第2話『仕事、決まる』
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『…んー!』
朝、雀の鳴き声で目が覚めた
『ふわぁ…』
あくびをしながら時計を見ると、大分早くて、つばさお姉ちゃんはまだ起きてなかった
だったら、心配かけちゃったお詫びに、今日は私が朝御飯を作ろうと思った
そう決めれば後は動くだけ
私はキッチンに入り、冷蔵庫の中身を確認すると、朝御飯を作り始める
『…あ、せっかくだから、お姉ちゃんのお弁当も作っとこう』
キッチンは片付いていて、どこに何があるのかがよくわかった
しばらく調理を進めていると…
「…ふわぁ…」
お姉ちゃんが起きてきたらしい
「…え、みのり?嘘、夢…?」
お姉ちゃんがあっけにとられているので
『夢じゃないよ、つばさお姉ちゃん!』
そう言って微笑むと、つばさお姉ちゃんは泣き出してしまった
『え!?つばさお姉ちゃん!?どっか痛いところでも…』
「ううん…違うの。貴女が元に戻ったのが嬉しくて…」
『お姉ちゃん…』
私は昨日唯月にやってもらったように、お姉ちゃんの頭を撫でた
すると、お姉ちゃんは笑ってくれた
『…さ、もうすぐできるから、椅子に、座ってて』
「ええ」
つばさお姉ちゃんは素直に頷く
『…よし、できた』
お弁当も詰め終わったし…うん、完璧!
私がお皿をテーブルに並べていると、お姉ちゃんが目を輝かせた
「すごい…!」
『えへへ、頑張りました。あ、あと、これお姉ちゃんのお弁当ね!』
「え!?私のお弁当まで!?」
『うん!』
素直に頷くと、お姉ちゃんは目を細め、呟いた
「何時のまにここまで…でも、みのりはいいお嫁さんになれるわね」
『お姉ちゃんだってそうだよ?』
当たり前だと首をかしげると、お姉ちゃんは笑った
「…さ、食べましょう!いただきます」
『いただきます!』
ー…
そのあと、お姉ちゃんが仕事に出掛けたあと、私は冷蔵庫の中を確認して、買い物に出かけることにした
お姉ちゃんからは、地図と私のらしいスマホを渡されたから、今度は大丈夫!…な、はず
地図を見ながらスーパーへ向かう
『…あ、ここだ』
案外すぐついたので、中に入って食材を吟味
『…うーん…お肉かお魚か…どうしよう…』
私が足りないものを揃えて、今日のメインディッシュに悩んでいると…
「…ねぇ」
『…え、?』
誰かに話しかけられた気がしたので振り返ると、そこには…
「これ、落としてたよ」
『…あ、ハンカチ…はい、すみませんわざわざ…』
まさかの是国竜持がいたのである…
私がおどおどとそれを受けとると、彼はそんな私を見て目を細める
「…ねぇ、今日のメインに悩んでたみたいだけど…ちゃんとそれで何を作るかって決めてるんだよね?」
『え…?はい、勿論です』
「へえ?じゃあ言ってみてよ」
そういわれ、私は首をかしげながら言う
『お肉の場合は、シチューかロールキャベツ、お魚の場合は、焼き魚かお刺身にしようと思ってます』
「ふーん、なるほどね…」
『…?』
竜持はしばらく考える仕草をしたあと、言った
「…ふふ、キミ、いい奥さんになるかもね」
『えっ!?』
いきなり唐突にそういわれ、私は固まる
『…あ、そうかお世辞か…』
…が、竜持がごく一般人にこんなこと言うはずない、と思って考えた結果のお世辞だと思ったら、溜め息が出てしまった
「ん?何ため息ついてるの?」
『あ、いえ、何も…それじゃあ、失礼しますね』
私はいたたまれなくなって、ロールキャベツにしようとお肉をかごの中にいれるとそそくさと退散した
「…ふーん?」
それを見て、竜持が笑ってたなんて、私は知らなかった
『…はぁ、緊張した…』
というか、キャラとの遭遇率高くないか…?
そんなことを思いながら、レジを済ませ、スーパーを出る
『…日が高いな…』
空で輝く太陽を見上げた時
「…あ、いたいた!おーい!ゆづ!明謙!」
『…え?この声って…』
耳をすまそうとしたとき
「やっほ」
『ひゃっ…!?』
耳元で囁かれたため、私は思わず声をあげてしまう
「こら、ハル」
「ご、ごめんって!」
私が恐る恐る後ろを向くと、そこには前日出会ったばかりの唯月と遙日、そして、彼らのチームメイトの不動明謙がいた…
『…えっ、え?』
どういう、こと…?
