突然の状況に困惑した女性スタッフは追いかけてきた青山を振り返る。


「あ…マネージャーさん…この人たち、あっちーの知り合いなんですか？」

「知らないよそんなこと。まったく、ワガママなんだから…」


花巻は涙目で梓に抱き着いた。


「ごめん…ごめんね…あたし…！！自分ばっかり楽しくて…あなたのこと全然考えてなかった。心細かったよね…ごめんね…
ねえ…！聞こえてるでしょ！？もういいよ！！あたし１２時間もお休みいらない！！あたしたちの身体…
元に戻して！！」


涙ながらに訴える花巻を安心させるように梓は背中をポンポンと叩く。
その姿を見ながらハデスは花巻の後ろを睨みつけた。


「……病魔は君の苦しみを何よりの餌として存在している。君が病魔と何を約束したのか知らないが…
無駄だ…おそらくその願いは…」



ドクン



【その通り…】


その言葉に振り向けば車輪を背負った女、運命（フォルトゥナ）が現れた。


【１２時間…ふふふ。種明かしが少々早まったようだが…はじめから元の姿に戻してやる気など無かったさ。
"普通の女の子"になりたかったのだろう…？良かったじゃないか…ふふふ…アハハハ】

「そ…んな……！」


運命（フォルトゥナ）の言葉に花巻の顔色が変わる。


「そんなーーーっ!!!なにそれカンペキサギじゃないの！訴えるわよ！うちの事務所超怖いんだから。
ちょっとあんたもなんとかいってよブルマーッ！！」

「な…きっ君、何で僕のアダ名を知ってるんだ！」


熱子の入った花巻と青山の言い合いをよそに梓はクスっと笑みをもらした。


「まあ、それは…こっちとしても同じことだけど……ね、先生？」

「その通り。お前がどういうつもりだろうと関係ない。はじめからな……」


ビシ…と右手に拡がる冷血（クルエル）が運命（フォルトゥナ）を噛み砕く。


「咀嚼完了……と…」

「え…」

「これでもう大丈夫。元に戻れるよ…私たち。だから安心して、ミクちゃん……」


梓は苦笑しながらも、始終涙目で事の成り行きを見ていた花巻入りの自分の肩を叩いた。


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