君に祝福を
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こうして夕方から起こった騒動は日がすっかり暮れても続き、収束する頃には時計の針は深夜を指していた。
「ちょっとーー!ユーリっちの誕生日があと15分で終わっちゃうじゃない!!」
「いや、もういいですよ。みんなで出動もそれっぽくてよかったじゃないですか」
「アンタがよくてもアタシ達がよくないの!心残り来年に持ち越しちゃうでしょ!」
「うわわわ…!」
やはりドライに対応する結理の頭を、K.Kが泣きそうに顔をしかめながらわしわしと両手で撫でた。
騒動を鎮圧させたライブラメンバーが現在いる位置は事務所からはそれなりに遠く、戻っている間に日付は変わってしまうだろう。少女の誕生日を祝うには時間が足りない。
「せめて今日中に何かお祝いらしいことさせてよ~~!」
「そんなこと言われても……」
「……あ、じゃあこんなんどうです?ユーリ、ちょっと来て」
「?」
そう言うとレオは結理に軽く手招きをする。怪訝に思いながらも側まで駆け寄ると、レオは少し躊躇うように沈黙してから少女の黒髪を軽くかき上げ……
その額に軽くキスを落とした。
「―――!!?」
突然のことに、結理は目をまん丸に見開いて固まった。その間にレオは若干照れくさそうに頬を掻きながら、面々に向き直って提案を投げかける。
「祝福のキス、のプレゼントとか」
「…………シュクフクノキス?」
「……童貞陰毛頭の癖に何つーキザな」
「それいいじゃない!!」
ドン引きした表情で呻くザップをぶっ飛ばす勢いでK.Kが歓声を上げ、未知の言葉を聞いたように呆然としていた結理の肩を抱き寄せた。
「ちょ、あの、K.Kさん……」
「みんなでユーリっちにキスのプレゼント!レオっちナイスアイデア!!」
「いやちょっと待ってくださ」
「……悪くないな」
「スティーブンさん!?」
「祝福という形では、これ以上にないものだろう」
「クラウスさん!!?」
「異論なし」
「いつかのお返しにもなりますね。」
「チェインさんにツェッド君まで!?てゆうかいつかっていつ!!?」
「……まーそういうことならノってやってもいいか。」
「何でザップさんまで乗り気なんですか!!?」
何故か満場一致で賛成の空気に戸惑う結理にお構いなしに、一同は少女に向き直った。一斉に注目の的となった##NAME2##は、逃げる事も出来ずに盛大に顔を引きつらせる。
「あ、あの……わたし生粋のジャパニーズなんでそうゆう系のはぶふっ!?」
どうにかこの状況を回避しようと言葉を紡ごうとする結理だったが、それは自慢のスピードを駆使して少女の肩に乗って来たソニックが、ぶにっと頬を突いたことで中断させられてしまった。不意打ちに驚いている内に、ソニックは先程のレオの真似なのか額にぶつかるようにキスをする。
「!?」
「ソニックもお祝いしたいってさ。」
「~~~~分……かりました…!」
色々と諦めのついた結理は、がっくりと肩を落としてから意を決したように顔を上げて、やけくそ気味に言い放った。
「さあもうどんと来い!こうなりゃ漏れなくありがたく受け取りますよ!!」
「そうこなくっちゃ!」
腹を決めた結理に歓声を返して、K.Kが少女を抱き寄せてその頬にキスをした。それから髪をすくように優しく頭を撫でて、微笑みかける。
「おめでとうユーリ。さあどんどん行くわよー!何せあと12分しかないんだから!」
(提案しといて何だけど握手会みたいなノリになっちゃったなあ……)
やや順番に並ぶようになってしまっている光景を見たレオが胸中で呟いている間も、少女に祝福が送られる。
「おめでとう結理」
チェインからは額に送られ、優しく抱き寄せられた。
「今度プレゼント選びに行こうね」
「……ありがとうございます」
「あー……何だったっけなー……場所によって意味あるんだよなー確か……」
記憶を手繰り寄せるように顔をしかめながらそう言ったザップは、結理の手を取って指先にキスを落としてから、少女を見てふっと笑みをこぼした。普段ぎゃあぎゃあ言い争うことの方が圧倒的に多い相手に柔らかく笑いかけられ、結理の顔が一気に赤くなる。
「……っ!」
「ヒュー!ザップっちキザー!!」
「どーせやるんならきっちりやりますよ」
「く…!こうゆう時ばっかり…!!」
「結理さん、」
思わぬ不意打ちに顔をしかめた結理に、ツェッドが声をかけた。腫れものを扱うようにそっと少女の頬に撫でるように触れ、瞼にキスを送る。
「おめでとうございます」
「……えへへ……ありがとうツェッド君」
「結理、」
静かに呼びかけながら、クラウスは結理の前に屈んだ。淑女をエスコートするように少女の手を取って、その甲にキスを落とすと真っ直ぐに目を見る。
「おめでとう。こうして君の誕生日を祝える事が、何よりの幸いだ」
「~~~~!あ、ありがとうございます…!」
視線と同じ真っ直ぐな言葉を真正面から受けた結理は、真っ赤になりつつもはにかんだ笑顔を見せ、どうにか言葉を返せた。
「残るは……」
その言葉につられるように、全員の視線が最後の一人になったスティーブンに向く。
「……あ、そうよね。全員って言ったらアンタも入るのよね」
「Goサイン出したのは君だろうK.K……」
「乗り気じゃないんなら全然いいですよ。強制イベントじゃないですし」
「やらないとは言ってないぞ」
これ幸いと辞退させようとした結理だったが、K.Kに睨まれて苦笑していたスティーブンはあっさり撥ね退けた。少女の目線まで屈むと自然な動作で抱き寄せて、キスを落とす。
「おめでとう、結理」
「!」
優しく祝いの言葉を囁かれた少女が三度赤面した直後、日付が変わったことを知らせる時報が通りに鳴り響いた。
「それじゃ、今回の打ち上げも兼ねて事務所でパーティーの続きといくか」
その号令で、全員が事務所へと足を向けた。祝福を送ってくれた仲間達の背中を見つめていた結理は、堪え切れなくなったようにうつむく。
送られた祝福は照れくさくて、恥ずかしくて、けれどとても……
「っ?ユーリ?」
「……何でもない。早く戻ろう?」
少女が歩きださないことに気付いて怪訝そうに声をかけてきたレオに、顔を上げた結理は晴れやかな笑顔を返していた。
end.
2024年8月31日 再掲