混乱している私を見て、唯月がそっと私の背中に手を添え、撫でて落ち着かせようとしてくれていた
「…大丈夫。まずは、落ち着いて」
『は、はい…』
深く深呼吸をすると、なんとか落ち着いた
『…すみません、もう大丈夫です』
「…ならよかった」
唯月が優しそうに笑う
それにつられて私まで笑顔になると、遙日が割って入ってきた
「はいはーい、そこまで!もー、俺と明謙のこと忘れてない?」
「…忘れては、ない」
「何その間!?」
『ふふ…』
その会話を見て笑っていると、視線を感じた
『…?』
「あっ…ごめんなさい」
明謙ちゃんが私を見て目を丸くしていたのだ
私が振り返って首をかしげると、すぐに視線を反らして謝られたけど…
『…唯月くん、遙日くん、お隣の人は…』
「あ、ごめん明謙、みのり!今紹介するな!」
私が明謙ちゃんに向き直ると、明謙ちゃんも私に向き直った
「えーっと、こっちが、俺達のチームメイト、不動明謙!」
「こっちは、この間知り合った、みのり」
『よろしくお願いします』
「よ、よろしく…」
私が頭を下げると、明謙ちゃんも軽く頭を下げた
『…でもどうして急に、唯月くんと遙日くんのチームメイトを…?』
私が首をかしげると、遙日がすぐに答えようとするが、瞬時に唯月によって口が塞がれる
『…というか、あの時少し話しただけだったし、連絡先も交換してないのに…なんで…』
「なんでって…なぁ?」
「うん」
「キミが気に入ったから」
唯月も頷く
『え…』
あんなに少しの時間で気に入られたの?私…
なんかしたっけ…
うーんうーんと唸っていると気付いた
(そうだ…!今ならお礼ができる…!)
私は三人に言った
『…あの、よかったら、うちに来ませんか?』
「…え?」
「はぁ!?」
「…えっ、それってどういう…」
三人の三者三様の反応を見ながら続ける
『唯月くんと遙日くんには、昨日のお礼してなかったから。あと、折角二人が連れてきてくれた、えっと…』
「あ、明謙で大丈夫です!」
『そうですか、じゃあ、明謙くんで。…で、折角なので、一緒にご飯でも食べて、お話ししたいなぁって…だめですかね?』
そこまで言ってから、気づく
(あ…本人達が嫌がるってこと考えてなかった…どうしよう)
眉を下げて地面に視線を落とす
するとー…
「お、俺は全然いいよ!むしろマジありがたい!」
「うん、僕もそう思う」
「ぼ、僕も!」
『本当ですか?ふふ…ありがとうございます。それじゃあ、案内しますね』
「え、昨日の今日で大丈夫?」
『うん、一応お姉ちゃんに地図もらったし、いざとなったらスマホもあるから』
「お姉さんがいるんだ。…?…じゃあ、なんで昨日は迷子になったの?」
『あ、あぁ…スマホはお姉ちゃんが持ってたし、地図も持ってなかったから…』
遠い目をすると、二人が苦笑するのがわかった
『…さ、行きましょう!』
4人で歩くこと数分
自宅に着いた
ガチャリ…
『ただいまー。お姉ちゃんいるー?』
そう声をかけるも、自宅は静まり返ったままだった
『…まだお仕事、か。さ、あがって!』
三人を自宅に迎える
「お邪魔しまーす!」
「…お邪魔、します」
「お邪魔します…!」
私は三人にスリッパを出し、三人と一緒に中へ入った
「…ここが、みのりんち?」
『うん。正確には、私とお姉ちゃんの家だけどね』
「そっか…」
キョロキョロと辺りを見回す三人に、私は椅子に座っててと告げ、キッチンに入る…前に
『何か食べたいものある?』
「…なんでもいい」
「あ、俺お肉がいい!」
「ちょっと、はるぴょん!遠慮しなよ!」
『あはは、大丈夫ですよ、お礼ですから。明謙くん、気遣ってくれてありがとう』
「…っ!い、いえ…」
