スタジオについて車から降りると、私達の車の後ろにキタコレの車が止まり、２人が降りてきた


『…』


私がその様子をぼーっと見ていると、唯月が声をかけてきた


「…みのり？行くよ…？」


『あ、はい！』


私は慌てて４人に着いていった





「おはようございます！」


「おはようございます」


「おはよーございまっす！」


「おはようございます」


『お、おはようございます…！』


「お、来たね」


私はスタッフの方に自己紹介をして名刺を渡した


「江藤みのりちゃんね、よろしく」


『はい！よろしくお願いします！』


「初仕事がKiLLER KiNGかぁ、いいね！頑張ってよ！」


『は、はい！ありがとうございます！』


スタッフさんの暖かい言葉に、私は笑顔で頷いた


「それじゃあさっそく録っていこうか！」


「お願いします！」


まず明謙くんがブースに入った


「…みのり」


『え？』


振り向くと、唯月が椅子を指差して言う


「…座ろう？」


『あ、はい』


私と唯月は、既に座っている、殿さんと遙日の横に座った


…私が、遙日と唯月に挟まれる形で…


私は、ドキドキと脈を打つ鼓動を抑え、ブースの明謙くんに視線を向ける


明謙くんは、凄く楽しそうに歌っていて…


見ている私まで、笑顔になった


明謙くんが録り終わると、次は遙日くん


遙日くんも、明謙くんに負けず劣らず楽しそうで…


なんだか微笑ましくなる


「OK、お疲れ！」


終わった遙日くんが出てくると、唯月くんが私を見た


『…？唯月くん？』


「…見てて」


穏やかに笑ってそう言うと、遙日くんとハイタッチして、唯月くんはブースに入る


「それじゃあ行ってみようか！」


「はい、お願いします」


唯月くんは、私をちらりと見ると微笑んで、曲が流れ始めると真剣な表情になった


『…凄い』


いつもの穏やかに笑う唯月くんとは違い、彼の表情は凄く真剣で…


私は気付けば唯月くんに釘付けになっていた





「…うわ、みのり、ゆづに夢中になってる…」


「まぁ、今日のゆっちーいつもと全然違うし…もしかして、みのりちゃんがいるからかな？」


「うん、だと思う…」


そんな遙日と明謙くんの会話は、私の耳には入ってこなかった


「…うん、OK！唯月くん、今日は調子いいみたいだね！」


「…ありがとうございます」


スタッフさんに褒められて、少し嬉しそうな唯月くん


唯月くんが出てくるのと同時に、殿さんが入った


「…どうだった？」


唯月くんは、まっすぐに私のところまで来ると、かがんで私の顔を覗き込みながら問いかけてくる


『はい、凄く素敵でした…！』


私が笑顔でそう答えると、唯月は嬉しそうに目を細める


「…ありがとう」


私の頭をぽんぽんと撫でて、そう言った


そして、殿さんの収録も無事終わり、ハモりも録り終わったところで、今日のレコーディングは終わった




「んー！終わったぁ！」


遙日が伸びをしながら言う


『お疲れ様です。みなさんとても素敵でした！』


そんな遙日に、私がそう言うと、四人はキョトンとした顔をして私を見ていた


『…？どうかしましたか？』


私が首をかしげると、遙日が慌てて言う


「…あ、何でもない、なんでもないから！」


『そうですか？』


まだ少し様子がおかしかったけど、私は気にしないことにした



3-3.普段とのギャップ

(唯月くんのあんな表情、初めて見た…)