Imprisoned of 『M』
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旧サイト一万打企画リクエスト「誘拐された愛され夢主をライブラメンバーが全力で助けにいく」
フロントパークの舞姫という通称を持つ大道芸人、一之瀬結理の今日の演目は消失芸だった。軽い動きで高く跳び、着地の寸前で蜃気楼のように姿を消すという芸は普段の演目と変わらず、もしくはそれ以上に鮮やかだ。
……と、大半の観客は思い、誰もいなくなった場所に向かって拍手喝采を送り、箱の中に小銭や紙幣を投げ入れた。今日もいいものが見られた、次が楽しみだと口に出す者もいる。
だが、そうは思わなかった観客が二人いた。
一人は少女が持つ能力としてはあまりに不自然な消え方を怪訝に思っていた。こんなにも手の込んだ技を持っているのなら、普段からもっと活用しているはずだという疑問が称賛を忘れた。
そしてもう一人は少女が消えた経緯が『視えて』いて、普段閉じているように細い目を見開いて絶句していた。
顔を青ざめさせて少女が消えた場所を凝視している少年に気付いた一人が、訝しげに声をかける。
「レオ君?どうかしましたか?」
「……やべえっすよツェッドさん……!!」
「……ウィ、スティーブンうわっ!!…こら落ち着け少年!落ち着いてちゃんと説明しろ!お嬢さんがどうしたんだ?」
出るなり慌てて耳から電話を離したスティーブンから出た呼称に、執務室にいた面々は何となく顔を上げた。連絡をしてきたレオが酷く慌てているらしいこともあって、何かが起こっている以外の詳細はまだ分からない。
「何だあ?また貧血でぶっ倒れたかあのちんちくりん」
「その程度でレオが慌てる訳ないでしょ。今日も絶好調で脳みそ足りてないお猿ね」
「いちいち悪口言わなきゃいらんねえのかよ雌犬!」
「……結理がさらわれた!?」
『!!?』
どうにか落ち着いてくれたらしいレオの報告内容に、いつも通りに悪態の応酬をしていたザップとチェイン、慌てたレオからの結理に関する連絡という時点でそわそわしていたクラウスが、一斉に表情を強張らせた。何かと戦って貧血を起こしたでも、怪我をしたでもなく攫われたという言葉は誰もが予想外だった。
「さらわれた?あの自意識過剰センサー持ちがか?」
「嘘でしょ…?」
「……成程。レオナルドとツェッドはそのまま探索を続けてくれ。居場所を掴めたらすぐに連絡を。お嬢さんの感知を掻い潜った相手だ、深追いは絶対にするなよ?」
電話での指示を終えて室内のメンバーを見渡したスティーブンも、表情に緊張を見せている。
「……フロントパークで大道芸をしていた最中に、結理が突然姿を消したらしい。『視えて』いたレオによると、地面から現れた黒い箱の様な『何か』が彼女を飲み込んで、そのまま連れ去ったそうだ。結理の感知に寸前まで引っかからず、レオの『眼』だけが捉えられるような高度な術を持つ相手だ。ただのチンピラではないだろうな。チェインは念の為結理の携帯のGPSを追ってくれ。ザップはレオとツェッドに合流して一緒に探索を」
「はい」
「ウッス」
「クラウス、僕等は……」
即座に指示を出してリーダーへ視線をやったスティーブンは、その先の言葉を続けられなかった。
室内の空気が軋む程の闘気を発し、鬼のような形相で拳を握りしめているクラウスを見て、三人は「うわ怖い……」と同時に思っていた。多分また、様々な事態を想定して胃に穴が空きそうな程思考を巡らせているのだろうクラウスに、笑っていいのか呆れていいのか判断に困りつつもスティーブンが言葉を投げる。
「落ち着けクラウス!あの結理だぞ?そう簡単に何かされたりはしないだろ」
「だからこそだ」
「?」
「結理の感知能力を掻い潜った相手の力は未知数だ。だがそれでも、彼女は大人しく捕まってはいないだろう。その未知の相手に戦闘へと発展する可能性もある」
「……在り得る……というか確実にそうなるな」
「大人しく助け待つ奴じゃねえし」
「事態が大きくなりかねませんね」
「もしまた無茶をして、敵地のど真ん中で貧血を起こすようなポカをやらかしたら……」