私が微笑みかけると明謙くんは顔を赤くしてうつむいてしまった
そんな明謙くんに、はてなマークを飛ばすしかなかった
『…それじゃあ、作ってきますね』
「はーい、いってらっしゃーい!」
私はキッチンに向かった
遙日side
どうも、みのりに会ってからの明謙っちの様子がおかしい
「…どうしたんだ?」
「…明謙、緊張してるみたい」
「どうしたんだろうな…」
そして、みのりに誘われて彼女の家に入ってから、理由がわかった
「なぁ、これって…」
「…うん」
唯月とこそこそと会話をしていると、明謙っちがこっちを向いた
「?どうしたの?」
「いや、なんでもない!」
「…うん」
「…?」
俺たちの様子に目を瞬きながら、自然と明謙っちの視線は、みのりを追っていたー…
遙日side end
「…なんだかいい匂いがする…」
「…俺腹へった…」
「もうちょっとだから我慢しなよ、はるぴょん」
その声を聞きながら、私はガスを止めた
『…よし』
「できた?」
『ひゃっ!?』
いきなり背後から声をかけられ、私は飛び上がる
その方を向くと、唯月が笑顔でたたずんでいた
『え、あ…はい、できました』
私がなんとかそう答えると、唯月がお鍋のなかを覗き込む
「…美味しそう」
『ふふ、お口にあうといいんですけど…』
私がお皿をとろうと背伸びすると、私の手がお皿に届く前に、誰かの手がそのお皿を掴んだ
「…これ?」
『あ、はい、そうでー…』
声がしたので首だけ振り向くと、至近距離に唯月の顔があって、私は思わず真っ赤になる
「…?みのり?」
名前を呼ばれ、我に返る
『あ、はい…すみません、ありがとうございます』
唯月はそのままお皿を人数分とってくれた
「…はい」
『ありがとうございます』
唯月から差し出されたお皿を、笑顔で受けとる
「…ねぇ、このまま、見ててもいい?」
『え?別に構いませんけど…』
どうしたんだろう…そう思いながら、私はとってもらったお皿に、ロールキャベツを盛り付けた
『…よし、できた』
私がお盆を出して、人数分お盆にのせると、後ろから手がのびてきてお盆を取った
え?と思って振り返ると、唯月が笑顔でお盆を持っている
「これ、重いから…みのりは、スプーンとかフォークとか、軽いものだけ持ってきて」
『…あ…』
私が言葉を返す暇もなく、唯月はお盆を持っていってしまう
そんな唯月に、優しいな、と思った
『…さてと』
気分を切り替えて、早速スプーンやフォークを準備したのだったー…
2-1.唯月の優しさ
(凄く人を見ていて、優しいんだな)
朝、雀の鳴き声で目が覚めた
『ふわぁ…』
あくびをしながら時計を見ると、大分早くて、つばさお姉ちゃんはまだ起きてなかった
だったら、心配かけちゃったお詫びに、今日は私が朝御飯を作ろうと思った
そう決めれば後は動くだけ
私はキッチンに入り、冷蔵庫の中身を確認すると、朝御飯を作り始める
『…あ、せっかくだから、お姉ちゃんのお弁当も作っとこう』
キッチンは片付いていて、どこに何があるのかがよくわかった
しばらく調理を進めていると…
「…ふわぁ…」
お姉ちゃんが起きてきたらしい
「…え、みのり?嘘、夢…?」
お姉ちゃんがあっけにとられているので
『夢じゃないよ、つばさお姉ちゃん!』
そう言って微笑むと、つばさお姉ちゃんは泣き出してしまった
『え!?つばさお姉ちゃん!?どっか痛いところでも…』
「ううん…違うの。貴女が元に戻ったのが嬉しくて…」
『お姉ちゃん…』
私は昨日唯月にやってもらったように、お姉ちゃんの頭を撫でた
すると、お姉ちゃんは笑ってくれた
『…さ、もうすぐできるから、椅子に、座ってて』
「ええ」
つばさお姉ちゃんは素直に頷く
『…よし、できた』
お弁当も詰め終わったし…うん、完璧!
