「私たち生徒の事を気にしてくれるのは嬉しいですけど…もう少し自分の事も大切にしてください……」


寂しげに言われてハデスの胸がチクチク痛む。
まるで冷血（クルエル）の事を言われているようだ。


「あの…ごめん…ね」

「これからはちゃんと栄養バランス考えて食事してくださいね」

「精進します…」

「なあ…」

「あ！　終わったの？」

「いや…先生、一生のお願いがあんだけど…」

「今回はオレからも頼む！！」


必死の形相で言うのは藤、美作、花巻。
そしてその後ろには困った顔のアシタバが立っている。

藤達の話を聞いて梓は呆れた顔でアシタバに話しかけた。


「絶対バレると思わない？」

「うん…ってゆうか多分ハデス先生も叱られるよね…」


そう言いつつも梓とアシタバは止めもせず、手伝いもせずに目の前の作業を見つめていた。





ーーーーー

次の日…


「ではこれでＨＲを終わります。みんな季節の変わり目にカゼなどひかないようにね。
それでは夏休みの課題を提出した人から帰ってよろしい」


才崎の呼び掛けに生徒達が立ち上がる中、藤達は顔を見合わせた。


「……どうする……？」

「どうするって、もう…出すしかねーだろ。とりあえず…」


花巻は筒状に丸めた紙を持って立ち上がった。


「はい、次は花巻さんね。それは自由研究？　何を題材にしたのかしら」

「あ…あ、あの私は１年間の保健室の利用者をグラフにしました」


花巻が広げた紙には毎月数人分の色の塗られた棒グラフが書かれていた。


「まあ凄い！　ということは、わざわざ保健室に取材に行ったのね？
グラフの数値は切ないけどその行動はとても立派だわ！」

「あ…いえ、その…そんな…」


引っ込み思案な花巻の行動に喜ぶ才崎だったが、花巻は心苦しいのか冷や汗を垂らしている。

その勢いで藤は"白のジャケット"を、美作は"屋台"を提出したが………

屋台ののれんが捲れ下から特設保健室の文字が現れた。


「なっ…な…なっ…こ…！！」

「あ～～あ……」

「やっぱりバレた…」

「こらーーーっ、待ちなさい!!!
ど…どこかで見たことあると思ったら…」


藤はハデスの白衣を、美作は移動保健室を持ってくると言うにわか仕込みの偽装はあっさりバレていまい……

ハデス先生もこってりしぼられた。


その光景を呆れて見ていたが、夏休み最後にハデスの家に行けたのは事だけはこっそり３人に感謝している梓だった。


ちなみに、梓の夏レシピの最後は"夏休み最後の徹夜ご飯"というタイトルで弁当箱に伸ばされた手の写真が張られ、返却されたクマのぬいぐるみは真哉のと合わせて保健室に大切そうに飾られていた。





To be continued...