日常に至る経緯11
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「ごめんなさいぃぃぃぃ…!!わたしがちゃんと引っ張れればあぁぁぁぁ…っ!!!」
「謝らなければならないのは私の方だ。私の不注意が原因で君まで巻き込んでしまった」
泣きたい気分で全力で謝るわたしに、クラウスさんはやっぱりって言うべきかそんな言葉をかけてくれた。その紳士な返答が今は逆に心に来る…!!
いや、だって……わたしがザップさんみたく網張るなり何なりしとけば、二人揃って閉じ込められるなんて事態になんなかったのは事実じゃないか!くそう!判断誤ったわたしの馬鹿!!
「でも!……いや、やめましょう」
……って、思ったけど、それを延々議論してもしょうがないし永遠に平行線になるだろうから止めた。全て過ぎたことだ。罪滅ぼしに箱ぶっ壊すべきなんだろうけど、内側から壊すには外からより更に強い衝撃じゃないとダメらしくて、ここで打ち止めになるくらい全力でやらないと無理そうだから断念した。この間無鉄砲が過ぎるって叱られたばっかだし……クラウスさんのお説教は強烈なボディーブローより効く。
「ここでどっちがどうとか言い合ってもしょうがないです。悪かったのは全部運とタイミングですよ。今は……大人しく助けを待ちましょう……」
一応スティーブンさんには連絡済みだし(状況を説明したら思い切りため息つかれた)、箱は電波の類を遮断したりはしないみたいだからわたしのGPSを辿って誰かが来てくれるだろう。幸い外はどっかの路地裏というかビルの隙間みたいで、誰かが来る気配も危ない感じもない。一応探知は続けてるけど、まあ……多分大丈夫だろう。
「狭くはないかね?」
「いえいえ全然!クラウスさんの方こそ大丈夫ですか?」
「問題ない」
「あはは……わたしが小柄でよかったです」
わたし達を閉じ込めた箱はあんまり大きくなくて、わたしは座ってるクラウスさんに抱きかかえられてるというか、ほとんど包まれてるような形になってる。これがわたしじゃなくてスティーブンさんやザップさんだったら、狭いどころか下手したら窒息しちゃうだろう。
……想像したら絵面がすごいな……特にクラウスさんとスティーブンさんだったら……わたしらですら隙間なんてほとんどないから、みっちり感半端ないだろうな……
クラウスさんには何やかんやでよく抱え上げられるけど、ここまで密着することはあんまりない。身長差も体格差も半端ないからまるで親子……いや、大熊と小熊って感じだ。上司を熊呼ばわりとか失礼極まりないから口には出しませんけれど!
そんなことをつい思っちゃうくらい、クラウスさんに抱えられてる態勢は安定感というか安心感がある。普段ひょいひょい持ち上げられても嫌な感じがしないのは、その安定感のおかげもあるのかもしれない……というかものすごい自然に人のこと持ち上げるから驚く暇もないんだけど……
それと、ちょっと体温高くてあったかいのも安心感にプラスされてる気がする。ザップさんも体温高めだから、血法使いはみんな体温高いんだろうか…?いや、スティーブンさんはどうなんだろう…?属性氷だし……
「……ん……」
……というか……やばい……
「結理?」
「!あ、大丈夫です」
……ね……眠くなってきた…!
おい何考えてるわたし!いくら雑談する程度には暇だからって今は大絶賛任務中だぞ!でも昨日半日ぐらいずっと読みものしててその後でスティーブンさんに事務仕事たんまり手伝わされて徹夜寸前まで残業したし今日ちょっと肌寒かったし……つまり若干疲れ気味+クラウスさんに抱っこされてるのがぬくいから気が緩む…!何だこの安心感!人をダメにする紳士か!!あーダメだ……思考おかしくなってきてる……
とにかくこの状況は非常にまずい…!何とか…何とか会話を続けないと本当に寝ちゃう!!
「そ、それにしても、こんな箱作れるなんてすごい技術ですよね」
「うむ。HLができて以降、こういった技術は加速的に進歩している」
こんな時にって叱られるかな?ってちらっと思ったけど、クラウスさんは普通に受け答えをしてくれた。よかった……軽い雑談ならできそうだ……
「そうですよね……異界の技術って、人間にとっては考えてもみなかったアプローチとかありますもんね……そうでなくても魔術の類も今まで見たことないものが多いですし。事務所にある魔導書とか読ませてもらってますけど、こんな組み合わせがあるんだ!って、びっくりしますもん」
多分、おばあちゃんがいたら一日中本棚から離れないぐらい、この世界の魔術は結構多様だ。それに加えて異界の技術が組み合わさって、わたしじゃ到底理解できない仕組みの術や技もたくさんある。それを最も効率的かつ恐ろしい応用力で使ってるのがあのハタ迷惑などこぞの堕落王だと思うと、本当に腹が立つ…!もっと有意義に使え有意義に!!
今わたし達を閉じ込めてる箱だって、そのすごい技術の一つだ。モ●スターボールの実用化なんて、人外ごった煮のわたしがいうのもあれだけどかなりファンタジーだと思う。めちゃくちゃ失敗してるけど。
「魔術の類には造詣が深いのかね?」
「いえ全然。基礎はある程度できますけど、それ以上はさっぱりですね。だから普段見せてるみたいに風や火を起こしたりする程度しかできません。でも、分かんなくても蔵書を読むのは楽しいですよ」
そのおかげで得られたものとかも結構あったりするし。
魔術の解析や応用は得意じゃないけど、既存の術なら解説がちゃんとしてれば結構何とかなるから、色々と試させてもらってる。
「この間読んだ本は、血界の眷属の空間連結についての仮説が書かれてて、すごい参考になりました」
……ヤバい……眠気の波がまた来た……喋って何とか起きないと…!
「魔導書読んでると……色々と……手がかりが、ありそうで……夢中に、なっちゃいます……」
「手がかり?」
「……本当は……ずっと……探してるんです……今も……」
……そうだ。魔術に関する蔵書を読むのは、楽しいからだけじゃない。
わたしには探してるものがある。その探してるものの手がかりになるんじゃないかって内容の本も、いくつかあった。まあ、わたしレベルじゃ理解もできなかったり、色んな意味で実践できないものばかりだったけど…
「わたしは……知りたいん、です……」
いつか手が届くのか、ずっと手が届かないままなのか、探すことすら無意味なのか。
どんなことでもいいから………
「わたしの………………」