりちゃんが風邪引いちゃったみたいなの…。だから、今日はA&Rが不在よ。各自自分達でしっかり時間確認してちょうだいね》
「…はい」
「(…みのりが、風邪…)」
僕は、心配になった
彼女は、人一倍努力家で、頑張り屋だから…
もし、僕のいないところで、みのりが苦しんでたら…そう思うと、胸が心配で張り裂けそうになる
「(…ちゃんと、周りを頼ってほしい。…でも、一番みのりから頼って欲しいのは…他の誰でもない、僕自身。僕がいないところで、みのりが泣くなんて…嫌だ)」
僕は、ラジオの収録が終わると、以前行った彼女の家へと急ぐ
途中で、アイス買った
彼女と一緒に食べられるように、2つ
そういえば、お姉さんもいたな…
「(…もし、お姉さんがみのりの看病のためにいたら、僕のをあげよう)」
そう決めて、彼女の家までの道のりを走った
家の前まで着くと、深呼吸をして、息を整えてから、インターホンを鳴らす
応答したのは、彼女自身だった
「(…良かった。思ったほど、重症では、ないみたい)」
『唯月くん、どうしたの?』
みのりのその声に、インターホンのカメラをじっと見つめて言う
「…風邪引いたって、聞いたから…」
『え…?』
すると、不意にドアが開いた
出てきた彼女は、いつもよりラフな格好で…元気そうな姿を確認すると、僕は少し息をつく
『とりあえず、入って?』
「…うん」
『…はい、お茶』
「ありがとう…」
リビングの椅子に座る僕に、コップに入れた冷たい麦茶を渡してくれた彼女は、僕の隣のイスに腰掛けた
そんな彼女に、溶けるといけないと思って、持ってきていた袋からアイスを取り出して、差し出す
「これ…」
『…え、もらってもいいの?』
僕は頷く
『ありがとう…それで、唯月くんは、何でわざわざ家まできたの?』
アイスを受け取って、視線はまだアイスを見つめたままの彼女は、僕にたずねる
「…夜叉丸さんから、みのりが風邪引いたって、聞いたから…」
僕は、眉を下げてみのりを見つめる
『…あ、そっか…』
何かに納得した様子の彼女は、そのあと苦笑すると言う
『…でもね、ちょっと言いにくいんだけど…』
「?何…?」
『えっと…風邪を引いたのは、私じゃなくて、私のお姉ちゃんで…』
みのりのその言葉に、やっと心から落ち着く。
「…良かった。貴女が、苦しんでるんじゃなくて…」
知らない間に余程肩に力が入っていたのか、そう呟いたら自然と肩から力が抜けた
『うーん…ちゃんと、会社の人にはお姉ちゃんが風邪でって言ったのになぁ…』
そう言って考え込む彼女に、僕は言う
「…たぶん、その人から夜叉丸さんに伝わるまでの過程で、どこかで聞き間違いがあったんじゃないかな」
『なるほど…』
「…そういえば、お姉さんの様子は?」
「(みのりが苦しくないのは良かったけど…きっと、お姉さんのために心を痛めてるはず…)」
そう思うと、また心配になった
『お姉ちゃんなら、今は寝てるよ。薬を飲ませたから、たぶんじきに熱は引くと思う』
「そっか…」
彼女の言葉からは、お姉さんに対する気遣いが感じられて…
「(あなたは…本当に…)」
僕は気付いたら微笑んでいた
「…みのりは、優しいね」
『え…?』
言葉の意図がわからないのか、首を傾げる彼女
「だって…お姉さんのために、仕事を休んで看病して…偉いと思う」
僕が思ったことを告げると、みのりは恥ずかしそうに視線を反らす
『…そうかな』
「うん。僕は、そう思うよ」
そこで、みのりは何かに気付いたのか、僕に言う
『…唯月くん、ちょっとごめんね』
あまりに自然な動きで額の汗を拭われて、僕は顔が赤くなるのを感じる
それを見た彼女は、慌てて僕から離れた
