日常に至る経緯10
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その光景を、場にいた全員は唖然とした表情で見ていることしかできなかった。
昼下がりのグランドセントラル消失公園に、カエルの姿を模したゴーレムが突如複数体現れて見境なく暴れ出した。ポリスーツ隊が文字通りに放り投げられている中を駆け付けたライブラの面々だったが、ゴーレムは破壊しても燃やしても凍らせても再生を続け、何事もなかったかのように再び暴れ出す。
親玉らしき一際大きなカエルゴーレムを攻撃しても同様に再生を続け、攻略法どころかゴーレムを操作している者すら見当がつかない中、不意に結理が親玉(仮)のゴーレムに向かって駆け出した。
一体何をする気だと誰かが声をかける間もなく少女は飛び上がり……
何の躊躇いもなく大口を開けたカエルの中に飛び込んでいった。
「…………って!何してやがんだあのちんちくりん!!」
一瞬以上呆然としていたザップが慌てて駆け出そうとする直前、獲物を飲み込んで満足げな様子を見せていたゴーレムが急に苦しむように身じろいだ。それにつられたように、他のゴーレム達も動きを止める。
それから数秒後、親玉ゴーレムの腹から巨大な赤い棘が生えた。次いで背中や他の個所からも次々と赤い棘が生え、硬いものが砕けるような音と一緒にゴーレムが破裂するように弾け飛び、土塊となって崩れ落ちた。
「……よし、終わり」
土塊の中から出てきて、他のゴーレムが同様に土塊になったことを確認した結理は、息をつきながら何でもないように髪や体についた破片を払い落す。
「……バーサーカーかよあいつ……」
思わずといった風にこぼれたザップの呟きを、否定する者はいなかった。
「君は無鉄砲が過ぎる」
「いや……一応危険がないことを確認はしましたよ?毒の気配とかしなかったし、それにあれは内側からじゃないと破壊できなかったものですし……」
「だとしてもだ」
戸惑っているような表情で反論する少女に、スティーブンがぴしゃりと告げてついでに軽く睨む。睨まれた結理は気まずげに視線を逸らした。
「君の感知能力の精度は確かなのはこっちも把握してる。だがそれ以前に、あんな無謀すぎる戦法を平然と取ることが問題なんだ。先週のブロンクスファミリーのガサ入れの件もそう。僕は制圧しろと指示したはずなのに君は何をした?連中の戦力が予想外だったと言ってヤサごと根こそぎぶっ飛ばした揚句、貧血で動けなくなったな?」
「っとに暴れん坊なチビッ子だなお前」
「ちなみにブロンクスファミリーの件はお前も同罪だぞザップ。いつになったら始末書を出すんだ?」
「!」
混ぜっ返したつもりが思わぬ藪をつついてしまい、ザップも少女同様に視線を逸らす。そんな二人に氷の視線を飛ばしてから、スティーブンははあとため息をついた。
「本当に……こんなんでよく今まで生きてこられたな」
「しぶといのが取り柄なんで」
「褒めてないぞ」
「……結理、」
若干誇らしげに言う少女にスティーブンが即座に言い返し、クラウスが静かに名前を呼んだ。今までどこかしれっとしていた結理は、クラウスに呼ばれて少しだけ表情を引きつらせる。
「熟慮を重ねた上での行動だとしても、君の無茶な姿勢は目に余る所がある。今回は何事もなかったがそれは結果論に過ぎない」
「……っ……」
「私は君に鉄砲玉の様な行動をさせる為にライブラに勧誘したわけではない」
言い聞かせるように告げる声音は真剣で重く、結理は射竦められたように押し黙って直立していた。
「今一度、自身の行動がいかに危険であったかを省みて欲しい」
「……はい……」
有無を言わせない響きのある言葉に、少女は頷くことしかできなかった。