日常に至る経緯9
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ライブラの事務所に温室があるのは知ってたけど、実際に入るのは初めてだった。
中は思ってた以上に広くて、普通の植物だけじゃなくて見たこともない植物も沢山並んでいた。
正直……すごいワクワクした。
「うわあすごいですねえ…!これ全部クラウスさんが?」
「ああ。植物を育てるのは昔からの趣味でね、それが高じてこんなにも大きくなってしまった」
「ふわー……」
園芸は手伝い程度の知識しかないけど、そのちょっとの知識でもここの温室のレベルの高さが分かる。もう植物園に近い。お母さんやおばあちゃんがいたらテンションダダ上がりしてただろうなあ……
「結理君、鉢はここに置き給え。ここなら日当たりもいいし、よく育つだろう」
「ありがとうございます。あーでも、肥料無駄になっちゃったなあ……」
フリージアってことは確か水をちゃんとあげるだけでも育つから、肥料はいらなかったはずだ。異界交配種ってことを差し引いても、こんなにはいらないだろう。作る材料まで買っちゃって張り切りすぎだろわたし……
「クラウスさん、肥料とかっていりますか?一から作る用の材料もあるんですけど……」
「……君が良ければ、こちらで頂いてもいいかな?」
「はいもちろん!アパートじゃ家庭菜園とかできるスペースないですし、そもそもする予定もないんで」
「肥料を作れるのかね?」
「はい。母と祖母二人が家庭菜園が趣味だったんで、その手伝いでちょっとだけ」
質問に答えると、クラウスさんはちょっとだけ考えるみたいに黙った。何だろう…?わたし何かマズイこと言ったか…?いや、逆に言わなきゃいけないこと言ってなかった?
「……結理君、」
「はい」
「よければ、肥料を作る所を見せてもらえないだろうか?」
「え……?」
予想外のことを言われて、わたしは即答が出来なかった。
正直あんまり人に見せられるような腕でもないんだけど……ダメだ、クラウスさん超期待してる。いつもどんな感情でも怖い顔になる人が超目ぇきらきらさせてる……趣味が同じ人見つけたって顔してる……趣味にはしてないんだけど断り辛い…!!
「えっと……はい。久しぶりなんでうまくいかないかもしれないですけど、それでもよければ……」
まあ、既存のキット配合するだけだし変なのは出来ないだろう。一応買う時に成分見たけど、変なのは入ってなかったし。
そう思って返事をして、わたしは早速肥料作りに取り掛かった。ていっても配合キットの薬品を混ぜるだけなんだけど、そこから記憶を頼りに配合比率にアレンジを加える。日当たりがいい場所があっても、ヘルサレムズ・ロットは基本的に霧で覆われてるから入って来る日差しもたかが知れてる。となると……こっち重視かな…?あ、ついでにさっき買った栄養剤使おう。えーっと確か比率は……
「……こんなもんかな?」
正直自信はないけど、ヤバいもんは出来てないはずだ。効果ゼロの可能性は若干あるけど、枯らしはしない。
「成長促進って言うよりは、現状維持が重視みたいな感じです。少ない水で育てる植物とかに使うと相性いいですかね?異界(あっち)系のに効果あるかは分かりませんけど……」
「ありがとう。早速試させてもらうよ」
出来あがった肥料を渡すと、クラウスさんはすごいうきうきした感じでお礼を言った。今日すごい機嫌いいな……いや、機嫌悪くしてるクラウスさんって見たことないけど、そんなに園芸仲間いないのか…?少なくともライブラ内じゃいないか……
「しかしとても手慣れていた。肥料はよく作っていたのかね?」
「はい、まあ……て言っても、化学的な比率とか配合とかからっきしだったんで、たまに全然効果ないのとか出来あがってました」
本当に、絵に描いたような理数系ダメ子でやっちゃいけない配合覚えるので精一杯だったから、ぶっちゃけお母さん達がわたしに肥料作らせるのは博打的楽しみ方もあったと思う。
「だから手伝う時は土作りとか鉢増しとか、そうゆうのが多かったです」
「成程…!」
あ、ヤバい、自分から踏み込んじゃった。クラウスさん超楽しそうだ。後ろで花飛んでる幻覚が見えるくらい楽しそうだ。あーもうこれは後には引けないな……
「……えっと……よかったら、何か手伝いますか?」
「!是非お願いしたい」
おお……飛んでる花が増えた……