『あ、ご、ごめんなさい!つい、お姉ちゃんの汗を拭いたときの感覚で、唯月くんにも…』
「(…それって、僕には家族と同じくらい、心を許してくれてるってこと…?)」
恥ずかしそうに目を伏せる彼女に、どうしようもなく愛おしい気持ちが芽生える
「…ううん、ありがとう」
今すぐにでも抱き締めてしまいない気持ちをこらえて、僕がそう呟くと、彼女は顔をあげる
そして、僕の顔を見ると、ふわりと笑ったのだったー…
6-1.距離が縮まる
(今は、まだ…我慢しないと…)
朝起きて、いつも通りに朝食を作ってお姉ちゃんを待つけど、どれだけ待っても起きてこない
『…どうしたんだろう…』
心配になった私は、お姉ちゃんの部屋を尋ねた
こんこん
『お姉ちゃん?私、みのりだけど…大丈夫?』
しかし、部屋からは返事は返ってこない
『開けるよ…?』
そう前置きしてからそっとお姉ちゃんの部屋の扉を開けると…
『…!お姉ちゃん…?』
お姉ちゃんはまだベッドで横になっており、なんだか様子がおかしい…
私はお姉ちゃんのベッドまで行き、お姉ちゃんの額に手を当てると…
『っ!!すごい熱…!』
お姉ちゃんの額はとても熱く、頬も熱を持っていた
「…あれ、みのり…?」
お姉ちゃんが目を覚ました
『お姉ちゃん…大丈夫?すごい熱だけど…』
「…たぶん、ただの風邪よ。私は大丈夫だから、貴女はお仕事でしょう?」
『何言ってるの!今日は休むよ。お姉ちゃんが心配だし…』
「え、大丈夫なの?」
『何とかする。…だから、お姉ちゃんは風邪を治すことだけ考えて。私、ちょっと連絡してくるね』
そう告げると、お姉ちゃんは頷いた
私はお姉ちゃんの部屋を出て、会社に電話をかける
『…あ、もしもし、お疲れ様です、江藤です。実は…』
私がお姉ちゃんが熱を出していることを伝え、休ませてほしいとお願いすると、会社の人は承諾してくれた
『ありがとうございます。それでは、失礼します。…よし』
休みがもらえたことに安堵すると、私は早速お姉ちゃんのために動き始めた
『えっと…薬と冷えピタと、あとゼリーとシャーベット…あ、スポドリも買っとこう』
まずは看病の道具を揃えるために薬局に来た
必要になるだろう物を全部かごに入れると、結構重かった…
レジを済ませ、重い荷物を持って自宅まで向かう
『ただいまー』
声をかけて自宅に入り、手洗いうがいを済ませると、お姉ちゃんの部屋に荷物を持っていった
お姉ちゃんは私が部屋に入ったことに気づくと、目を開けてこちらを見る
「みのり…?」
『あ、起こしちゃった?ごめんね、今買い物済ませてきたから』
荷物をベッド脇に置き、私も傍に座る
ガサガサとビニール袋からスポドリを出し、お姉ちゃんに差し出す
『はい、これ飲んで。大分汗かいてるから、水分取らないと』
「ありがとう…」
お姉ちゃんはゆっくり半身を起こし、スポドリを開けて飲んだ
『それから、はい、シャーベット』
「…これは…」
『こういうのなら、食べられるでしょ?』
お姉ちゃんは頷く
『良かった。はい、どうぞ』
ついてきたスプーンと、シャーベットをお姉ちゃんに渡す
お姉ちゃんはゆっくりとシャーベットをすくい、食べた
「冷たくて美味しい…」
『良かった。…額、ごめんね』
私はそう言って、ハンカチでお姉ちゃんの額の汗を拭くと、冷えピタを貼った
お姉ちゃんが食べ終わったタイミングで、薬を差し出す
お姉ちゃんは薬と飲むと言った
「ごめんね…迷惑かけて」
『ううん、こんなの迷惑じゃないよ。ほら、そんな顔してないで、横になって。薬が効いてきたら、眠れるはずだから』
「うん…」
お姉ちゃんは目を閉じた
それからどれだけたっただろう…
