日常に至る経緯7
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「解析の結果、ユーリ君の血液は対血界の眷属特化型血液と全く同じ効果があることが判明した」
それから一週間ちょっと経って、エイブラムスさんが解析の結果を伝えにライブラの事務所に来た。わたしはザップさんの後ろに隠れようとしては前に出され、最終的にスティーブンさんに捕まるという無意味なこともしつつ、説明を聞いていた。
結構長々、専門用語も交えて説明してもらったけど、まとめると大体こんな感じ。
わたしの血と細胞は血界の眷属のものと限りなく酷似してる部分と、この世界では存在しえない配列がいくつも見られた。
わたしの血は研究施設で保存してある血界の眷属の細胞を破壊し、逆に対血界の眷属特化型人間兵器……要するにわたしの血と同じように吸血鬼の細胞を破壊する血を混ぜても何の反応もなかった。その他の解析をした所、わたしはこの世界で言う交配種的な、血界の眷属の要素も若干ある人外っぽい人類的な存在と考えていいという結論が出た。まあ今まで通りというか何というか……
それらの結果を『牙刈り』本部に提出した所、わたしも対血界の(略)の一人として数えることができて、引き続きHLで血界の眷属出現に備えたメンバーとして残留していいというお達しがきた。ただ、後日『牙刈り』のお偉いさんと顔合わせをするとのこと。
それと、血晶石をもっと研究したいのと色々(多分武器として)加工してみたいから送ってくれという要請があった。ということらしい。
「あのー……血晶石ってそうホイホイ作れるもんじゃないんですけど……体調によって作れる数も違いますし……」
「とりあえず作れるだけ作ってくれるとありがたい。いやもうこれ以上は無理ってぐらい作ってくれると……いやこれ以上はヤバい、死ぬ!ってぐらい作ってくれると……いやいやちょっとこれ以上はマズ過ぎる!ってぐらい」
「分かりました分かりました!限界数まで作って送りますから!!」
もうやだこの人……本当に悪意なくうっかり殺されそうでほんとやだ…!!絶対に限界より下で見積もって送ってやる……!!こっちの貯蓄だってあるんだから全部送ってたまるか…!
「それと、血晶石を作る過程を見せて欲しい」
「いいですけど、『血術』の一種だから多分他の人はマネできませんよ?」
そもそも血晶石は自分の血じゃないと作れないし。そう言ったらエイブラムスさんはものすごい残念そうな顔をしたけど、記録だけでもってことで仕方なしに見せることになった。
それからまた、この間よりは大分少ない量の血を抜かれて、ついでに作ったばっかの血晶石も渡した後、エイブラムスさんは帰って行った。
「うへあ……」
「お疲れ様お嬢さん。鉄剤は?」
「今日は大丈夫です……緊張疲れ百パーセントです……」
この間みたいにまた引っ繰り返ったわたしにスティーブンさんが声をかけた。今日は嘘は一切ついてない。血晶石作ったのは一個だけだったし、血も普通の採血よりちょっと多いぐらいしか抜かれてない。ただ、これでいきなり緊急出動があったらマズイけど……その時は出かけに鉄剤かじれば何とかなる。
「……『牙刈り』のお偉いさんって、どんな人ですか?」
「不安かい?」
「そりゃあそれなりには……」
「まあ悪いようにはされないさ。当たりを引けば円満に終わる」
「ハズレ引いたら円満に終わんないってことですよねそれ?」
「それはお嬢さんの運次第だ。」
「うわあ……ちょー怖いー…!」
基本的に組織のお偉いさんっていうのは得意じゃない。クラウスさんみたく現場にもガンガン出るタイプならほぼ確実にいいんだけど、そうでないタイプに対してはあんまりいい思い出がないから結構偏見がある。
けど、まあ……不安はあるけど、きっと大丈夫だろうって思える。
だって、他からどんな視線を向けられようと、わたしをわたしとして見てくれる人達がいるから。
「……ふふ……」
「どうした?」
「今日も頑張ろうって思っただけです」
だからきっと、大丈夫。
日常に至る経緯7 了
2024年8月18日