日常に至る経緯8
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「だいたいよぉー、人一人起こすのに枕一個ダメにしてんじゃねえよー、レンカ泣きそうな顔してたじゃねえかー。あれあいつのお気に入りだったんだぞー?」
「誰のせいだと思ってんですか誰の!ヤり過ぎで次の日起きらんないとかどこのエロ漫画のオチですか!」
座席の後部に座ってぶちぶちと文句をこぼすザップに言い返しながら、結理はベスパを走らせていた。さっきまでいたアパートはザップの自宅ではなく愛人の一人が借りている部屋で、今日はランブレッタは置いてきたらしいので仕方なしにベスパに同乗させることになってしまっている。
「つかスティーブンさんも何つーとこに人送り込んでんだ…!ザップさんがああゆう生活してんのは薄々は知ってたけど……何が楽しくて乱交後の先輩なんて見に行かなきゃなんないの…!?」
心底嫌そうに呻く結理だが、先程の遠慮ない発言のせいで向かわせても問題ないと判断されたことには気付いていない。
「お前そういうの旦那の前で言うなよ?ティーンの女がヤるだの乱交だの言ってるの聞いたら卒倒するぜ?」
「さっきスティーブンさんにも同じこと言われました。てゆうかザップさん相手でもない限りこんなこと言いませんよ…!」
「注意されてる時点で番頭にも言ってんじゃねえか」
「……訂正します。ザップさん絡みの話題じゃなきゃ下系のスラングなんてそうそう言いません」
きっぱりと言い切った結理は、道に落ちていた大きめの瓦礫を避けた。近くで何かあったらしく、車道と歩道の一部がめくれあがるように割れていて、ポリスーツが慌ただしく駆け回っている。被害は大した規模ではないのでそのまま通り過ぎて会話を続けた。
「それと、みんなわたしのことティーンティーン言いますけど、こう見えてティーンじゃありません」
「ジャパニーズは童顔が多いっつーもんな……ってレベルじゃねえよ!どう見たってローティーンのガキだわ!!」
「まあ、見た目が未成年なのは否定しませんけど……いやローティーンじゃないわハイティーンだわ!とにかく見てくれよりは年食ってますよ……多分」
「……やっぱ血界の眷属みたく何千年も生きてたりすんのか?」
「まさか!でも、正直年はよく覚えてないんです。17歳辺りから成長しなくなったのは覚えてるんですけど……いつから旅してたのかも曖昧ですし。けどまあ、どれだけ多く見積もってもスティーブンさんやK.Kさんぐらいじゃないですかね?」
「……あれか。ロリババってぇ!!」
やけに深刻な声音で不名誉な表現を言いかけたザップに、結理は遠慮なくヘルメット越しの頭突きをくらわせた。思い切りのけ反った気配を感じながらも構わずに走り続けていると、「あ……ぶねえだろうが!」という気合の声と一緒に軽い反撃を受けた。
「いたっ…!てゆうかそれ、遠回しにK.Kさんのことババア扱いしてますよ?」
「!!いやちげえだろ!姐さん全然関係ねえよ!!」
「うわー……ひどーい……K.Kさんに言いつけちゃおうかなー?怒るだろうなーK.Kさん」
「オイ待て止めろ…!」
「どーしよーかなー?」
面白いくらいに焦りだしたザップの反応に満足して、結理は笑みをこぼしながらベスパの速度を上げる。大通りを抜ければ、ライブラの事務所はもうすぐだ。