私も、いつの間にかお姉ちゃんのベッドに寄りかかって寝てしまっていたようで、インターホンの音で目が覚めた
『…誰だろう』
私はインターホンのモニターまで向かうと、覗き込む
そこには、唯月が立ってて…
『えっ、唯月くん!?』
私は慌てて通話ボタンを押す
『唯月くん、どうしたの?』
私がそう声をかけると、モニター越しに目があって…
「…風邪引いたって、聞いたから…」
『え…?』
私はとりあえず唯月くんを家にあげるため、ドアを開けた
今度はしっかりと私と唯月くんの目があって、唯月くんは私の姿を確認すると、目を丸めた
『とりあえず、入って?』
「…うん」
『…はい、お茶』
「ありがとう…」
リビングの椅子に座る唯月くんに、コップに入れた冷たい麦茶を渡す
唯月くんは、持ってきていた袋からアイスを取り出して、私に差し出す
「これ…」
『…え、もらってもいいの?』
唯月くんは頷く
『ありがとう…それで、唯月くんは、何でわざわざ家まできたの?』
アイスを受け取って、唯月くんにたずねる
「…夜叉丸さんから、みのりが風邪引いたって、聞いたから…」
唯月くんは心配そうに私を見つめる
『…あ、そっか…』
わざわざ心配して、来てくれたんだ…
『…でもね、ちょっと言いにくいんだけど…』
「?何…?」
『えっと…風邪を引いたのは、私じゃなくて、私のお姉ちゃんで…』
そう言うと、唯月くんの目が丸くなって、安心したように顔を綻ばせる
「…良かった。貴女が、苦しんでるんじゃなくて…」
本当に心配してくれていたらしく、そう呟くと、唯月くんの肩から力が抜けた
『うーん…ちゃんと、会社の人にはお姉ちゃんが風邪でって言ったのになぁ…』
私が考え込むと、唯月くんがふわりと笑う
「…たぶん、その人から夜叉丸さんに伝わるまでの過程で、どこかで聞き間違いがあったんじゃないかな」
『なるほど…』
「…そういえば、お姉さんの様子は?」
唯月くんの瞳が、また心配の色を帯びる
私の家族のことまで心配してくれるなんて…やっぱり、唯月くんは優しいな
『お姉ちゃんなら、今は寝てるよ。薬を飲ませたから、たぶんじきに熱は引くと思う』
「そっか…」
唯月くんは、それを聞いて微笑む
「…みのりは、優しいね」
『え…?』
どういう意味だろう…そう思って首を傾げる
「だって…お姉さんのために、仕事を休んで看病して…偉いと思う」
唯月くんが余りにも優しく笑うから、私は恥ずかしくなって、視線を反らす
『…そうかな』
「うん。僕は、そう思うよ」
そこで、唯月くんの額に汗が滲んでいることに気付いた
『…唯月くん、ちょっとごめんね』
さっきお姉ちゃんの額を拭いた感覚で、唯月くんの額の汗も拭う
すると、唯月くんがぱっと顔を赤くしたから、慌てて離れる
『あ、ご、ごめんなさい!つい、お姉ちゃんの汗を拭いたときの感覚で、唯月くんにも…』
私は気まずくなって俯く
「…ううん、ありがとう」
その唯月くんの声に顔をあげると、彼は嬉しそうに笑っていた
唯月side
今日はラジオの収録で、仕事の待ち合わせ場所に向かう
その途中で、夜叉丸さんから連絡が入った
《実は、みのりちゃんが風邪引いちゃったみたいなの…。だから、今日はA&Rが不在よ。各自自分達でしっかり時間確認してちょうだいね》
「…はい」
「(…みのりが、風邪…)」
僕は、心配になった
彼女は、人一倍努力家で、頑張り屋だから…
もし、僕のいないところで、みのりが苦しんでたら…そう思うと、胸が心配で張り裂けそうになる
「(…ちゃんと、周りを頼ってほしい。…でも、一番みのりから頼って欲しいのは…他の誰でもない、僕自身。僕がいないところで、みのりが泣くなんて…嫌だ)」
