『…ん…』


体が揺れる感覚で、目が覚める


「…起きた？」


『…えっ』


私は目が覚めると移動のバスの中で増長さんに膝枕されていた


『…あれ、なんで私…』


現状に行き着いた理由が思い出せず、慌てて起き上がり、思考を巡らせる


『…あ』


そうだ…着替え終わったら、緊張の紐が解けて、眠くなって…そのまま寝ちゃったんだ…


私は謝らないとと思って、増長さんに向きなおる


『あの、ごめんなさい』


「…え？」


そう言った私に、増長さんは目を丸くする


「…なんで、君が謝るの？謝るのは俺の方だよ」


『え、どうして…』


今度は私が目を丸くして問いかけると、増長さんは苦しそうに笑う


「…江藤さん、俺との撮影のあと、様子が変だったから…嫌われたんじゃないかって…」


そう言う増長さんの肩は、小さく震えていた


『増長さん…』


私はそっと、彼の肩に触れた


「…っ！…何…？」


『…私、別に増長さんのこと嫌いになってません』


そう言うと、増長さんは私の方を向いた


「…本当？」


『はい、本当です』


「…じゃあ、なんであのとき…」


『あのときは…凄く緊張してたので…』


私は苦笑を見せる


『…それに、私…首は駄目で…』


小さくボソリと呟いた言葉を、増長さんは聞き逃してくれなかったようで


「…ふふ、かわいいね」


漸く笑ってくれた増長さんに、私も安堵した





そうして、私たちは次の仕事場へと向かった






その後の収録も無事に終え、帰路に着いたときにはすっかり夜になっていた


「あー、疲れたー」


『ふふ、お疲れ様です。しっかり休んでくださいね』


「はーい！」


王茶利さんとそうして会話していると、バスが会社前に着いた


「よっしゃ！着いたー！」


王茶利さんは荷物をもって勢いよくバスから降りていく


他のメンバーも、どんどん降りていった


「江藤さん、先に降りていいよ」


『え？あ、ありがとうございます』


増長さんにそう言われ、私は慌てて降りる


その後から、増長さんが降りた


「…時間遅いけど、江藤さん、一人で帰れる？」


『はい、大丈夫です。ご心配ありがとうございます』


私が笑顔でそう言うと、増長さんも表情を緩めた


『…それじゃあ、私はやることがありますので』


「うん！おっつかれー！」


「お疲れ様です」


「お疲れ様」


「お疲れ」


「…お疲れ様。それじゃあね、江藤さん」


『はい。お休みなさい』


「うん…お休み」


そうやって挨拶をすると、MooNsの皆さんは帰っていった


『…よし』


それを見送ると、会社に一度戻って報告書の元にするものを簡単に作成すると、自宅に帰った



4-4.仲直り

((良かった…))