幕間:正しいレディの扱い方
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「なあクラウス、」
そんな『事件』があった少し後、堪りかねたスティーブンはクラウスを咎めるように指摘していた。
「君ちょっと、結理のことを子供扱いし過ぎじゃないか?」
「……そうだろうか?」
「そうだよ。確かに彼女の見た目はティーンだし普段の言動も子供っぽいけど、あれでも中身は見た目よりも年を重ねてるそうじゃないか。そんな子に対して、ちょっとスキンシップ過多だぞ?」
「……ぅ……」
「まあ……普段が普段だからついってことはあるかもしれないが、それにしたってレディに対する配慮が君にしては」
「ぶっははははははははははははははははは!!!!」
「!?」
難しげに顔をしかめたクラウスに、この際だからと言い詰めようとしたスティーブンだったが、それは部屋中に響くような盛大な笑い声に遮られた。驚いて声の発生源を見ると、ソファに座っていたK.Kが思い切りのけ反ってひきつけを起こしそうな勢いで笑っていて、彼女の向かいに座っているザップも声こそ発していないが顔を背けて肩を震わせている。
ちなみにではあるが、話題の中心である結理はおつかいを言い渡されて現在外出中だ。
「……二人揃ってどうしたんだ?」
「子供…!ユーリっち……子供扱いとか!!レディ……アンタが……あっはははははははは!!ひー……くるし…!ちょっと……あははははははははははっ!!!」
「ちょ……姐さ……ぶふ……そんな、笑ったら……ぐふっ…!」
遠慮なく爆笑するK.Kをどうにか宥めようとしているザップだが、自身も笑いが堪え切れないようで言葉の合間に変な声を漏らしている。
とりあえずザップの方に狙いを定めて、スティーブンはやや温度の低い視線を飛ばした。
「……ザップ、言いたいことがあるんならはっきり言え」
「いや……今マジ勘弁して下さい…!姐さんから言ってやってくださいよ!」
「ちょっ……待って…!今無理…!!」
そうしてひとしきり動と静の爆笑をしてから、K.Kとザップは疲れ切ったように荒く息をしながら同じ体勢で腹を抱えていた。それから、まだ若干笑いが収まっていない様子だったK.Kが先に顔を上げる。
「それで?何がそんなにおかしかったんだい?」
「アンタも人のこと言えないってことよ!」
「……は?」
びしりと指を差されたスティーブンが、心底から訳が分からないと言いたげに顔をしかめると、それを見たザップが驚いたように目を丸くした。
「マジで自覚ないんすね…!」
「だから何が?」
「スターフェイズさんも中々あのちんちくりんのことガキ扱いしてますよ」
「分かんなくはないわよ?ちっちゃいし可愛いしつい構いたくなるし、家の娘にしたいぐらい。けどアンタとついでにクラっちはユーリのこと可愛がり過ぎよ!特にスカーフェイス!いつの間にそんなにユーリのこと気に入ってんのよ!?」
「……ええ!?」
K.Kの断言に、スティーブンは冤罪を突き付けられたかのように表情を驚愕の色に染めて、全力で反論していた。言い返したいことは他にもあったが、今一番反論しなくてはならないことを最優先で言葉に出す。
「子供扱いならクラウスの方がしてるだろう!事あるごとにひょいひょい持ち上げるしすぐ甘やかすし、この間なんてプロスフェアーの対局見せるのに彼女のこと自分の膝の上に乗せたんだぞ?」
「何それ!何でそんな素敵な光景撮んなかったのよ!!?」
「ミズ・K.K、その時のお写真ならこちらに」
「ナイスギルベルトさん!」
(いつ撮ったんだ…!?)
「くぅぅ…!眼福…!やだ膝枕まで…っ!!やっぱりクラっちはそのままでいいわ…!こんな癒しの景色がライブラ(こんなとこ)で見られるなんて…!!」
「……僕はこんなことはしないぞ」
「したらとっくに蜂の巣にしてるわよ!けどアンタの行動は例えるなら……そう!初めてできた姪っ子可愛がってるおじさん!それよ!」
「あー、それっぽいすよねー。つい甘やかすってやつっしょ?」
「確かに……甘やかすという意味合いではスティーブンの方が結理に対して行動に移している」
「クラウスまで!」
「旦那も大概だけどな」
「ザップっち、今それ言うとこじれるから黙っときなさい」
指摘する側にいたはずなのにいつの間にか立場が逆転してしまい、スティーブンは困惑に顔をしかめる。
確かにK.Kの言う通り、結理は小柄な少女という多数の人間がつい可愛がりたくなるような容姿をしている。だがその多数の中に自分が入っているとは思っていない。見た目で過小評価や過大評価をしたりせず、きちんと線引きをして接しているつもりだ。
だが、周囲から見るとそうでもないらしく、スティーブンも少女をつい構いたくなる多数の中に入っているようだ。