そしてクルリと一回りすると、警戒してはいるものの、一切ガードしていない龍黄の腹に後ろ回し蹴りを叩き込んだ。


ドンッ!!!


龍黄は扉を開けていたアシタバの横をかすめ、廊下の壁に叩き付けられた。


「いっ……てぇ……」

「ほら…あんたの嫌いな色目も泣き落としも使ってないわよ……頭冷やして出直して来なさい！！」


ピシャリと保健室の扉を閉め梓はソファーに戻ったが、明らかに不機嫌そうな顔をしている。


「牙狼…さんも以外と強いんだね…」

「シンヤといい勝負ってそーゆー事かよ…」


先程の藤の言葉の意味を知り青ざめるアシタバと美作。


「コイツん家の親、空手とか柔道やっててすげー強いんだよ」

「じゃあ…もしかして鏑木さんより強かったりするのかな？」

「まさか！！　私のは御信用程度ですよ」


ハデスの問いに梓は慌てて否定するがアシタバ達の苦笑いは消えなかった。


放課後、保健室の掃除をしながら梓は深刻そうな顔をしている。


「梓さん？」

「わっ！？」

「大丈夫？深刻そうな顔をしているけど…」

「いえ…ちょっと今日はやりすぎちゃったかな…って」


困ったような笑顔を見せる梓の頭をハデスは優しく撫でる。


「梓さん、君は優しい子だね……次に会ったときにキチンと謝れば大丈夫だよ…」

「そ…そう…で…すね…」


赤い頬を隠すようにハデスから離れる梓の顔は照れたような笑顔だけが残っていた。



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