「「「………………」」」
「……急ぐぞ!!」
その様を想像してしまい、満場一致で頷いた秘密結社ライブラのメンバーは慌てて少女救出の為に動きだした。
一方で、結理が消えた現場ではレオが探索を続けていた。少女の、もしくは少女を連れ去った『何か』のオーラの残滓を辿ろうと目を凝らし続けているが、『何か』の移動速度が早かったのか空間転移の様な方法で消えたのか、中々オーラを捉えることが出来ない。
「……熱つつ…!」
「レオ君、あんまり無理はしないでください」
「そうもいかないっすよ。早いとこ連れ去られた場所だけでも見つけないと、ユーリのことだからまた暴れ出しますよ?」
「それはそうですけど……」
「風使いのお兄ちゃん」
「?」
酷使した『義眼』が熱を持ち始めても探索を止めないレオにツェッドが心配から言葉をかけていると、その二人に向かって子供が駆けてきた。目線までしゃがんだツェッドに、子供は手に持っていた折り畳まれた紙を差し出す。
「向こうにいたおじさんがお兄ちゃん達に渡してくれって」
「それ、どんな人?」
「普通のおじさん。ねえ、今日は舞姫のお姉ちゃんとやんないの?」
「それはまた今度に」
「ふーん」
返答につまらなそうに息をついて、子供は友人達の所へ駆けていった。残されたレオとツェッドは顔を見合わせてから、手渡された紙を開く。
「……『乙女(メイデン)は預かった。返してほしくば君達のボスを連れて××倉庫C棟に来い』……これって…!!」
「と、とにかく連絡しましょう!」
紙に書かれていた内容は、少女がどこに所属しているのかを把握していることをにおわせていた。ツェッドと再び顔を見合わせたレオは慌てて携帯を取り出してかけると、相手は1コールで出た。
『お嬢さんは見つかったか?』
「ダメです。オーラが完全に途切れちゃってて…でも手紙を渡されたんです!」
書かれていた内容と渡された経緯を説明してから、レオは恐る恐る自分の見解を口にする。
「……これ、多分僕等もですけど、ユーリがライブラだって割れてますよね…?」
『……恐らくはな。ひとまずその指定された場所へ向かう。途中で君等も拾うからこれからメールするルートで向かってくれ』
「はい!」
(うーん……営業でもそこそこ能力見せてるのに、それでも『ただの人類のお嬢ちゃん』なのかあ。やっぱこの見てくれは結構損だよなあ……)
以前忠告されたことを実感しながら、結理は暗い空間を見回していた。着地を決める直前に謎の空間に閉じ込められ、状況を探っている間に大道芸をしていた公園からは大分離れた場所に移動していて、どうやら空間を操る類の能力者に捕まったようだ。
即座に何かをされる様子はなかったので、危険の探知以外は特に身構えもせずに待っていたら、犯人であろう声で一方的に状況を告げられた。
その完全にこちらを見下している口調と放られた言葉を聞いて、即座に反撃しないで顔をしかめただけで済ませた自分を褒めてやりたいぐらいだ。できなかったというのも無きにしも非ずだが。
「なーにが『可哀想になあお嬢ちゃん。ライブラなんかにいなきゃそれなりに平和に暮らせてたのによお』だ。そもそもこの見てくれでHLで大道芸してる時点で察しろよ…!」
簡単に説明されたが、犯人はライブラの情報を得る為に少女の容姿の自分を人質として誘拐したらしい。恐らく何らかの事情でライブラに保護されている子供と判断されたのだろう。あながち間違ってもいないが、肝心な所が抜けている。
(でもまあ……探知にギリギリまで拾われなかったこの術は、すごいっちゃすごいよなあ……)
問答無用で食い殺されるような類でなくてよかったと息をつきつつ、結理は軽く足元を踏み鳴らしながら探知感度を広げた。黒い地面の感触は硬く、空間はそれなりに広い。打ち破れないかと考えて手で地面に触れてみるが、簡単には破壊できそうになかった。全力で攻撃すればどうにかできるだろうが、外の気配を捉えきれない状態で余力を残さず脱出するというのもリスクが高い。
(どうしよう……人質ってことは多分、いや絶対クラウスさん達呼び出すよなあ……そうなる前に出たいんだけど……血晶石何個残ってたかな…?)
