私は、至って普通の女の子だった。


普通に起きて、学校行って、帰ってきて…


家族と笑いあって、暮らしてた


なのに…






ピーポーピーポーピーポー…


あの日、私は事故に遭い、この世を去ることになった


『…あれ…？』


目が覚めると、辺り一面彼岸花が咲き乱れている場所にいた

太陽も月も上っておらず、地平線と空の境界線が真っ赤に染まっていた


『…ここは…』


初めて見た、こんなところ…


なんだか神秘的だった


彼岸花の花びらが舞っており、私が手を出すと、花弁が一片手の平に落ちた


ここは一体どこなんだろう…


そんなことを思いながら、歩き始めた


なんだか夢見心地で、何処か現実味がなかった




しばらく歩いていると、まぶしい光が現れた


『…何…？』


一体なんなんだろう。


私はなんだかその光が気になって、その光に向かって歩き始めた


『ーっ！』






ー…


『…あれ…？』


私が次に目をあけると、純日本家屋と言えるお家が目に飛び込んできた


『…ここはどこ…？』


どうやら横になっていたらしく、上半身を起こす


すると


「お嬢様！！目を覚まされたんですね！！」


「おい！！お嬢様が目を覚まされたぞ！！」


次々に声がかかる

私は混乱した


誰？お嬢様って。私のこと？

まさか、私はいたって普通の一般人だよ


そう思いながら顔に手を当てると、袖が目に入り、その形状からして、私が今着ている服が着物(浴衣？)であることがわかった


『…いつの時代よ…』


なんて独り言が漏れたけど、周りはお構いなしでお医者様を呼び、私を見せた


どうやら、話を聞いているに私は良いところのお嬢様らしい


しかも、今は大正時代、なんと過去にタイムリープしてしまったのだ


なんともまぁ不思議な出来事で…


人間は実際に摩訶不思議な出来事に合うと順応性が高まるらしく、少ししたら"お嬢様"と呼ばれるのにも慣れてしまった


診察の結果は、数週間寝込んでいたお陰で大分回復しているとのこと


お医者様はまた来ると言って去って行った


そこへ、ちょうど少年が通りがかり女中が声をかける


「あ、炭治郞さん！炭を少しくださいな！お嬢様がやっと目を覚まされまして…！」


「あ、おめでとうございます！よかったですね！」


少年は、とても素敵な笑顔で女中と話していた


私がじっと見つめていたからか、少年がこちらに気づいた


女中もこちらに気づいたらしく、私を紹介してくれる


「あちらが、私達のお嬢様です。…良く知っておられますよね」


「…ええ」


『…え…？』


良く知っておられる…？


どういうことだろう…それを理解するより前に、少年は炭を女中に売って去っていってしまった


私は、彼の憂いを帯びた優しげな瞳が忘れられなかった


憂いを帯びた瞳

(初対面、の、はず…)