第36診:開きかけた記憶
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安堵の表情を浮かべた梓はゆっくりと瞳を閉じ、白衣を握り締めていた手が緩み、荒かった呼吸は規則正しい寝息に変わっていく。
汗で張り付いた前髪を退かせると、小さく問いかける。
「獄狼 …もう話せるか?」
ハデスの言葉に答えるように獄狼 が姿を現した。
「何があったんだ?」
獄狼 はブルブルと身体を震わせるとハデスを真っ直ぐに見つめ返した。
【帰る途中で病魔に罹っている人間に会った。たぶん蜃気楼 だな】
「蜃気楼 ? たしか相手の望むものを見せる病魔か……」
【かなりなれた様子だったからな。普段からナンパにでも使ってるんだろ】
フンッと鼻を鳴らす獄狼 の目にはまだ怒りの色が見える。
【蜃気楼 が見せたもの…オレにはよく分からないが、恐らく愛癒 が奪った記憶に関するものだったんだろう。
梓がパニックになったことでオレの力が暴走した】
「本来の方法以外で記憶を取り戻すのは実質不可能ということか………
ん? じゃあ何で逃避 の時は大丈夫だったんだ?」
逃避 が見せたのも愛癒 が奪った両親との記憶ならば、その時に今回のような事が起こっていても不思議ではなかった。
【あれは…梓が自ら蓋をした記憶だ】
「自分…から?」
獄狼 はゆっくりと頷く。
【言っただろう、愛癒 は幸せな記憶を奪う。
悲惨な事故現場の記憶なんて頼んでも喰っちゃくれないさ】
"自身の望む夢"の時は、愛癒 の残した記憶の欠片と、残してあった写真や今の両親から聞いていた知識的な記憶のおかげで今回のような事態は免れていた。
結果としてあの出来事が両親の愛に気付き、記憶を取り戻すきっかけになったのだが。
ここまでの話を聞いてハデスの眉間には皺が寄っている。
【…そんな不安そうな顔をするな】
ハデスは獄狼 の言葉にハッと顔を上げる。
【オレがこうして実体化できているのが暴走がおさまっている何よりの証拠だ。
さすがに今回はオレも疲れた。そのうち起きるだろうから、それまで休ませてやってくれ】
「ああ…」
そう言うと獄狼 は梓の中へと戻っていった。
戻る直前、梓に軽く頬擦りする姿は深い愛情に満ちているように見えた。
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汗で張り付いた前髪を退かせると、小さく問いかける。
「
ハデスの言葉に答えるように
「何があったんだ?」
【帰る途中で病魔に罹っている人間に会った。たぶん
「
【かなりなれた様子だったからな。普段からナンパにでも使ってるんだろ】
フンッと鼻を鳴らす
【
梓がパニックになったことでオレの力が暴走した】
「本来の方法以外で記憶を取り戻すのは実質不可能ということか………
ん? じゃあ何で
【あれは…梓が自ら蓋をした記憶だ】
「自分…から?」
【言っただろう、
悲惨な事故現場の記憶なんて頼んでも喰っちゃくれないさ】
"自身の望む夢"の時は、
結果としてあの出来事が両親の愛に気付き、記憶を取り戻すきっかけになったのだが。
ここまでの話を聞いてハデスの眉間には皺が寄っている。
【…そんな不安そうな顔をするな】
ハデスは
【オレがこうして実体化できているのが暴走がおさまっている何よりの証拠だ。
さすがに今回はオレも疲れた。そのうち起きるだろうから、それまで休ませてやってくれ】
「ああ…」
そう言うと
戻る直前、梓に軽く頬擦りする姿は深い愛情に満ちているように見えた。
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