ある日の朝、梓の家の電話が鳴り出した。



「はい、牙狼です。えっ、今日学校休み？　うん、わかったありがとう」


電話はクラスメートからで防風警報が出た為、休校になったと言うものだった。


「休みか…。なんかハデス先生は"間違って生徒が来るといけない"とか言って学校に行ってそう…」


梓はまだ知らない。その言葉が現実になっていることを…………



ーーーーー

次の日、梓は頭痛をこらえるように頭を押さえている。
原因は目の前の…オデコにアイスシート、首にネギを巻き、マスクをつけてさらには点滴を引いて歩いている男だった。


「おはよう。梓さん」

「おはようございます。ってか何やってるんですか、ハデス先生？」

「いや、昨日間違って学校に来る生徒がいるといけないと思って……５時間ほど頑張ってたら…ね…えと……」


ハデスの歯切れが悪くなっていく。
それは始めは呆れていた梓の顔がみるみる険しいものへと変わっていったからである。


「ハ・デ・ス先生！？」

「は、はいっ!!!」

「保健室…行きますよ」


そう言うと梓は点滴の台を掴み、ハデスの背中を押して保健室へと走り出す。
途中、頭上でハデスのわめく声が聞こえたが梓は全て無視することにした。


「さて…と、私は手洗い洗剤の補充に行ってくるんで…大人しくしてて下さいね」

「あ…でも僕ちょっと作りたいものが…(ギロリ)……はい…」


シュン…と肩を落としソファーに座るハデス。
それを見た梓は洗剤を片手に保健室を出た。


正門のそばの水道で洗剤を補充していると、見慣れた人物が歩いている。


「あれは…おーい、花巻さーん」

「えぇっ、あ…牙狼さん…」


クラス一のあがり症、"花巻 美玖"だ。


「おはよう、花巻さん」

「お…おは、よう。
あ…あの…牙狼さん、あの…「おはよー梓ちゃーん」

「あ、おはよーシンヤちゃん」


何かを言いかけた花巻の言葉は真哉の声に掻き消されてしまった。


「あの子、Ｂ組の鏑木さん…って、ちょっ花巻さん！？」


花巻は梓の話を聞く前に恥ずかしさのあまり走り去ってしまった。



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