梓は自らの背後にいる男の脛（すね）を踵（かかと）で蹴りつけた。


「おりゃぁっ！！」

「ぐぁっ！？」


怯んだスキに腕から逃れると、そのまま男の頭を蹴り飛ばす。隣ではハデスが困惑の表情を浮かべている。
するとグシャッという音と共に１人の男が三途川の蹴りによって飛ばされてきた。


「！！　三途…」

「この甘ったれが！！　何を躊躇してる!!?　亡者もろとも救いたければ余計な気を回すんじゃない。"あれ"は君にしか倒せんのだ!!!」

「シンヤちゃんも手加減しなくていいよ！！　荒療治だと思ってやって！！」

「う…うん！！」


殴り、蹴り倒していくが夢の亡者と化した人たちは次々と迫ってくる。


【………これはいけませんね………どれ…】


少年が手を伸ばすと辺りは闇に包まれた。
そこは見覚えのある場所。


【あなた方皆一度は訪れたでしょう】


振り向くとあの少年が歩み寄って来ている。


【"Ｗｉｓｈｉｎｇ"の登録画面です。ここでＷｉｓｈｉｎｇはあなたの精神（こころ）から情報を読み取り…普段、意識しようとしていまいとあなたが心から望む夢の世界を実現させる…
"夢を見せる"…それがＷｉｓｈｉｎｇ。私の能力なんです】


少年はそこまで話すと一呼吸おき、さらに話し続ける。


【つまりね…"逆"
遠い日のあなたが…奥底に閉じこめた恐怖、失意、絶望。

これより始まるのはＷｉｓｈｉｎｇが解析したあなたが"心から望まない悪夢です"。
…夢に捕われた哀れな私の観客（こども）たち…
あのままでは彼らがあなたがたを殺してしまいかねませんでした…こんな脆弱なエラーのために、あの子たちに罪を犯させるのは可哀相ですから…
さあ…いつまで耐えられますかね…】



辺りが闇に包まれた。



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