「……っ…?」
脱出の方法を考えていると、不意に探知が空間の内側で何かの気配を捉えた。あまりいい予感のしない気配に振り向き、
「うわ……!」
思わず顔を引きつらせた。
フロントパークの舞姫という通称を持つ大道芸人、一之瀬結理の今日の演目は消失芸だった。軽い動きで高く跳び、着地の寸前で蜃気楼のように姿を消すという芸は普段の演目と変わらず、もしくはそれ以上に鮮やかだ。
……と、大半の観客は思い、誰もいなくなった場所に向かって拍手喝采を送り、箱の中に小銭や紙幣を投げ入れた。今日もいいものが見られた、次が楽しみだと口に出す者もいる。
だが、そうは思わなかった観客が二人いた。
一人は少女が持つ能力としてはあまりに不自然な消え方を怪訝に思っていた。こんなにも手の込んだ技を持っているのなら、普段からもっと活用しているはずだという疑問が称賛を忘れた。
そしてもう一人は少女が消えた経緯が『視えて』いて、普段閉じているように細い目を見開いて絶句していた。
顔を青ざめさせて少女が消えた場所を凝視している少年に気付いた一人が、訝しげに声をかける。
「レオ君?どうかしましたか?」
「……やべえっすよツェッドさん……!!」
「……ウィ、スティーブンうわっ!!…こら落ち着け少年!落ち着いてちゃんと説明しろ!お嬢さんがどうしたんだ?」
出るなり慌てて耳から電話を離したスティーブンから出た呼称に、執務室にいた面々は何となく顔を上げた。連絡をしてきたレオが酷く慌てているらしいこともあって、何かが起こっている以外の詳細はまだ分からない。
「何だあ?また貧血でぶっ倒れたかあのちんちくりん」
「その程度でレオが慌てる訳ないでしょ。今日も絶好調で脳みそ足りてないお猿ね」
「いちいち悪口言わなきゃいらんねえのかよ雌犬!」
「……結理がさらわれた!?」
『!!?』
どうにか落ち着いてくれたらしいレオの報告内容に、いつも通りに悪態の応酬をしていたザップとチェイン、慌てたレオからの結理に関する連絡という時点でそわそわしていたクラウスが、一斉に表情を強張らせた。何かと戦って貧血を起こしたでも、怪我をしたでもなく攫われたという言葉は誰もが予想外だった。
「さらわれた?あの自意識過剰センサー持ちがか?」
「嘘でしょ…?」
「……成程。レオナルドとツェッドはそのまま探索を続けてくれ。居場所を掴めたらすぐに連絡を。お嬢さんの感知を掻い潜った相手だ、深追いは絶対にするなよ?」
電話での指示を終えて室内のメンバーを見渡したスティーブンも、表情に緊張を見せている。
「……フロントパークで大道芸をしていた最中に、結理が突然姿を消したらしい。『視えて』いたレオによると、地面から現れた黒い箱の様な『何か』が彼女を飲み込んで、そのまま連れ去ったそうだ。結理の感知に寸前まで引っかからず、レオの『眼』だけが捉えられるような高度な術を持つ相手だ。ただのチンピラではないだろうな。チェインは念の為結理の携帯のGPSを追ってくれ。ザップはレオとツェッドに合流して一緒に探索を」
「はい」
「ウッス」
「クラウス、僕等は……」
即座に指示を出してリーダーへ視線をやったスティーブンは、その先の言葉を続けられなかった。
室内の空気が軋む程の闘気を発し、鬼のような形相で拳を握りしめているクラウスを見て、三人は「うわ怖い……」と同時に思っていた。多分また、様々な事態を想定して胃に穴が空きそうな程思考を巡らせているのだろうクラウスに、笑っていいのか呆れていいのか判断に困りつつもスティーブンが言葉を投げる。
「落ち着けクラウス!あの結理だぞ?そう簡単に何かされたりはしないだろ」
「だからこそだ」
「?」
「結理の感知能力を掻い潜った相手の力は未知数だ。だがそれでも、彼女は大人しく捕まってはいないだろう。その未知の相手に戦闘へと発展する可能性もある」
「……在り得る……というか確実にそうなるな」
「大人しく助け待つ奴じゃねえし」
「事態が大きくなりかねませんね」
「もしまた無茶をして、敵地のど真ん中で貧血を起こすようなポカをやらかしたら……」
「「「………………」」」
「……急ぐぞ!!」
その様を想像してしまい、満場一致で頷いた秘密結社ライブラのメンバーは慌てて少女救出の為に動きだした。
