「何？」


三途川が聞き返すと梓はハッと表情を戻した。


「いえっ何でも！　それに何かあるときは麓介の家におばあちゃんがいるのでそっちに泊めてもらったりしてますし。それより、先生たちはどんな夢を見たんですか？」

「私か？　私はな、波動拳が撃てた。早く現実世界でも撃てるようになりたいものだな」

「僕は保健室にたくさんの生徒が遊びに来てくれる夢だったなあ…梓さんは？」

「私は両親と朝ごはんを食べる夢でした。あっ！　私の家ココです。結局送って貰っちゃってすみませんでした」


確かに梓の家は真っ暗で人の気配はない。


「いや、構わないよ」

「おやすみ。梓さん」

「はい。おやすみなさい」


ハデスと三途川を見送り、家に入った梓は玄関に座り込んだ。
すると、どからもなく声が聞こえてくる。


【大丈夫か？　梓…】

「今日のはちょっとキツかったなぁ……でも大丈夫！！　"１人"じゃないから…ね」





ーーーーー

「梓くんには私たちには知りえない"心の闇"があるみたいだな……」


ハデスと夜道を歩く三途川はポツリと呟いた。





ーーーーー

「つらそうな顔……何かイヤな事があったんだね。かわいそうに………」


受け付けの女性の先には青い顔で息切れをしている刀哉が立っていた。


「早く忘れちゃいなよ。ここなら…………それができる…」


「やめてくださいよ…天才だなんて…俺ホントそんなんじゃないですから…ただ…好きなことやってるだけなんですよ…」
「お前ら弱すぎだ…もっとオレを見習えよ…」
「いやあ…そんなに褒められると照れちゃいますね………」
「みんなぁ…今日はあたしのために集まってくれてありがとお…」
「もっと…もっと…！　早く…」
「あははあはははあはははは……………」


ロビーには目の焦点の合っていない者、ブツブツ呟く者が何人もいる。
そんな中、刀哉は虚ろな笑みを浮かべながら上映室の奥へと進んで行った。
後に残ったのは冷たい視線を送る受け付けの女性と１羽のオウム。





イチメイサマ、ゴアンナーイ



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