デートのススメ
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「デートがしてみたい」
「はあ?」
いつものように拉致されて、いつものように殺意をいなされてから放り込まれたのは予想外すぎる言葉だった。
堕落王から唐突に投げられた要望を聞いて、結理は遠慮なく片眉を跳ね上げて素っ頓狂な声を返す。おかしな言動はいつものことだが、今日は一際な上に予想の斜め上を突き抜けた。
そんな少女の反応に構わず、堕落王は当然のように続ける。
「いやね、最近普通の研究をしているんだ。普通のデートとやらは端から見たら退屈と非合理と非生産を盛り合わせて煮こごりにしたようなものだが、実体験してみたら何か違う結果が生まれる可能性があるんじゃないかと思ってね。所謂、フィールドワークさ」
「……あ、普通の研究ってそうゆう意味か。つかあんたこの間の件でまだ懲りてないんですか…?堕落王フェムトが普通求めてる時点で既に普通じゃないですからね?」
「君ならデートの一つや二つしたことあるだろう?何か適当に案内してくれ給えよ」
「聞けよ」
やはりいつものようにこちらの話を聞きもしない堕落王を一睨みしてから、結理は既に疲れ切ったようなため息をついた。
「普通のデートって……今日これからは無理ですよ。普通の人は思い立って即デートなんてことはほぼしませんから。それやったら普通じゃなくなります」
「ほう……」
「そうですね……明後日でもいいですか?それなら準備もできるし。ただし条件があります」
「やけにスムーズに話を進めると思ったらそう来るか」
楽しげににたりと笑った堕落王を淡々と見つめる結理は、相手が言葉を重ねる前に条件を告げる。
「一つ、今から当日が終わるまで実験、ゲーム、その他騒動を一切起こさないこと。二つ、当日は私を拉致らないでちゃんと自分で待ち合わせ場所まで来ること。三つ、当日は途中で飽きようが退屈だろうが最後までわたしに付き合うこと。四つ、HL内の危険度が低い場所であなたが行きたい所を一つ考えておくこと。この条件を呑むなら普通のデートをご教授します。わたし好みのでよければですけど」
「ふむ……」
提示された条件を吟味するように、堕落王フェムトはしばらく黙った。結理はそれをどうでもよさそうに眺めている。元々人の話は意図的に聞かない怪人だ。突っぱねられればそこで話は終わりだし、騒動を起こされるのも自身に何かをされるのも(非常に不本意だが)慣れている。
やがて、稀代の怪人は仮面で隠れて表情が見えない顔を少女に向けて答えを返した。
余談ではあるが、有休申請を申し出た結理が堕落王とデートをすると正直に書いた為、ライブラ副官及び事務班の間でちょっとした騒ぎになったそうな……