僕は、ラジオの収録が終わると、以前行った彼女の家へと急ぐ
途中で、アイス買った
彼女と一緒に食べられるように、2つ
そういえば、お姉さんもいたな…
「(…もし、お姉さんがみのりの看病のためにいたら、僕のをあげよう)」
そう決めて、彼女の家までの道のりを走った
家の前まで着くと、深呼吸をして、息を整えてから、インターホンを鳴らす
応答したのは、彼女自身だった
「(…良かった。思ったほど、重症では、ないみたい)」
『唯月くん、どうしたの?』
みのりのその声に、インターホンのカメラをじっと見つめて言う
「…風邪引いたって、聞いたから…」
『え…?』
すると、不意にドアが開いた
出てきた彼女は、いつもよりラフな格好で…元気そうな姿を確認すると、僕は少し息をつく
『とりあえず、入って?』
「…うん」
『…はい、お茶』
「ありがとう…」
リビングの椅子に座る僕に、コップに入れた冷たい麦茶を渡してくれた彼女は、僕の隣のイスに腰掛けた
そんな彼女に、溶けるといけないと思って、持ってきていた袋からアイスを取り出して、差し出す
「これ…」
『…え、もらってもいいの?』
僕は頷く
『ありがとう…それで、唯月くんは、何でわざわざ家まできたの?』
アイスを受け取って、視線はまだアイスを見つめたままの彼女は、僕にたずねる
「…夜叉丸さんから、みのりが風邪引いたって、聞いたから…」
僕は、眉を下げてみのりを見つめる
『…あ、そっか…』
何かに納得した様子の彼女は、そのあと苦笑すると言う
『…でもね、ちょっと言いにくいんだけど…』
「?何…?」
『えっと…風邪を引いたのは、私じゃなくて、私のお姉ちゃんで…』
みのりのその言葉に、やっと心から落ち着く。
「…良かった。貴女が、苦しんでるんじゃなくて…」
知らない間に余程肩に力が入っていたのか、そう呟いたら自然と肩から力が抜けた
『うーん…ちゃんと、会社の人にはお姉ちゃんが風邪でって言ったのになぁ…』
そう言って考え込む彼女に、僕は言う
「…たぶん、その人から夜叉丸さんに伝わるまでの過程で、どこかで聞き間違いがあったんじゃないかな」
『なるほど…』
「…そういえば、お姉さんの様子は?」
「(みのりが苦しくないのは良かったけど…きっと、お姉さんのために心を痛めてるはず…)」
そう思うと、また心配になった
『お姉ちゃんなら、今は寝てるよ。薬を飲ませたから、たぶんじきに熱は引くと思う』
「そっか…」
彼女の言葉からは、お姉さんに対する気遣いが感じられて…
「(あなたは…本当に…)」
僕は気付いたら微笑んでいた
「…みのりは、優しいね」
『え…?』
言葉の意図がわからないのか、首を傾げる彼女
「だって…お姉さんのために、仕事を休んで看病して…偉いと思う」
僕が思ったことを告げると、みのりは恥ずかしそうに視線を反らす
『…そうかな』
「うん。僕は、そう思うよ」
そこで、みのりは何かに気付いたのか、僕に言う
『…唯月くん、ちょっとごめんね』
あまりに自然な動きで額の汗を拭われて、僕は顔が赤くなるのを感じる
それを見た彼女は、慌てて僕から離れた
『あ、ご、ごめんなさい!つい、お姉ちゃんの汗を拭いたときの感覚で、唯月くんにも…』
「(…それって、僕には家族と同じくらい、心を許してくれてるってこと…?)」
恥ずかしそうに目を伏せる彼女に、どうしようもなく愛おしい気持ちが芽生える
「…ううん、ありがとう」
今すぐにでも抱き締めてしまいない気持ちをこらえて、僕がそう呟くと、彼女は顔をあげる
そして、僕の顔を見ると、ふわりと笑ったのだったー…
6-1.距離が縮まる
(今は、まだ…我慢しないと…)