私がお皿をテーブルに並べていると、お姉ちゃんが目を輝かせた
「すごい…!」
『えへへ、頑張りました。あ、あと、これお姉ちゃんのお弁当ね!』
「え!?私のお弁当まで!?」
『うん!』
素直に頷くと、お姉ちゃんは目を細め、呟いた
「何時のまにここまで…でも、みのりはいいお嫁さんになれるわね」
『お姉ちゃんだってそうだよ?』
当たり前だと首をかしげると、お姉ちゃんは笑った
「…さ、食べましょう!いただきます」
『いただきます!』
ー…
そのあと、お姉ちゃんが仕事に出掛けたあと、私は冷蔵庫の中を確認して、買い物に出かけることにした
お姉ちゃんからは、地図と私のらしいスマホを渡されたから、今度は大丈夫!…な、はず
地図を見ながらスーパーへ向かう
『…あ、ここだ』
案外すぐついたので、中に入って食材を吟味
『…うーん…お肉かお魚か…どうしよう…』
私が足りないものを揃えて、今日のメインディッシュに悩んでいると…
「…ねぇ」
『…え、?』
誰かに話しかけられた気がしたので振り返ると、そこには…
「これ、落としてたよ」
『…あ、ハンカチ…はい、すみませんわざわざ…』
まさかの是国竜持がいたのである…
私がおどおどとそれを受けとると、彼はそんな私を見て目を細める
「…ねぇ、今日のメインに悩んでたみたいだけど…ちゃんとそれで何を作るかって決めてるんだよね?」
『え…?はい、勿論です』
「へえ?じゃあ言ってみてよ」
そういわれ、私は首をかしげながら言う
『お肉の場合は、シチューかロールキャベツ、お魚の場合は、焼き魚かお刺身にしようと思ってます』
「ふーん、なるほどね…」
『…?』
竜持はしばらく考える仕草をしたあと、言った
「…ふふ、キミ、いい奥さんになるかもね」
『えっ!?』
いきなり唐突にそういわれ、私は固まる
『…あ、そうかお世辞か…』
…が、竜持がごく一般人にこんなこと言うはずない、と思って考えた結果のお世辞だと思ったら、溜め息が出てしまった
「ん?何ため息ついてるの?」
『あ、いえ、何も…それじゃあ、失礼しますね』
私はいたたまれなくなって、ロールキャベツにしようとお肉をかごの中にいれるとそそくさと退散した
「…ふーん?」
それを見て、竜持が笑ってたなんて、私は知らなかった
『…はぁ、緊張した…』
というか、キャラとの遭遇率高くないか…?
そんなことを思いながら、レジを済ませ、スーパーを出る
『…日が高いな…』
空で輝く太陽を見上げた時
「…あ、いたいた!おーい!ゆづ!明謙!」
『…え?この声って…』
耳をすまそうとしたとき
「やっほ」
『ひゃっ…!?』
耳元で囁かれたため、私は思わず声をあげてしまう
「こら、ハル」
「ご、ごめんって!」
私が恐る恐る後ろを向くと、そこには前日出会ったばかりの唯月と遙日、そして、彼らのチームメイトの不動明謙がいた…
『…えっ、え?』
どういう、こと…?
混乱している私を見て、唯月がそっと私の背中に手を添え、撫でて落ち着かせようとしてくれていた
「…大丈夫。まずは、落ち着いて」
『は、はい…』
深く深呼吸をすると、なんとか落ち着いた
『…すみません、もう大丈夫です』
「…ならよかった」
唯月が優しそうに笑う
それにつられて私まで笑顔になると、遙日が割って入ってきた
「はいはーい、そこまで!もー、俺と明謙のこと忘れてない?」
「…忘れては、ない」
「何その間!?」
『ふふ…』
その会話を見て笑っていると、視線を感じた
『…?』
「あっ…ごめんなさい」
明謙ちゃんが私を見て目を丸くしていたのだ
私が振り返って首をかしげると、すぐに視線を反らして謝られたけど…
『…唯月くん、遙日くん、お隣の人は…』
「あ、ごめん明謙、みのり!今紹介するな!」
私が明謙ちゃんに向き直ると、明謙ちゃんも私に向き直った
「えーっと、こっちが、俺達のチームメイト、不動明謙!」
「こっちは、この間知り合った、みのり」
『よろしくお願いします』
「よ、よろしく…」
私が頭を下げると、明謙ちゃんも軽く頭を下げた
『…でもどうして急に、唯月くんと遙日くんのチームメイトを…?』
私が首をかしげると、遙日がすぐに答えようとするが、瞬時に唯月によって口が塞がれる
『…というか、あの時少し話しただけだったし、連絡先も交換してないのに…なんで…』
「なんでって…なぁ?」
「うん」
「キミが気に入ったから」
唯月も頷く
『え…』
あんなに少しの時間で気に入られたの?私…
なんかしたっけ…
うーんうーんと唸っていると気付いた
(そうだ…!今ならお礼ができる…!)
