幕間:正しいレディの扱い方
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「戻りましたー」
「結理、丁度いい所に」
「はい?」
そんな出来事からしばらく経ったある日、昼食を外でとって戻った所でクラウスに呼ばれた結理は首を傾げた。
「これからプロスフェアーのネット対戦をするのだが、君も観戦するか?」
「え!?はいぜひ!」
最近教えてもらい、まだルールも勉強中だが覚える程楽しみが増えていくボードゲームの観戦を断る理由もなく、結理はぱっと表情を輝かせながら即答してクラウスのデスクに駆け寄った。横に並ぶように少女がパソコン画面を覗き込む頃には、クラウスもデスクを片付けてパソコンをネットに繋ぐ。
「今日もヤマカワさんとですか?」
「いや、今日はミスター・ハネダと対局する」
「うわー…!ハネダさん指し方正統派でいいですよねえ…!」
「君にも分かるか…!」
「はい!実はハネダさんとは将棋で対戦したことあって、そっちでもすっごい綺麗な指し方するんです…!」
(好きだなあの二人も……)
そんなクラウスと結理のやり取りを、スティーブンが何ともなしに見やりながら胸中で呟いた。それには当然気付いているはずもない二人はいそいそと準備をしていたが、不意にクラウスが何かに気付いたように、立ったままパソコン画面を見ている結理の方を向いた。
「結理、そのままでは見辛くはないかね?」
「え?そんなことないですよ?ここからでも普通に見えますし」
「しかし君を立たせたままなのは……そうだ、」
「?へ?わ……ちょ、クラウスさ……わ…!!」
「っ!?」
少女が首を傾げた時には、その小柄な体は簡単に持ち上げられていた。一体何がどうなってこうなっているのかと盛大に慌てている間に、結理はクラウスの膝の上に乗せられる。その光景を見ていたスティーブンはコーヒーを噴き出しそうになったが、原因の二人は気付いた様子もない。
「ここなら正面から画面を見られる」
「……おお……確かに見やすいですね……」
「って、普通に受け入れるんじゃない結理!!」
拒否をするかと思ったら予想外にあっさり受け入れて目を丸くした少女に、スティーブンは思わず突っ込みを入れていた。だが当の本人達は揃ってきょとんとした表情でスティーブンの方を向く。
「いや二人揃って何言ってんだこいつみたいな顔しないでくれ……というかお嬢さん、君今慌ててたじゃないか」
「そりゃあいきなり持ち上げられたら慌てますよ。できれば行動に移す前に言って欲しいです」
「む……確かに配慮が足らなかった。今度からは事前に声をかけよう」
「でも、これだとクラウスさんがプレイし辛くないですか?」
「結理さん」
少女の問いにクラウスが答えるよりも早く、いつの間にかやってきたギルベルトが言葉を滑り込ませた。
「こちらの椅子をどうぞ。坊ちゃんのお膝の上でも見やすくてよろしいかと思いますが、どちらかが動いた際にぶつかってしまっては互いに大変ですので」
「あ……そうですよね……ありがとうございますギルベルトさん」
それらしい言葉に頷いた結理は、素直にギルベルトの用意してくれた簡易椅子に移動する。その光景を何とも言えない表情で見ていたスティーブンは、老年の執事とこっそり顔を見合わせた。