一方で、結理が消えた現場ではレオが探索を続けていた。少女の、もしくは少女を連れ去った『何か』のオーラの残滓を辿ろうと目を凝らし続けているが、『何か』の移動速度が早かったのか空間転移の様な方法で消えたのか、中々オーラを捉えることが出来ない。
「……熱つつ…!」
「レオ君、あんまり無理はしないでください」
「そうもいかないっすよ。早いとこ連れ去られた場所だけでも見つけないと、ユーリのことだからまた暴れ出しますよ?」
「それはそうですけど……」
「風使いのお兄ちゃん」
「?」
酷使した『義眼』が熱を持ち始めても探索を止めないレオにツェッドが心配から言葉をかけていると、その二人に向かって子供が駆けてきた。目線までしゃがんだツェッドに、子供は手に持っていた折り畳まれた紙を差し出す。
「向こうにいたおじさんがお兄ちゃん達に渡してくれって」
「それ、どんな人?」
「普通のおじさん。ねえ、今日は舞姫のお姉ちゃんとやんないの?」
「それはまた今度に」
「ふーん」
返答につまらなそうに息をついて、子供は友人達の所へ駆けていった。残されたレオとツェッドは顔を見合わせてから、手渡された紙を開く。
「……『乙女(メイデン)は預かった。返してほしくば君達のボスを連れて××倉庫C棟に来い』……これって…!!」
「と、とにかく連絡しましょう!」
紙に書かれていた内容は、少女がどこに所属しているのかを把握していることをにおわせていた。ツェッドと再び顔を見合わせたレオは慌てて携帯を取り出してかけると、相手は1コールで出た。
『お嬢さんは見つかったか?』
「ダメです。オーラが完全に途切れちゃってて…でも手紙を渡されたんです!」
書かれていた内容と渡された経緯を説明してから、レオは恐る恐る自分の見解を口にする。
「……これ、多分僕等もですけど、ユーリがライブラだって割れてますよね…?」
『……恐らくはな。ひとまずその指定された場所へ向かう。途中で君等も拾うからこれからメールするルートで向かってくれ』
「はい!」
(うーん……営業でもそこそこ能力見せてるのに、それでも『ただの人類のお嬢ちゃん』なのかあ。やっぱこの見てくれは結構損だよなあ……)
以前忠告されたことを実感しながら、結理は暗い空間を見回していた。着地を決める直前に謎の空間に閉じ込められ、状況を探っている間に大道芸をしていた公園からは大分離れた場所に移動していて、どうやら空間を操る類の能力者に捕まったようだ。
即座に何かをされる様子はなかったので、危険の探知以外は特に身構えもせずに待っていたら、犯人であろう声で一方的に状況を告げられた。
その完全にこちらを見下している口調と放られた言葉を聞いて、即座に反撃しないで顔をしかめただけで済ませた自分を褒めてやりたいぐらいだ。できなかったというのも無きにしも非ずだが。
「なーにが『可哀想になあお嬢ちゃん。ライブラなんかにいなきゃそれなりに平和に暮らせてたのによお』だ。そもそもこの見てくれでHLで大道芸してる時点で察しろよ…!」
簡単に説明されたが、犯人はライブラの情報を得る為に少女の容姿の自分を人質として誘拐したらしい。恐らく何らかの事情でライブラに保護されている子供と判断されたのだろう。あながち間違ってもいないが、肝心な所が抜けている。
(でもまあ……探知にギリギリまで拾われなかったこの術は、すごいっちゃすごいよなあ……)
問答無用で食い殺されるような類でなくてよかったと息をつきつつ、結理は軽く足元を踏み鳴らしながら探知感度を広げた。黒い地面の感触は硬く、空間はそれなりに広い。打ち破れないかと考えて手で地面に触れてみるが、簡単には破壊できそうになかった。全力で攻撃すればどうにかできるだろうが、外の気配を捉えきれない状態で余力を残さず脱出するというのもリスクが高い。
(どうしよう……人質ってことは多分、いや絶対クラウスさん達呼び出すよなあ……そうなる前に出たいんだけど……血晶石何個残ってたかな…?)
「……っ…?」
脱出の方法を考えていると、不意に探知が空間の内側で何かの気配を捉えた。あまりいい予感のしない気配に振り向き、
「うわ……!」
思わず顔を引きつらせた。