私は三人に言った
『…あの、よかったら、うちに来ませんか?』
「…え?」
「はぁ!?」
「…えっ、それってどういう…」
三人の三者三様の反応を見ながら続ける
『唯月くんと遙日くんには、昨日のお礼してなかったから。あと、折角二人が連れてきてくれた、えっと…』
「あ、明謙で大丈夫です!」
『そうですか、じゃあ、明謙くんで。…で、折角なので、一緒にご飯でも食べて、お話ししたいなぁって…だめですかね?』
そこまで言ってから、気づく
(あ…本人達が嫌がるってこと考えてなかった…どうしよう)
眉を下げて地面に視線を落とす
するとー…
「お、俺は全然いいよ!むしろマジありがたい!」
「うん、僕もそう思う」
「ぼ、僕も!」
『本当ですか?ふふ…ありがとうございます。それじゃあ、案内しますね』
「え、昨日の今日で大丈夫?」
『うん、一応お姉ちゃんに地図もらったし、いざとなったらスマホもあるから』
「お姉さんがいるんだ。…?…じゃあ、なんで昨日は迷子になったの?」
『あ、あぁ…スマホはお姉ちゃんが持ってたし、地図も持ってなかったから…』
遠い目をすると、二人が苦笑するのがわかった
『…さ、行きましょう!』
4人で歩くこと数分
自宅に着いた
ガチャリ…
『ただいまー。お姉ちゃんいるー?』
そう声をかけるも、自宅は静まり返ったままだった
『…まだお仕事、か。さ、あがって!』
三人を自宅に迎える
「お邪魔しまーす!」
「…お邪魔、します」
「お邪魔します…!」
私は三人にスリッパを出し、三人と一緒に中へ入った
「…ここが、みのりんち?」
『うん。正確には、私とお姉ちゃんの家だけどね』
「そっか…」
キョロキョロと辺りを見回す三人に、私は椅子に座っててと告げ、キッチンに入る…前に
『何か食べたいものある?』
「…なんでもいい」
「あ、俺お肉がいい!」
「ちょっと、はるぴょん!遠慮しなよ!」
『あはは、大丈夫ですよ、お礼ですから。明謙くん、気遣ってくれてありがとう』
「…っ!い、いえ…」
私が微笑みかけると明謙くんは顔を赤くしてうつむいてしまった
そんな明謙くんに、はてなマークを飛ばすしかなかった
『…それじゃあ、作ってきますね』
「はーい、いってらっしゃーい!」
私はキッチンに向かった
遙日side
どうも、みのりに会ってからの明謙っちの様子がおかしい
「…どうしたんだ?」
「…明謙、緊張してるみたい」
「どうしたんだろうな…」
そして、みのりに誘われて彼女の家に入ってから、理由がわかった
「なぁ、これって…」
「…うん」
唯月とこそこそと会話をしていると、明謙っちがこっちを向いた
「?どうしたの?」
「いや、なんでもない!」
「…うん」
「…?」
俺たちの様子に目を瞬きながら、自然と明謙っちの視線は、みのりを追っていたー…
遙日side end
「…なんだかいい匂いがする…」
「…俺腹へった…」
「もうちょっとだから我慢しなよ、はるぴょん」
その声を聞きながら、私はガスを止めた
『…よし』
「できた?」
『ひゃっ!?』
いきなり背後から声をかけられ、私は飛び上がる
その方を向くと、唯月が笑顔でたたずんでいた
『え、あ…はい、できました』
私がなんとかそう答えると、唯月がお鍋のなかを覗き込む
「…美味しそう」
『ふふ、お口にあうといいんですけど…』
私がお皿をとろうと背伸びすると、私の手がお皿に届く前に、誰かの手がそのお皿を掴んだ
「…これ?」
『あ、はい、そうでー…』
声がしたので首だけ振り向くと、至近距離に唯月の顔があって、私は思わず真っ赤になる
「…?みのり?」
名前を呼ばれ、我に返る
『あ、はい…すみません、ありがとうございます』
唯月はそのままお皿を人数分とってくれた
「…はい」
『ありがとうございます』
唯月から差し出されたお皿を、笑顔で受けとる
「…ねぇ、このまま、見ててもいい?」
『え?別に構いませんけど…』
どうしたんだろう…そう思いながら、私はとってもらったお皿に、ロールキャベツを盛り付けた
『…よし、できた』
私がお盆を出して、人数分お盆にのせると、後ろから手がのびてきてお盆を取った
え?と思って振り返ると、唯月が笑顔でお盆を持っている
「これ、重いから…みのりは、スプーンとかフォークとか、軽いものだけ持ってきて」
『…あ…』
私が言葉を返す暇もなく、唯月はお盆を持っていってしまう
そんな唯月に、優しいな、と思った
『…さてと』
気分を切り替えて、早速スプーンやフォークを準備したのだったー…
2-1.唯月の優しさ
(凄く人を見ていて、優しいんだな)