どうやら鈍がハデスの知り合いだと教えられたようだ。


「どうしたの～～？　みんな…あの２人…もう少し時間がかかりそうだし。もっとこっちにいらっしゃいな………」

「お隣…できれば俺も膝の上よろしいでしょうか！！」

「テメー初対面のくせに図々しいぞ！！」


暴れる美作達、特定の生徒に私物化されたようなベッド、綺麗に片付けられた室内を見ていた鈍がポツリと呟く。


「……経一が」

「えっ？」

「何もできずにここからノコノコ帰ってきた理由がわかったような気がするわ。
今…幸せなのね～～～……あの人」

「そう…なんですか？　だったら嬉しいです」


鈍は少し困ったような顔で梓を見る。


「でもね…だったら尚のこと、あの自己犠牲的なやり方を改めさせなければならないわ…！」

「そ…れは…」

「あなたたちとこの空間を大切にしたいとあいつが思っているのなら…必要なことよ」


この会話は写メを撮ろうとする安田を止めにソファーから離れた真哉に聞こえることはない。
梓は膝から降りると、鈍と向き合った。


「大丈夫です。それは私が…私たちがストッパーになります。
ここにいる皆は…もうハデス先生がいない保健室なんて想像つかないと思うから……」


鈍の目はまだ騒いでいる美作達に向けられた。


「それに…とりあえずハデス先生が怪我をしないようにする方法は見つけましたから」


梓が悪戯っ子のように笑うと、才崎と話を終えたハデスが保健室へと入ってきた。


「ふう…ごめんねみんな…才崎先生がやっと誤解を解いてくれて……」


鈍はソファーから静かに立ち上がる。


「守るのは逸人だけじゃダメよ……自分も大切にしなさい…」

「………はい…」


頷く梓の頭を撫で、鈍は扉へと歩いて行った。


「……帰る。なんか毒気抜かれちゃったし。……邪魔したわね」


一旦鈍と共に廊下に出たハデスは、戻ってくるやいなや安田から質問攻めに合い昼休みが終わってしまった。



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