日常に至る経緯4
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「あのカフェ、分かってて指定したの?」
「半々です。まさかこんな午前中にあんな銃撃戦になるのは予想外でした。だからK.Kさんに言わなくていいって言われてたんですけど……」
K.Kの問いに、結理は苦笑を洩らしながら答えた。男から雇い主を聞きだした後に意識を刈り取って早々に店から退散して、今は事務所への道を歩いている。電話で簡単に報告を済ませたが、その時にこれからの打ち合わせも兼ねて戻ってくるように要請された為だ。
「まったくスカーフェイスの奴……こういうことなら先に言えっての…!!」
「あ、いや、スティーブンさんのせいじゃないですよ!まだ確信を持ってって段階じゃなくて様子見程度って話だったんで。あんなことなかったら普通にお茶して終わってましたもん!」
「どーかしらねえ……あんの腹黒のことだから、こうなるのも想定内だったんじゃないの?」
「否定しづらいですねぇ……」
少なくとも結理を気に入り、外に連れ出そうとする所までは読まれていた気がして、K.Kはギリギリと歯噛みする。結理も思い当たる節があるようで、言葉の通りに引きつった苦笑を浮かべた。
「まあ……いいわ。期待の新人の能力がちょっとでも見られたし」
「そんな期待だなんて……」
「あら?クラっちとスカーフェイスは期待してる感じだったわよ?」
「……クラウスさんはともかく、スティーブンさんが、ですか?」
「ええ」
余程意外だったのか目をまん丸に見開く結理に、K.Kはやや苦い顔をしながらも頷いた。嫌悪してやまない腹黒副官を持ち上げるのはいささか抵抗があったが、事実を伝えるには正直に話すしかない。
「任務ってわけでもないのにわざわざ電話してきて新人に会って欲しいなんて、普段なら言わないのよあいつ。まあ、吸血鬼の血が入った子だってのもあったんだろうけど、その割にはちょっと楽しそうに話すから、こりゃあ普通に期待してるんだなあって思ったわけ。あいつが表立ってそういうの見せるって、結構珍しいことよ?」
「……そうなんですか……」
驚いた表情のままため息をついてから、結理は失笑を漏らした。K.Kが怪訝そうに見ると、少女は「あ、すいません……」と言ってから続ける。
「期待されてるのも嬉しいんですけど、K.Kさんってスティーブンさんのこと理解してるんだなあって思って…」
「ええええええ!?止めてよー!!あんな腹黒のことなんて理解もしたくないわー!!」
不名誉極まりない評価をされて、K.Kは遠慮なく全力で顔をしかめる。だが少女は、どこか楽しげな笑顔を引っ込めることはなかった。
日常に至る経緯4 了
2024年8月18日 再掲