のんでのまれて
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ライブラでは定期的に飲み会が開かれている。一応建前上としては普段顔を合わせない構成員との顔つなぎや情報交換などがあるが、大半の構成員はそれと一緒に会費以上の満足、簡単に言ってしまえば安心安全に好きなだけ飲み食いできる場として参加している。
和やかさと物騒さの混じった雑談は常で、それもHLの、もしくはライブラの日常らしさが出ている。
「うへへ~……」
そんな賑やかな会場の中で、結理はソファに座ってふにゃふにゃと笑っていた。手にはオレンジ色の液体が入ったやや大きめのグラスを持っていて、中身は五分の一ほどまでに減っている。特に何があるというわけでもないのに頭がふわふわしていて、それが妙におかしくて笑みが止まらない。
「あれ?ユーリどうしたの?」
そんな結理の前を偶然通りかかったレオが、怪訝そうに少女に声をかけた。よく知った顔を見つけた結理は、赤くなった頬を更に緩めて笑う。
「あ~レオく~ん……」
「……え?もしかして酔っ払ってる!?」
「そんなことないよ~。だってこれジュースだってザップさんが渡してくれたも~ん」
(何してくれてんだあのSS先輩!!!)
胸中で元凶を呪いつつ、明らかに酔っ払っている風体で説得力皆無なことを言う結理から、レオは慌ててグラスを取り上げた。においはジュースでしかないが、原因がこれならば間違いない。口当たりに反していくらでも濃さを変えることができるカクテルだ。店によっては本当に薄く飲みやすいものもあるが、基本的に酒豪しかいないライブラの飲み会でそんな優しいものが出るわけがない。
ワンテンポ遅れてグラスを取り上げられたことに気付いた結理が、定まらない視点でグラスに手を伸ばす。
「あ~!かえしてよ~!」
「ダメだって!ふらふらじゃないか!」
「こんなのふらふらの内に入んないよぉ……レオ君のいじわる~!」
「ちょ……こら!危ないって!」
「レオ君ほそ~い……もっとちゃんと食べないとだめ~」
「うわわわわ…!」
「オーイガキども、イチャつくんなら端っこ行けー」
「いやあんたのせいだろ!!」
グラスを取り返そうとしていたのがいつの間にか抱きつきだした結理と、それに応戦するレオとに、通りがかったザップがからかいの言葉を投げた。レオが即座に反論すると、ザップは怪訝そうに顔をしかめる。
「は?」
「ユーリに酒飲ましたのザップさんでしょ!?」
「何言ってんだお前…?こんなんほぼジュースだろ……」
レオの非難に心底訳が分からないといった表情のザップは、彼が必死に結理から遠ざけているグラスを取り上げて呷る。そして自分が結理に渡した酒の濃さが予想を大幅に超えていたということに気付き、しまったといった風に顔を引きつらせてから、さっさと踵を返した。
「まー水でも飲ましてどっか隅っこに転がしとけ」
「コラアァァァァァァァァっ!!!」
「事故は誰にでもあるもんだ。お前がいくら陰毛チビでもそいつ引きずってくぐらいできるだろ。頑張れレオ。お前ならできる」
「あんたが元凶だろうがああああ!!」
「どうかしましたか?」
即刻事態を丸投げしようとするザップに怒鳴っていると、声を聞きつけたらしいツェッドがやってきた。ツェッドはレオにしがみついている結理を見て不思議そうに首を傾げ、ザップの方を一瞥してからレオに視線を戻した。
「恐らくあの色々底辺な兄弟子が何かしでかしたんでしょうけど、結理さんはどうしたんですか?」
「ナチュラルに犯人認定してんじゃねえ魚類」
「ザップさんにお酒飲まされて酔っ払っちゃったんすよ」
「…………最っ低ですね。いたいけな女性をこんなになるまで酔わせるなんて、下劣の極みじゃないですか」
「わざとじゃねえよ!事故だ事故!あんなつええのだって知らなかったんだよ!」
心底蔑んだ視線を兄弟子に向けてから、ツェッドは未だにレオにしがみついたままの結理を引き剥がそうと肩に手を置いた。
「ひとまずお水でも飲ませて休ませましょう。結理さん、大丈夫ですか?」
「う~?あ~つぇっどく~ん……」
声をかけられて、結理はツェッドの姿を認めるとふにゃりと笑った。そして今度はツェッドに抱きつくようにもたれかかり、「うへへ……」と声を漏らしながら胸辺りにぐりぐりと顔を埋める。
「ひんやりしてる~きもち~」
「あの……結理さん……この体勢は色々とマズイ気がするんですけど……」
「ツェッドさん、そのままユーリ捕まえといてください。俺水持ってくるんで」
「え!?レオ君!!?」
予想外の要請にツェッドは慌てるが、レオは返答を聞かずにさっさとバーカウンターの方へ向かってしまった。仕方なしに結理を見ると、抱き心地がいいのかひとまずは大人しくしてくれている。このまま立たせておくのも悪いと思い、ツェッドは慎重に結理を支えながらソファに座らせた。